ズル
庭に出ると、まだ「だるまさんがころんだ」が開催されていた。
院長先生は「だろまさんがころんだ」を知っていたようだ。
だが、ルールが色々と違うそうだ。
俺が決めたルールは以下の通り。
・スタートは鬼から30m離れた所。鬼は後ろ向きで「だるまさんがころんだ」と言う。
・その間に鬼に近づく。言い終わると鬼が振り向くので、見られている間は動いてはいけない。
・動いた者は鬼に捕まる。捕まった者は鬼と手を繋ぐ。増えたら数珠繋ぎで。
・近づいた者は鬼に触る。すると捕まってた者は解放される。
・鬼は10数えて「止まれ!」って言う。そこから3歩だけ移動し捕まった者が次の鬼になる。
それを聞いて理解して、院長先生は早速参加していた。
そして早速捕まっていた……。
すると鬼に繋がるはずなのに、何故か俺の方に近寄ってきた。
「ちょっとルールおかしくない?」
「いや、ルールに納得して参加されましたよね?」
「そういう事じゃ無いんだよ。途中参加したのに、30mの位置からっておかしくない?」
「しょうがないじゃないですか」
「だって、そうなると急いで行こうとするじゃないですかー。
そうすると捕まる可能性高いじゃないですかー。
おかしくない? おかしいよね? そう思うよね?」
うわっ、面倒くさい!
こういう人の相手すると長いんだよな~。
「判りましたよ。じゃあ1回は見逃しますよ。
捕まった位置から再スタートしてください」
「だろ? そうだよな?」
そう言って元の位置に戻るが、子供達はそれを見逃さなかった。
「あ~、院長先生、ズルー!」
「ズルいー!!」
「ズ・ズルじゃないだろ?! ここからで良いって言われたんだから」
「ズルだー!」
「院長先生、いつもだよね~」
「ズル長先生だー!」
「その呼び方はやめろよ!」
「ズル長先生ー!」
君達、ゲーム中なのを忘れてるのかぃ?
子供達も含め動いてるので、全員捕まった。当然院長先生もだ。
言っちゃあ悪いかも知れないけど、天然なのかな? って思ったよ。
こうして楽しく(?)遊んでると夕方になったので、ホウズキさんと一緒に帰る事にした。
う~ん、結局孤児院に行ってした事と言えば、
バーベキュー、だるまさんがころんだ、宝探し、そして院長との出会い。これだけか……。
ラノベなんかでさ、孤児院に行くと、
・孤児院の不正を見つける(横領とか)
・凄い才能の子を見つける
・孤児院育ちの転生者が居る
・獣耳の獣人とかが居る
・孤児院でも虐げられてる子供が居る
・孤児院育ちの子達でパーティーを組んだ冒険者と出会う
・何かの実験に子供が使われてる
・行方不明の子供が居る
とかのイベントがありそうだけど、ただ一緒に遊んだだけだったな。
まぁ、普通孤児院に行っただけで、そんな都合良く事なんか起きないよね。
横領とか疑って行かなきゃ見つかる訳無いし。
個人的には獣耳を期待したんだが……。いないのかな? 今度イイクラさんとかに聞いてみよう。
ホウズキさんを家まで送ると、
「明日、落とし穴の魔法を作ってみるとするかの。
午前中はかかると思うから、昼から来なさい」
と言われた。
昨日、俺達が帰ってからも考えてくれてたようだ。
今日もこれから考えるそうだ。凄いな、こんな短時間で出来るのか!
まぁ、今ある魔法を組み合すだけだから簡単なのかもしれない。プロだしね。
明日に期待しつつ、俺達は大使館に帰った。




