再び孤児院!
翌日、午前中は特にする事も無かったので減った食材の補充をした。
ハズキ君はキジマさんとコタニさんを伴って学校に。
午後になったので、ホウズキさんを訪ねた。
「よく来たのぅ。準備は出来ておるぞ」
「よろしくお願いします」
「穴の大中小とフタの厚みの大中小と作ってみたわい。全部で9種類じゃな。
はたして、うまく出来た物があるかのぉ?」
「早速実験ですか?」
「いや、ここでは落とし穴を作る場所が無いからのぉ。
孤児院の庭で実験じゃ」
げっ! またあの孤児院に行くのか……。
まぁ、確かにあそこの庭は広かったもんな。
変な所で実験出来る魔法じゃないしね。
出来た落とし穴に誰かが落ちて怪我でもしたら大変だもん。
しょうがない、覚悟を決めて行くか……。
ホウズキさんと孤児院に行くと、早速庭に移動した。
そこには昨日も見た子供達が遊んでいた。
「これから魔法の実験をやるんで、場所を空けてもらえるかね?」
「「「「はーい」」」」
いつもの事なのか、子供達はホウズキさんの言う事を素直に受け入れている。
それどころか、積極的に手伝いまでしていた。
「それで、福田君よ。院長先生に一応報告してきてくれないかね?」
「えっ?! 俺がですか?!」
「昨日も話をしてたじゃろ? ワシは用意をしておるから。頼んだぞ?」
「うっ、わ・判りました」
確かにこのメンバーでは、面識があるのは俺かホウズキさんだけだ。
カンダさんとかに行ってもらいたいが、そういう訳にもいかないだろう。
できれば会いたく無かったんだが……。
結局、俺は覚悟を決めて院長先生の部屋に来た。
昨日の事もあるので、ノックをしてすぐに「失礼します」と部屋に入った。
「おや、福田さん。今日はどのようなご用件で?」
「こんにちは。ちょっとホウズキさんと魔法を作ってまして。
その実験に庭を借りようと思って来たのですよ。」
「そうですか。そう言えば、わたくしも昔は魔法を作ったりしましたね。
そう、あれは10年くらい前でしょうか……」
突然周辺が暗くなって院長先生だけにスポットライトが当たっている。
院長先生は遠い目をして空を見、口をパクパクと動かしている。
どこからともなく哀愁を帯びた曲が流れている。
何これ?
院長先生のパクパクが終わると、スポットライトも消え、音楽も止まった。
「まあ、昔の話ですよ!」
「待て! 今、何も言ってなかったじゃないか! パクパクしてただけだろ?!」
しかも周辺をよく見れば、子供達が窓に暗幕を下ろしたりスポットライトを当てたりしてた。
曲は他の先生がピアノで演奏してるじゃないか!
「何だよ、この寸劇は!」
「寸劇? 何を言ってるのか全然判りません」
「判るだろ?! 孤児院ぐるみで寸劇してたじゃないか!」
「それで、庭を使うという事ですね。許可しますよ」
「流した!!」
子供達も他の先生も、はい終わり、みたいに解散していった……。
いつもこんな事してるのか?!
「……ま、許可はありがとうございます。
では早速使わせてもらいますよ」
「何かするんですか?」
「だ・か・ら~! 魔法の実験ですよ!!」
「そうですか。そう言えば、わたくしも昔……」
「その話はもういいです! 急ぐので失礼します!」
危ない、ループに入るかと思ったぜ。
俺は、逃げるように、いや逃げて庭に急いだ!




