洗濯
「ところで、何故魔方陣から魔法にするのですか?
フローチャートから魔法にしても良いと思うんですけど?」
「良い質問じゃな。それには2つの意味があるのじゃよ。
1つは、ちゃんと発動するのかを調べる為じゃ。
指先に火を灯す魔法を作って発動させたら全身火達磨……ってのはイヤじゃろ?」
「確かに怖い話ですね……」
「ちなみに、どれくらい魔力が必要かもそれで判明するのじゃよ。
もう一つは、詠唱を簡略化する為じゃ。
魔法の本を読んでいるなら知っているじゃろ? ほれ、本に書いてあった読めない文字じゃよ。
あれを作るには魔方陣が必要じゃ」
「なるほど。それで魔法を覚えるのですね?」
「そういう事じゃ」
納得だわ。
イメージするとアレンジ出来るとか、正に物語の中での話ですな。ムリムリ。
アレンジしたきゃ、最初から作れって事ですね。
「先ほど言われてた登録って何っスか?」
「ん? 登録か? あれは作った魔法は国の機関に報告するのじゃよ。
そこで登録すると報酬がもらえる訳じゃね。
それだけでなく、登録する事で誰でも使えるようになるのじゃ。年に2回、発表されるんじゃ。
個人的に使いたい者は登録してないかもしれないがのぉ」
報酬が国から出るんだね。
それなら稼ぐ為に開発する人も居るだろうな。
で、便利な魔法は発表するし、危険な魔法は封印するって事か。
こうやって魔法大国になったんだね。
「ちょっと思ったのですが、魔方陣も登録出来るのですか?」
「登録する時には魔方陣での実験が必要じゃ。
それに魔法道具の場合は魔方陣が必要なので、登録する事になるでの。
登録された魔法陣で作られた魔法道具には、ちゃんと国の印が入れてあるのじゃよ」
あぁ、日本でいうJISマークのような物か。品質保証って事だ。
国のお墨付きって事で、安心・安全って事だろうね。
逆に印の無い魔法道具は暴走しても知らないよ、って事か。
うん、皆登録するだろうな。
後で俺の持ってる魔法道具もチェックしとこう。印の無い物は買い替えだな。
「大体理解出来たようじゃな。
では、今日はアイデア出しからやってみようかの」
「はい、お願いします」
「まずは漠然としたイメージで良いから、魔法で何がしたいかを考えるのじゃ。
そうじゃのう、お嬢さん何か無いかね?」
「私っスか?! え~と、え~と、そうっス! 服の汚れを落としたいっス!」
「よろしい。ではそれをベースにして考えるとしよう。
服の汚れには何があるかね?」
「えっと、泥や砂とか……」
「食べ物が付くと困るっス!」
「つまり『意図していない付着物』という訳じゃね」
「意図した付着物ってあるんですか?」
「ほれ、自分達の着ている服を見てみぃ。色が付いているじゃろ?
その色は落としてはダメじゃろ? その色が『意図した付着物』じゃ」
確かに、洗濯したら赤い服が白くなったら困るわ。
「さて、ここで問題点が出たの。
『意図した付着物』と『意図してない付着物』、客観的にどう分ける?」
服の持ち主なら、これは汚れって知ってるから分けれるけど、誰が見ても汚れって判るように考えろって事?
まぁ、確かに意図した柄の可能性もあるもんね。
クリーニングに出して、その柄まで落とされてたら怒るよな。
あっ、つまり「魔法=クリーニング屋」って考えれば良いのか!
クリーニング屋に判るように説明しろって事だね!
えっ? それって難しくないか?
本当のクリーニング屋と違って、目が無いんだぞ? どうやって認識させるんだ?
「よしよし。じゃあこれを昼までの課題としようか。
昼飯が来たら終了じゃ。それまで頑張って考えてみなさい」
え~、ヒントくれないの?
なかなかの難問じゃないか!
もう少し、簡単なのを言えば良かったのに、コタニさんよ……。




