ムチャ振り!
大使館に戻ると、トムさんはシロと共に客間で優雅にお茶をしていた。
警戒はどうした?! もう必要無いので、お帰りいただいた。
「正装でお茶飲みに来ただけじゃないのよ!」と言っていたが、しょうがないでしょ。
後は孤児院の方だが、近衛アリが居れば泊まる必要も無いだろう。
って事で迎えに行く事にした。
本当は行きたくないんだけどね。説明しなきゃいけないだろうしさぁ。
孤児院に着くと、ホウズキさんもちゃんと来ていた。
外で遊んでいる子は1人もいない。やはり守るには篭城が基本だよね。
ただ、やはり子供達は少し不満なようだった。
もう外で遊んでも良いとは思うが、城からの使者が来るまでは遠慮してもらおう。
後は、院長先生に報告か……。
面倒だなぁ。
そう思ってると、子供達が居る部屋に院長先生がやってきた。
「おや、福田さん。こちらに来ても良かったのですか?」
「はい。一応王様には伝えましたので。
で、何とかなりそうな感じですよ。ただ、調べが終わるまでは警戒してもらいたいです」
「子供を攫うなんて行為は許されないですからね。判りました」
「お願いします」
この人、真面目にも話せるんだよなぁ。
いつもこうなら良いのに。
「それでですね、福田さん。頼みたい事がありまして」
「なんでしょうか?」
「子供達は室内でヒマしてるんですよ。何か良い方法で解決してください」
「いきなりムチャ振りですね!」
「そうですねぇ、劇でもしてもらえませんか?」
「引き受けるとも言ってないのに?! しかも劇?!」
「あぁ、簡単な昔話的なので良いですよ。そこのステージでお願いします」
「やる事は決定なのか?!」
「30分で用意してくださいね。子供達には言っておきますから」
「ちょっと待て! 30分って短いだろ?! 脚本も作れないぞ?!」
俺のツッコミもむなしく、院長先生は子供達の方へ行ってしまった……。
どうしろって言うんだよ……。
大体、昔話って言われてもさ、この世界のは知らないぞ?
日本のをするか? だが俺しか知らないんじゃ1人芝居になってしまう。
あっ、ナグラさんが居るじゃないか!
2人知ってれば、何とかなるかも?
後は出演者の少ない話を選べばいいんだしな。
って事で、ナグラさんと相談だ。
「って事で劇をする事になった……」
「いいじゃない、劇! 楽しそう!」
「日本の昔話をしようと思うんだけど、何が良いと思う?」
「知ってるのは2人だけか~。そうなるとキャストが少ない話よね?」
「そうなんだよ。少ない話って何があったかな?」
「桃太郎は、サル・キジ・イヌが必要だから無理ね。
金太郎は少ないけど、何かしたんだっけ?」
「ゴメン、俺も覚えて無い。クマと相撲したくらいしか知らないわ」
「じゃあダメね。鶴の恩返しは?」
「アレは、ある夏の好きなコンビがライブでしたからダメだ」
「? どういう事?」
「ネタがカブるからNGだ!」
ライブDVD8巻に収録されてるんだよ。
そっちを見てもらった方が良いから。
「よく判らないけど……ダメなのね? じゃあ童話はどう?」
「アンデルセンとかグリムとか?」
「シンデレラとか」
「シンデレラって7人の小人が出るじゃん。人足りないよ?」
「それは白雪姫! シンデレラはガラスの靴の方よ!」
「そうだっけ? ごっちゃになってるわ。 でもアレも登場人物多くないか?」
「えっと、主人公・継母・娘×2・魔女・王様・従者×2、多いけど何とかなりそうじゃない?
娘は1人で良いだろうし、従者も1人で。そうすれば6人よ?」
「6人なら、俺・ナグラさん・カンキジ・コタニさん、で1人足りないぞ?」
「院長先生も入れましょうよ。ムチャ振りしたんだから、責任とって参加してもらいましょうよ」
「入った方が問題な気がするけど……」
「何言ってんのよ。決まりね! じゃあキャスティングして大まかな流れを決めましょう!」
こうして俺達は、何故かシンデレラをする事になった……。




