シンデレラ・後
やっと俺の出番が終わった……。
次は城での舞踏会のシーンだ。
「さて、ここはお城。今は舞踏会の最中です」(ホウズキ)
と言っても、モブが足りないので、他の先生にも出てもらって踊ってもらってるけどさ。
言っちゃ悪いけど、ショボい舞踏会だよな。
そこは子供達の想像力でカバーしてもらおう。
おぉ、カンキジコンビが踊ってるよ。
おそこだけ、リアルなカップルだよ。こういう時、火薬の無い世界を選んだ事に後悔するよね。
おっと、ナグラさん登場だ。
あれ? コタニさんに見つかったぞ?
確かバレないハズじゃなかったっけ?
「何でココに居るっスか?」
「親切な人が火の番を代わってくれたのよ」
「ならいいっス」
いいのかよ! 仲が悪い設定はどうした!
もういいや、早く王様登場してくれ!
あれっ、今気づいたけど、王様じゃなくて王子様だったような……。
ヤベッ、王様にしちゃったよ!
「舞踏会に王様登場です。王様はココで后を探すようです。いや、側室探しですね」(ホウズキ)
側室って言っちゃったよ!
まぁ、確かに、王様と結婚するのは貴族とか王族だろうけどさ。
そこは夢を持たせようよ……。リアルにしなくていいよ。
「おぉ、そこの貴方。私と踊っていただけますか?」
「あら、王様。私でよろしいんですか?」
「ええ。昔、貴方と似ている人と恋に落ちましてね。そうあれはいつだったか……」
あっ! またスポットライト点灯でパクパクしだした!
よく見れば子供達が頑張って暗幕下ろしたりしてる!
凄いな、子供達! って言うか劇を見ろよ! 院長のボケに付き合わなくて良いよ!
院長が出てきた時点で、察して動いてたのか?!
「まぁ、昔の話ですよ」
「そんな事が……。実は私も昔……」
コラッ! ナグラさんまで真似するんじゃない!
子供達が「えっ? もう1回?!」って慌ててセッティングしたじゃないか!
しかも、何で大工っぽい動きなんだよ! 恋の話じゃないの?
「まぁ、昔の話ですけどね」
「そうですか。私も……」
「踊れ!!」
思わずツッコんでしまった。
ボケ二人だと、いつまでも終わらないわ。
子供達も困るだろ! 進めろよ。
こうなったらさっさと12時にの知らせをしてしまおう。
ホウズキさん、お願いします。
「おっとここで12時5分前を知らせる鐘の音が。夜中に鐘の音とは迷惑な……」(ホウズキ)
確かに迷惑だけどさ! そこはファンタジーでいいじゃない!
書いてあるのをそのまま読んでくださいよ。ナレーションに真面目なコメントは止めてください。
それにしても、12時5分前に鳴るって不便だと思うが。
実際、鳴ってからじゃ遅いのは理解出来るけどさぁ。
「大変! 火の番が帰っちゃう!」
「あっ! お嬢さん! どちらへ!」
ナグラさんが慌てて撤収する。
ちゃんとスリッパは片方だけ脱いでいった。
「行ってしまわれた……。おや、これはあの人の靴?」
そう言って大事そうにスリッパを抱える王様院長。
うん、見た目は変態です。靴フェチに見えます。おまわりさーん!!
「何とかシンデレラは、12時までに帰る事が出来ました。
すじ肉も、良い具合に煮込めたようですな。美味しい料理が作れそうです」(ホウズキ)
シンデレラって恋愛の話だったと思うんだけどなぁ。
まぁ、いいや! 後はクライマックスだけだ!




