ころんだ
何だ? テレビ番組なのか? 何で子供と遊ぶだけなのに全員参加になってる?
いや、気のせいに違いない。たまたま動きが止まってるだけなんじゃないか?
そう自分に言い聞かせて、再度壁に向かう。
「だ~る~まさ~んが、こ~ろ~んだ!」
振り向くと、やはり全員が止まっている。
しかも、さっきよりも少しコッチに近づいているじゃないか!
はっきり言って、怖いぞ!
ココだけ時間が止まったみたいになってるじゃないか!!
よく見ればシロも、さらには近衛アリまで参加してる!!
こうなったら、俺もマジでやるしかない!
やるかやられるかだ。
一刻も早くこの恐怖から逃れるには、鬼を交代するしかない!
「だ~るまさんが~~~~、ころんだ!」
前半はゆっくり、後半は早口ですばやく振り向く。
「そこと、そこと、そこ2人。動いたぞ。アウトだ!」
指摘された大人は、素直に応じてコッチに来る。
クソ、何で全員男なんだよ! 何が楽しくて男と手を繋がなきゃいけないんだ!
後、ナグラさん! 手を繋いでるのを見てニヤニヤすんな! 腐ってるのか?!
「だるまさんが、こ~ろ~ん~~~~だ!」
今度は後半を伸ばしてみた。
よし、これでも何人か見つけたぞ。
「そこの3人、そっちの2人、後カンキジコンビ、アウトだ!!」
今回は女性も捕まえたぞ。身内からも逮捕者が出た。
おい、カンキジコンビ! ニコニコしながら手を繋いでんじゃねぇ!
ホウズキさんに頼んでカップルが爆発する魔法を開発するぞ?!
あっ、よく見れば捕まえた女性と手を繋いでる男もニヨニヨしてやがる! 女性も照れてるが嫌な顔をしていない。
なんだ? カップルを作ってしまったのか?
魔法の開発は急務なのか?!
こうやって、何度もやった結果、現在は残り3mくらいまで接近されている。
ゾンビ映画のように、全員がこちらに向かって腕を伸ばしている……。ヒィィィ! 怖い!!
逮捕者もそれなりに増えた。 男10人、女性7人、カンキジコタニ、そして近衛アリ1匹。
近衛アリだが、地中を進んできやがったのだ!
反則でアウトにしてやった。そしたら「最初に言われなかった」と言いやがったわ!
地中を進むヤツなんか地球には居ないんだよ! そんなルールを作るか!!
この調子だと、飛んでくるヤツや姿を消してくるヤツ、さらには『瞬歩』使いそうなヤツも出そうだ。
魔法や技術は使用禁止にしなくちゃ……。
って、子供相手の遊びなのに、そこまで必要なのか?!
その後2回目で俺に触れてきた人が居た。
それは孤児院の子供だった。
慌てて振り向きカウントする!
「12345678910! 止まれ!!」
全員がピタリと止まる。
壁を蹴って反動をつけて飛ぶように3歩進んで、子供を避けてナグラさんにタッチしてやった。
「はい、ナグラさんアウト~!」
「今、壁を蹴ったでしょ?! あれも一歩よ!!」
「違います~。アレは反動をつけただけです~」
「だから足で蹴って反動つけたでしょ?! 足なんだから一歩だわ!!」
「俺の所のルールではセーフでした~」
「汚いわ!! ズルだわ!!」
「何と言おうと、アウトです~。私がルールなのだよ!」
諦めたようで、ブツブツと言いながらも壁に移動していった。
他の全員はワイワイしながらスタート地点に向かっている。
そう、当たり前のように大人もだ!
こうなったら、俺も本気を出そうじゃないか!
ナグラさんが壁に向かい「だるまさんが……」と言い出した時に、しゃがんで隠れる。
その間にサマナーでガーとチョロとトムさんを呼び出す。
フッフッフ、豪華メンバーで攻めてやるぜ!!
ちなみにトムさんは、トイレに向かってる所だったらしい。
最中で無かったから良かったですね、って言ったら殴られた。
次にナグラさんが振り返った時には、俺は土下座で止まっていた……。




