流れで報告
「何かさぁ……納得いかないなぁ」
「えっ? 何が? 話し合いで解決だよ? 平和的じゃん」
「いや、ラノベとかだとさ、もうちょっとこう、なんて言うかな」
「あぁ、主人公が活躍して解決する、だろ?」
「そう! そういうのは無いの?!」
「無い無い。娘が連れて来た知らないヤツの話なんか聞く訳ないじゃん。
聞いたとしたら、その親はちょっとおかしいぞ?」
「そうかもしれないけどさぁ……」
王道なら確かに、付いて行って彼氏を認めさせる条件を出して、それを協力してクリアってパターンだろうか。
だが、普通さ、何の関係も無いヤツが来て話を聞くか?
家族の問題だ!とか言われて終わりだぜ?
そこを挑発してその気にさせるのが主人公? それはただの嫌なやつだよ。常識で考えて、追い出されるわ。
行くならせいぜい彼氏だよ。行ったら間違いなく拗れるけどな。
「元々家族内の問題なんだから、家族内で解決すれば良いのさ」
「そうだけど……」
「言っておくけどさ、彼女にも問題はあるんだぜ?
自分の意見を感情的にならずに説明してないだろ?
多分だけど、親に言われてカッとなり怒鳴り散らして出てきた。違う?」
「……おっしゃる通りです」
「でしょ? 落ち着いて話し合えば良いんだよ。
彼氏っていう逃げ道もあるんだからさ」
「……判りました」
こういう女性って話し合わないよな。
決まり文句は『どうせ私の話なんか聞いてくれない』とか。
親の肩を持つ訳では無いが、『何で?!』『どうして?!』『イヤッ!』としか返してないと思う。
何故イヤなのかを説明しろと思うんだ。
説明して理論的に話しても通用しないなら、絶対に交わらない。価値観の違う人間だ。
そんなのと、よく今まで生活してきたなと思うよ。
それにさ、「理想の相手が出てくるまで結婚しない」のは良いが、「それまで庇護しろ」ってのはどうだろ?
働けよ、ニートか?
働いてるなら判るんだけどね。ただ、この女性も働いて無さそうだし。
甘えがあると思っちゃうんだよな~。
まぁ、俺の偏見は良いんだよ。
この二人がこれで納得なのかだけなんだから。
ナグラさんは小説の主人公的な解決を希望してるので無視だ。
「彼氏もさ、彼女に当たったって何の意味も無いよ?
暴力振るうって、相手のクズ野郎と変わらないからな?
特に冒険者なら自分の力くらい判るだろ? ある意味殺人行為に近いからな?」
「……はい。すみませんでした」
「それは彼女に言え。彼女はこいつがまた暴力振るうと思ったら、この大使館に逃げ込むように」
「……はい」
「じゃあ、今日にでも実行してみてね。
あぁそうだ。俺達は、明日にもこの町を出るから。頑張ってね」
「「「「はぁっ?!」」」」
あれっ? 全員から驚きの声が出たぞ?!
よく考えたら、誰にも話してなかった……。
二人は相談相手がいなくなる事に納得が出来ないながらも帰っていった。
無責任とか言われそうだが、元々責任はこちらには無い。
当事者だけで頑張ってくれ。
さて、今はそのまま応接室で全員から尋問を受けている。
さっき自分で言っておいてアレだけど、やっぱり話し合いって大事だよね。
「明日帰るの?! 何故!」
「いや、ニーベル国から直接依頼が出てさ。断れなかったんだよ……」
「魔法はどうするのよ!」
「ホウズキさんの所にでも(門の)シールを貼っておけば大丈夫かな~と」
「ぼく、学校は?!」
「通ってもらって問題無いよ。護衛はここの王様に頼むから。
あっ、近衛アリにも1人?1匹?付いてもらうよ」
「帰っちゃうの……?」
「大丈夫、ちょこちょこ来るからさ!」
「急過ぎるっス!」
「それは俺も言ったんだよ。でもすぐにって事になってさ……」
「依頼って、どんな内容なんですか?」
「ダンジョン目録作成だってさ。ほら、ギルドでもらう小冊子みたいなのを作る作業らしい」
「あれですか。確かにあれは国が情報を出していますね。
しかしあれは騎士の仕事だったと記憶してますが」
「その騎士が多大な被害を受けるダンジョンを任されました……」
「「「「はぁっ?!」」」」
2度目の揃った驚きの声ですね。
あっ、すみません。
「……何処のダンジョンですか?」
「ナグラさんの居たドラゴンのダンジョンと、ミノタウロスのダンジョンです」
「「「「はぁっ?!」」」」
3度目ですね。




