逆の発想
大使館に戻ると、キジマさんとコタニさんからハズキ君に関する情報が来た。
とうとう黒幕登場か?!
「今日、女の子がハズキ君に話しかけてきたっス!」
「しかも昔、ハズキ君が少しだけ通った時に会ってたそうですよ」
「大人っぽくなったね、なんて言ってたっス!!」
あの~、それは、ただの恋バナじゃないでしょうか?
そういうのじゃなくてですね、襲ってきたとか、そんな感じの情報が欲しいのですが。
いや、待てよ? その子が黒幕かも?!
って、子供には無理か。大体、雇うお金が払えないもんな。
だが、一応警戒しておこうかな~。よし、明日からはチョロを同行させよう。
ナグラさんは行かせないので、大丈夫だろう。
そのナグラさんだが、今朝からやけに静かで大人しい。
どうしたんだろうか? 腹でも痛いのかな?
「閃いたーーーーーっ!!」
「うぉっ! びっくりした!! なんだよ、いきなり大声出して!」
「閃いたのよ! 画期的な魔法の作り方を!!」
「えっ? マジで?」
「マジよ、マジ。大マジよ!」
どうやらずっと考えていたらしい。
ゲーマーだし、何か思い出したのかな?
「今日、落とし穴を見ていて閃いたのよ!」
「何をだよ?」
「まあまあ、落ち着いて」
「いや、落ち着いてるよ。慌ててるのはナグラさんの方だろ?」
「そういうツッコミは良いから! とにかく聞いてよ!」
「判ったよ。どうぞ」
どうも話したくてしょうがないらしいな。
まぁ興味あるし。聞いてあげようじゃないか。
「ゴホン。まず、誰もが魔法を作る時って何を考える?」
「あったら便利だなって事っス!」
「その通り! そしてすぐに挫折する。何故か?!」
「科学の壁にブチ当たるからだろ?」
「そう! そんな事だから魔法の数が少ないのよ!」
「では、どうするのです?」
「ここで、逆転の発想よ! あったら嫌だなぁ、と思う魔法を考えれば良いのよ!」
「いや、それは皆やってるだろ? 魔法の矢とか嫌だぞ?」
「だから全てを逆にするのよ! 例えば今言った魔法の矢。あったら有効な魔法よね?」
「だから3種類もあるんだろ?」
「逆にして、無効な魔法を考えるのよ!」
「はぁ?!」
何を言ってるのか、さっぱり理解出来ない。
具体例を出してもらわないと、ずっと判らないままになりそうだ。
「例えば、魔法の矢で考えると、「当たってもダメージを受けない魔法の矢」っていうのはどう?!」
「……何の役に立つの?」
「だから最初に言ったでしょ。あったら嫌な魔法よ。ただの嫌がらせよ」
「必要か? その魔法……」
「だーかーらー、アイデアの出し方の話よ!
『あったら便利、でも無理かなぁ』じゃあ閃かないわよ?
それなら『無くても良い、でも嫌がらせには使えるかも』程度で考えた方が色々アイデアでそうじゃない?」
それでアイデアが出るのはいじめっ子のナグラさんだけだと思うのだが。
落とし穴見て閃いたって言うから、ナグラさんの中では、落とし穴=嫌がらせ、ってなってるんだろうな。
ただまぁ、言おうとしている事は理解出来た。
難しく考えすぎるとダメって事だ。
「こうやって考えたら、沢山アイデアが出たわよ!
さっき閃いたのは『家鳴りする魔法』!」
「家鳴りって何スか?」
「家に居たら、どこからともなくパキッとか音がする現象だよ。
家が軋んだり、乾燥したりした時に鳴る音だね」
「それがずっと鳴るの! どう?!」
「どうもクソも……意味無い魔法だよね」
「怖がりの人にかけたら効果的じゃない?」
「本当に嫌がらせだなっ!」
「っていう事で、嫌がらせ大喜利~! 変なメイクした某お笑い芸人のように「こんな魔法は嫌だ」でも可!」
何故か全員で大喜利をする事になってしまった……。




