テンプレ破壊?
「と・とにかく! どうせこっちの国に帰ってきてからの話でしょ?!
こっちに戻りますので、書面にでもしておいてください!」
そう言って帰ってきた。
孫は連れて帰るとは一言も言ってない。
残念だな、王様よ。
どうやら今日は、運の回復日なようだ。
つまり、受難の日とも言える……。
戻るとナグラさんが飛んできて「テンプレが発生したわよ!!」と喜んで報告してきた。
俺には面倒事としか思えないんだけどなぁ。
今日は俺とカンダさんは城へ、キジマさんとコタニさんはハズキ君の護衛で学校へ。
ナグラさんは1人ヒマだったそうで、ホウズキさんの所に行ってきたそうだ。
だが、俺達が頼んだ魔法の開発にのめり込んでいて、相手にしてもらえなかったらしい。
なので町をブラブラしてたら、ギルドの前で何やらもめているカップルを発見。
男性の冒険者が女性を殴りかけたので、ナグラさんが止めたそうだ。
実際は殴りかけたが思いとどまって、止めた所での乱入だったと男は話したらしいが。
で、暴れないように大使館まで連れて来て、中で話を聞いたんだと。
う~ん、ありがちな話だけど、テンプレっていう程か?
テンプレって言うから、曲がり角で走ってきた男の人とぶつかったとかだと思ったわ。
当然ナグラさんがパンを咥えててね。
何て思ってたら、ここからがテンプレな展開らしいです。
ナグラさんが二人から聞いた話はこう。
「その男女は付き合ってるのよ。
男は冒険者で、現在オレンジの注目株ね。
女は貴族の娘なの。貴族と言っても男爵だから、平民と結婚しても問題ないの。
大使館の人に聞いたけど、そもそもこの国は貴族と平民が結婚しても何の問題も無いらしいわ。
ここまで言えば判ると思うけど、そう、結婚の話よ。
女は男と結婚したい。男もそのつもり。なのに突然女に許婚が出来た。
親が勝手に決めた許婚らしいわ。それでもめたそうよ。
ほら! テンプレでしょ!!」
確かにテンプレだ! しかも使われまくったタイプじゃないですか!
単純に言って、バカな親の話ですな。
「皆に相談して、良い方法を考えるから明日また二人で来なさいって言っといたわ。
さあ! テンプレを壊す方法プリーズ!!」
あれ? 壊す方法を考えるのは俺の仕事なの?
確かにテンプレを壊してたとは思うけど、進んで壊しに行ってた訳じゃないよ?
「う~ん。本人達から詳しい話を聞かないと判らないなぁ。
けど、何かプランは考えておくよ」
「判ったわ。でも良い方法が浮かばなかったら、力技をお願いするわよ?」
「力技って?」
「この国の王様に直訴。可能でしょ?」
「可能だろうけど! それこそテンプレ破壊じゃないか!
それで丸く収まるんじゃないか?!」
「それじゃあ面白く無いじゃない」
「人の人生だと思って! ヒドいぞ?!」
「だから、最後の手段として残しておくって言ってるのよ。
どの道、二人は結婚出来るんだから問題無いじゃないのさ!」
「そうかもしれないけどさぁ……」
ナグラさんに関わった事が運の尽きだったと思って諦めてもらおう。
明日来るまでに、何か穏便な方法を考えておかなきゃ!
ナグラさんと話していると、ハズキ君が帰ってきた。
丁度良い。聞いておこう。
「ハズキ君、学校は面白いかい?」
「うん! 友達も出来たよ!」
「そうか。国に帰りたい?」
「ううん。まだここで勉強するよ!」
「そうか。判った。がんばれよ!」
「うん!」
残念、王様。
ハズキ君は帰らないそうです。
明日、男女の問題が終わったら、この国の王様の所に行ってちょっと話をしてこよう。
忙しくなってきたなぁ……。




