犬
で、久々にカジノに来た訳だが……。
「で? 何するんだよ?」
「いや、最近新しい店がオープンしたらしいんだわ。
それに行ってみたくてさ」
「行きゃいいじゃん」
「それがよぉ、何故か俺が注目されててさぁ。
1人じゃあ入りづらいんだよなぁ……」
「で、俺をスケープゴートにすると?」
「いやいやいや、そんな気は無ぇよ? 一緒にするつもりだし?
それにカンダさんまで居るんなら、放って置いても注目されるだろ」
「そんな事はありませんよ」
「いや、自覚しようぜ。間違いなく帝王の仲間って思われてるからな?」
はいはい、カンダさん。ガーンって顔しない。
俺の方がガーンってなりたいんだから。
「で、新しい店って何屋なのさ」
「ドッグレースらしいぜ」
「良し行こう。すぐ行こう。全速力で行こう」
何その夢のような場所は?!
犬を見て癒されて、さらにお金が儲かるのか?!
何?! 天国?!
「で、どこだ?! どこにあるんだ?!」
「落ち着けよ! 南の競馬場の近くだよ!」
「あの辺りか……チッ、遠いな。良し、馬車だ! 馬車を呼ぼう!!」
「呼ぶのは良いんだけどよぉ、どうやって呼ぶんだ?」
「考えがある! 任せておけ!!」
俺は急いで2階に駆け上がる。
川に面している窓のある部屋に行き、窓を開けて大声で叫んだ。
「ツバキさ~ん! 福田が来ましたよ~! 馬車貸してくださ~い!!」
これを3回ほど繰り返した。
コレで良し。あのホテルの誰かが聞いただろう。
少し待つと、玄関にサガワホテルのマークのついた馬車が到着した。
馬車の中にはツバキさんが乗っていた。
「お・お待たせしました! ご希望の馬車です! どちらに行かれるんですか?」
「新しく出来たという、ドッグレース場までお願いします!」
「判りました。では行きましょうか」
「よろしくお願いします!!」
全員で馬車に乗り込み、そのまま南へ向かう。
「いきなり呼ぶからビックリしましたよ……。
心臓に悪いから止めて下さいね」
「すみません。急いでいたので。あっ、じゃあ今度からはメールします」
「それもちょっとイヤなのですが……いえ、後からじゃ取り返しのつかない事になるかも……。
判りました。じゃあメールでお願いします。
その代わり、今度からは早めに教えてくださいね」
「了解しました! じゃあ登録しますね。
……はい、出来ました。
ところで、ドッグレースなんですけど、サガワさんは犬を持ってないのですか?」
「勿論所有されてますよ。厩舎も見学できますよ」
「おぉ!! よろしくお願いします!!」
「……もしかして、犬好きなんですか?」
「はい!!!」
俺の、当たり前じゃないか! という返事に、ツバキさんは引き気味だ。何故?
犬が嫌いなヤツは人間じゃ無いぜ!
「こいつは従魔で狼を持ってるくらいの筋金入りだぜ」
「そうだよ! ポチは! ポチは元気なのか?!」
「元気元気。いまだにナミと一緒に居るよ」
「そろそろ返してもらえないカナ……?」
「……無理じゃねぇか?」
「……マジか。帰ったらナミちゃんと話をしよう」
「おう、そうしてくれ」
こんな話をしてたら、ドッグレース場に到着した。
まずは、厩舎に案内してくれるそうだ。
ドキドキが止まらないぜ!!




