実験開始!
庭では既に準備が終わっていた。
判りやすいように、3m間隔で魔方陣が設置されている。
魔方陣は30cm角の紙に書かれていて、複雑な文様になっている。
それだけ見ても、全然意味が判らないわ。
「おう、来たな。準備は終わったぞ、福田君」
「どうもそのようですね。遅くなってすみません」
「なんの。どうせ院長に捕まったのであろう?
あいつは有能なのだが、気に入った人が来ると途端にふざけ出すからのぅ」
「そうなのですか?」
「そうじゃよ。あやつの一族の血筋かのぅ?」
「他の人にもあった事があるのですか?!」
「おう、あれは末っ子じゃからの。三男とあった事があるわぃ」
「三男?! って事は4人兄弟?!」
「いや、5人兄弟だったと記憶してるのぉ」
何という事だ! ああいうタイプが後3人も居るだと?!
旅館の主人が長男だろうか? とにかく気をつけないと!!
「見た目でわかりやすいように配置しておいたわぃ。
一番奥が深さが深い物で、手前に来るほど浅くなっておる。
一番左がフタの厚みが薄い物じゃ。右に行くほど厚くなっておるぞ」
なるほど。数字をあててみよう。
1 2 3
4 5 6
7 8 9
1が深くてフタが薄いんだな。逆に9が浅くてフタが厚い物か。
うん、判りやすい。
そういう風に数字をあててみましたと言うと、ホウズキさんは早速メモをしていた。
「よし、では一番ダメそうな9番から実験してみるとしよう。
福田君、魔力を流してみてくれるかね?」
「そうやってするのですか?」
「魔方陣を書いた紙の縁に別の小さな魔方陣がある。
そこに指を当てて『起動』と唱えると、指から魔力を吸って発動するようになっておるよ」
「穴の大きさはどうなってるのでしょうか?」
「直径1mじゃな。なので、発動させたらすぐに戻ってくるんじゃぞ?」
「判りました」
レクチャーを受けて、9番の魔方陣の前に進む。
確かに紙には大きい魔方陣と小さい魔方陣が書いてあった。
小さい魔方陣は、親指の爪程度の大きさしかない。
それに人差し指で触れて、「起動!」と言ってみた。
すると、確かに魔力が吸われた様な感じがした。
どんな感じかと言うと、羽根の様な物で指を撫ぜられたような感じ。ちょっとくすぐったい。
とにかく吸われたので無事に発動したのだろう。
慌ててホウズキさんの所に戻るが、9番の地面は別に変わった感じが無い。
失敗なのかな?
ステータスを見ると、確かにMPが10ほど減っている。
見た目が変わらないってのは落とし穴としては優秀だけど、こういう時は困るなぁ。
「どうです? 発動してますか?」
「魔力は吸われたのだろぅ?」
「はい。減りました」
「では発動しておるよ。では確認しに行こうか」
そう言ってホウズキさんは、カンダさんに近くにあった籠を持たせた。
俺にも持つように言われたので、素直に受け取る。
籠の中には石が入っていて、重たい……。聞くと30kgあるそうだ。
「これ、何に使うんですか?」
「落とし穴に落ちたくはないじゃろ? そこに入っておる石を投げて調べるのじゃよ」
「そういう事ですか。納得です」
確かに落ちて土まみれにはなりたくない。
石を投げて確認するってのは、合理的な考えだよな。
色々考えてるなぁ。さすがだよ。
「ではまず、10kgの石を投げてみようかの。カンダ君、お願いできるかの?」
「判りました」
カンダさんが大きめの石を9番の魔方陣の上に投げる。
が、凹む事無く、ズンと上に乗っただけだった。
「ふむ、ではもう一つお願いしよう」
結局、合計で50kgになるまで置いたが、穴が開く事は無かった。
発動してないのかな?
「うむ。やはりこれは失敗のようじゃな」
「発動してないのですか?」
「いや、発動はしておるよ。
簡単に言えば、30cmの穴を開けて30cmのフタをしたような物じゃな」
あぁ、それなら確かに意味が無いな。
何人乗っても穴が開く事は無いわ。って、じゃあ何で作ったの?!
「これも実験じゃよ。開けた穴に土を入れても少しは沈むじゃろ?
つまり密度の問題じゃよ。少しも沈まない所をみるに、フタの密度は周りと同じという事じゃね」
「そういう事でしたか」
確かに、フタの密度も重要だ。
スカスカのフタなら厚くても穴が開くだろうし、ギュウギュウなら薄くても穴が開かないかもしれない。
なるほどなぁ。勉強になるわ~。




