作戦報告
逃げるようにノートルダムの大使館に帰った。
ハズキ君達も、既に帰っていた。
しまったな、ハズキ君をナミちゃんに会わせてあげれば良かった。
子供同士、楽しく遊ぶ事だろうに。
近い内に連れて行ってあげよう。
キジマさんに聞いたけど、今日も何事も無かったそうだ。
学校に行くっていう目立つ事してるのに、何で襲ってこないのかな?
襲うやつらが全滅したから、もう手が無いのかな?
それならそれで良いけど、黒幕は捕まえておかないとまたヤる可能性があるからなぁ。
どうしたものか……。
色々考えた結果、こちらから派手に動く事にした。
まず、外交官という立場を利用する。
城に行き、王様に会うのだ。
そこで、挨拶と同時にハズキ君を紹介する。
で、後2日で帰ると言うのだ。
本当は来た当日に行くのが普通だろうけど、城に行きたく無かったから。
適当に何か遅れた言い訳をすりゃいいだろ。
あぁ、ハズキ君が狙われてた事でも言うかな?
それなら言い訳になるだろ。
その場に例の貴族が居れば、何らかのアクションを起こすハズ。
起死回生で仕掛けてくるか、王にバレたので完全に諦めるか、どっちにしても決着が着くと思う。
ちなみに、2日後に帰るっていうのは適当。
特に決めてないんだよね。
魔法を覚えたら帰ろうとは思ってるけど。
そうだ、王様に会ったら、上級魔法についても聞いてみよう!
うまく行けば、教えてもらえるかもしれない!
って事で、翌日、大使館の職員の人に謁見の希望を頼んだ。
俺は手続きの仕方とか、全然知らないからね。
1時間後に帰って来られたんだけど、謁見は明日に決まったそうだ。
凄いな、外交官って! いや、ハズキ君のネームバリューかもしれない。
明日は謁見、つまり勝負の日と決まったのだが、今日はヒマになってしまった。
いや、ヒマって事は無いな。明日の打ち合わせをしなければならないだろう。
全員を会議室に集める。
「明日、王様に謁見する事が決まった。これで勝負をかけるつもりだ」
「相手に動くか止めるかを決断させるのね?」
「そういう事。なので、細かい打ち合わせをしようと思う」
「「「「は~い」」」」
「まず、ハズキ君。俺と一緒に城に行くからね。10時に城だから、9時半には出るからね」
「うん、判った!」
「で、一緒に城に来てくれる人だけど……カンキジコンビにお願いしようと思ってる」
「え~、私は~?」
「ナグラさんには、孤児院の保護をお願いするよ。
一応関わってる所だから、襲う可能性もあると思うんだ」
「あ~、子供を攫って、脅すとかだね。定番だ」
「そういう事。貴族が国の機関に手を出すとは思えないけど、追い詰められたら何するか判らないからね。
2日後に出発するっていうウソを言うので、2日間は泊り込みでお願いします」
「福田さんは来ないの? 院長が待ってると思うけど?」
「だ・か・ら・行・き・ま・せ・ん!! ナグラさんは気が合うと思うから頑張って!」
「まあ、良いけどさ。しっかり守りますよ」
「コタニさんはホウズキさんの保護をお願いしたい」
「具体的には何をするっスか?」
「出来れば保護して孤児院か大使館に連れて来てもらいたいな。
孤児院の場合は、ナグラさんと一緒に泊り込みをお願いします。
2人の方が、交代も出来るし安心でしょ?」
「了解っス!」
「行き帰りの馬車はレイに守ってもらう。
ハズキ君には、フード付きの服を着てもらい、常にチョロに入っていてもらう。
大使館にはトムさんを呼んでおこう」
「シロ達、アリも使ったら良いんじゃない?」
「そうだね。シロに頼んで、近衛アリを借りようか」
「地面の下で見張ってもらったら良くない?」
「見えないから警戒しないってか? アリだな。アリだけに」
「つまらな~い!!」
「ちょっと言ってみただけじゃないか!」
「もうちょっとヒネリが欲しいな」
「うるさいなぁ、じゃあどんなのがベストなんだよ?」
「アリだけに有りだな。死んでるけど……」
「殺しちゃったよ?! 暗いよ!! 笑えないよ!!」
「布団がフッ飛んだ! 死んだおばあちゃんのね……」
「だから暗いよ!! いや、ダジャレ言ってる場合じゃないんだってばさ!」
「福田さんが言い出したんでしょ?」
「とにかく! こういう作戦で行くから!!」
「あ~、誤魔化した~!」
ウルサイ、ナグラさん! 今は明日以降の作戦会議が優先なの!
この方法で、安全は確保出来るはず。
後は、来るのか来ないのかだなぁ。
来てくれると楽になるのだけど……。




