逆
とにかく、用件だけ話して早く帰ろう。
宝探しで隠れる必要もあるしな。院長先生の部屋に居るのは卑怯だろ?
「今日はホウズキさんに連れて来てもらったので、一応挨拶に来ました」
「それはそれは。ありがとうございます。
ところで、先ほどから外が騒がしいですが何か知ってますか?」
「あ、はい。ちょっと子供達に遊びを教えまして」
「え~、ちょっと困りますねぇ」
「えっ、ダメだったですか? こちらの教育方針とかありますもんね。すみません……」
「ちげ~よ!」
「はあ? 今何と?」
「ちげ~よ! そういう事じゃないんだよ!」
何か突然口調が変わったぞ?!
やっちゃいけない事しちゃったかな?
変な人でも院長先生だ。締める所は締めているんだろう。
「…べよ」
「えっ? 何か言われましたか?」
「俺も呼べよ!!」
え~、そっち?!
確かにバーベキューにも参加してなかったと思うけどさ、誰かが呼ぶと思うじゃん?
「なんで俺を呼ばないんだよ?! 院長だよ?! 偉い人だよ?!」
「いや、何ででしょうね……」
「お前もさぁ、挨拶に来るくらいなんだから、最初に呼びに来いよ!」
いやいや、俺、ほぼ部外者だよ?
院長が居るってのを、部屋を発見して知ったんだよ?
呼ばないのって俺の責任なの? 違うよね?
「お忙しいでしょうけど、参加されませんか? って言うのが普通だろ?
で、俺が、いやいや、わたくしが参加すると皆が緊張するので、って言うだろ?
それでも、いや、トップなんですから参加してくださいよ~、ってしつこく呼べよ。
そしたら、じゃあしょうがないですね、では……ってなるじゃん。予定調和だろ?!」
「いや、判らないです」
「何で判らないんだよ! そんなんだからグズ野郎って呼ばれるんだよ!」
「呼ばれてませんよ!! それに初対面ですよね!!」
「あ~あ、もうやる気なくなっちゃったなぁ……。辞めようかな、孤児院なんて」
「いやいや、辞めないでくださいよ! やる気出してくださいよ」
面倒くさい!
そんなんだから誰も呼びに来ないんじゃないか?
も~、誰か助けてくれ!!
一生懸命俺がなだめていると、丸い石を発見した子供がやってきた。
「あっ、お兄ちゃん、見つけた~!!」
「ほらほら、見つけたよ~!!」
「何ですかそれは?」
子供の前だからか、院長先生が復活して聞いて来た。
説明して、子供と一緒にこの部屋を出よう。それがいい。
「部屋で出来る遊びって事で、宝探しをしてたんですよ。
この★を書いた丸い石を部屋に隠したので、それを発見する遊びですね」
「全部で何個あるんですか?」
「5個にしました」
「ふむふむ、ちょっと院長にみせてごらん?」
そう言って男の子から丸い石を借りる院長。
それをしげしげと見た後に、右手に持ち高く掲げる。
「わたくしも発見しました~!!」
「子供の手柄を横取り?!」
「違います~。わたくしが先に発見してました~」
「いやいや、ずっとこの部屋に居たんでしょ?! 知らなかったでしょ?!」
「知ってました~。見てました~」
何言ってんの、この人!
子供達を見ると、しょうがないなぁ、院長だからなぁ、って顔をしてた。
あぁ、常習犯か。渡した男の子は、院長の手柄で良いよ、なんて言ってるし。
男の子、大人! そして院長、子供!!
反面教師なのか?!
まぁ、許されてるのも人徳だろうけどさ。
施設を見るに、経営とかはちゃんとしているっぽいので、デキる人なんだろう。
子供に連れられて、俺と一緒に院長は庭に移動した。




