シンデレラ・前
まずは重要なキャスティングだ。
出てくるキャラは、シンデレラ・継母・娘・魔女・王様・従者、の6人。
主人公のシンデレラは、詳しく知ってる人が良いって事でナグラさんに決定。
継母はイジメる役。キジマさんになった。『技術』で『悪巧み』を持ってるくらいだしね。
継母の娘はコタニさん。これもイジメる役だが、似合わないなぁ。
カンダさんは従者に決まった。ガラスの靴を持ってくる役だ。
残るは俺と院長。魔女は詳しい方が良いって事で俺になった。
自動的に院長が王様役に。
次は小道具。
重要なガラスの靴だけど、そんな物は当然無いのでスリッパで代用する事に。
次にカボチャの馬車。魔法でも無理なので、ガーに手伝ってもらう事にした。
ネコが虎になったって事で。
後は全員に役を覚えてもらう。
継母と娘は、シンデレラをイジメてもらう。
で、舞踏会の招待状が来たらシンデレラを置いて行ってもらう、と説明。
王様は、舞踏会に来たシンデレラを見つけて一緒に踊ってもらう。
シンデレラが帰る時に落としたガラスの靴で、人探しをしてもらう、と説明。
従者は、招待状を持って行くのと、人探しをする。
セリフ? 覚える時間も無いし、アドリブですよ。
大まかな流れだけは、書いておいた。
これをホウズキさんに読んで貰う事にしました。
グダグダになったら、読んでもらって進行しようって作戦だ。
適当な服に着替えた所で、開幕の時間になった。
皆、諦めて劇を始める……。
「オッホン、シンデレラの始まり始まり~。
え~、シンデレラの父とキジマママが出会ったのはまだ寒い冬の時期でした。
二人とも連れ合いを亡くし早3年、冒険者をしているキジマママと商人の父との出会いは強烈でした。
獣に襲われてる所をキジマママが救ったのです! それから二人は恋に落ちました」
おい、親の出会いはどうでも良いだろ?!
先に進めよ! これ書いたのナグラさんだろ!
「キジマママは冒険者を辞めて、父と結婚しました。
しかし、その幸せも長くは続かなかったのです!
父は商品を仕入れる為にダンジョンに行ったのですが、そのまま帰らぬ人となってしまいました。
幸い、一財産あったので、親子はそのまま暮らせてます。しかしいつかはその財産も無くなるでしょう。
なので、今は節約しながらの暮らしをしつつ、キジマママは冒険者に復帰しようとトレーニングの毎日です」
バックボーンを作りすぎ! そして、長い!!
まだ誰も舞台に出てないぞ!
「血の繋がらないシンデレラを娘は苦々しく思っていました。
こいつが居なければ、もっと節約して生活出来るのに、と。ニートのくせに生意気です」
娘をニートにしちゃったよ! たしかに働いてないけどさ!
やっと役者が舞台に出る。出たのはナグラさん、キジマさん、コタニさんだ。
「シンデレラ! 大根の葉っぱは食べられるんだから捨てずに使いなさい!」
「そうっス! シンデレラのくせに生意気っス!」
「シンデレラ! 掃除は上からするのよ! 下からしたら、そこにまた埃が落ちるでしょう!」
「そうっス! シンデレラのくせに生意気っス!」
「あぁ、なんて私は不幸なのかしら!」
セリフはアドリブでお送りしています。
しかし、これ、イジメてるか?
キジマさんのセリフは家事のコツを教えてるだけのような……。
コタニさんは、同じ事を言ってるだけだし。
で、ナグラさんよ。全然不幸に見えないよ? 大丈夫かな、コレ。
「そこに王様の従者が招待状を持って現れた」(ホウズキ)
「こんにちは。従者です。招待状を持ってきました」
「あら、ありがとう。入って入って」
「実は従者と継母は不倫の関係だったのです!」(ホウズキ)
おい! 何を爆弾放り込んでるんだよ!
話が変わってくるだろうが!
で、カンキジコンビ! ホウズキさんの説明に驚きながらも「じゃあしょうがない」と言わんばかりに舞台上でベタベタすんな!
真面目にやってるのはコタニさんだけかよ! と言っても、
「シンデレラのくせに生意気っス!」
って繰り返して、ナグラさんにツッコミ入れてるだけだがな!
後、カンダさん! 従者は自分で従者って言わないよ!
「一通り楽しんだら、従者は帰って行きました」(ホウズキ)
ここまで詳しく作ったくせに、何で招待状を持って来たとかは描かないのかよ!
力を入れる所が間違ってるよ!
俺の出番は来るのかなぁ……。




