サンタクロース
翌日、コタニさんがキジマさんと交代しこちらに来る事になった。
ナグラさんはそんなに興味が無いそうだ。学校の授業だけで十分らしい。
学校の授業は科学と魔法が混ざっていて面白いようだ。
紹介状に書いてあった住所は、大使館からかなり離れていた。
と言うよりも、ほぼ町の外と言っても良い場所だった。
何だろう、偏屈な爺さんな気がしてきたぞ。
ラノベとかでよくある、天才とバカは紙一重みたいな危ない人じゃないだろうか?
魔法至上主義的な?
いや、学校で教師をしてたぐらいだから大丈夫か?
まぁ、そういうテンプレな人だったら、さっさと帰ろう。
巻き込まれて騒動になるのは、物語の主人公だけで十分だ。
俺はそんな人の面倒を見るほどお人よしじゃないし、迷惑かけられてキレないほど人間が出来てないからね。
昔RPGゲームで「勇者なら~を持って来い」とか言うのを見て、テレビに文句言った事あるもん。
「なんで世界を救う勇者に上から目線なんだよ! お前のせいで世界が滅びても良いのか!」ってね。
大体、ああいうゲームって不条理だよな。世界を救う勇者の所持金とか2000とかだよ?
大金持たせろよ! 武器とか最高品質の物を最初からよこせ! 必要な物は揃えとけよ!
ちなみにそのゲームは、カジノがあったのでそこにずっと居てクリアしなかったな。
世界の危機なのにカジノが開いてる変な町だったわ。
きっとゲームの中の世界は、今頃滅びてるだろうね。仕事しない勇者だったから(笑)
おっとアホな事を考えてたら到着したようだ。
良かった、普通の家だ。ホラー映画とかで出てくるような洋館を想像してたよ。
玄関にはライオンが輪を口で持っているドアノッカーが付いていた。
へ~、ドアノッカーってあるんだ。ウチにも付けようかな? ちょっとカッコイイよね。
ノックすると、中からはサンタクロースのようなお爺ちゃんが出てきた。
おかしいな、痩せててメガネで神経質そうな人だと思ってたのに。
「どなたさんかな?」
「あっ、すいません。校長から紹介されてきました」
そう言って紹介状を渡す。
お爺ちゃんは紹介状の表紙を見て、間違いないと判ったようだ。
「そうかそうか。まあ入りなさい。中でコレは見さしてもらうよ」
「お邪魔します」
通されたのは客間。結構広い家だな。怪しい研究室は無いのかな?
お茶まで入れてくれた。1人暮らしなのかな? 怪しい助手はいないの?
いかんいかん、間違った先入観で見てしまってる!
そういうラノベが多いからなぁ。影響されてるな……。
「ふむふむ、では君達はニーベル国から来ていて、魔法について知りたいのじゃな?」
「はい、そうです」
「確かに学校は子供しか入れないからのぉ。大人にも勉強出来る場所があれば良いのじゃがなぁ」
おぅ、なんて常識的な人だ!
俺の周りは濃い人ばかりだから、こういう人ってありがたいわ~。
「よろしい! ワシが色々と教えてあげよう。
教師を引退してからヒマじゃったのでな。良い機会だわい」
「引退されてからは、何をされてたのですか?」
「孤児院で魔法や勉強を教えたり、魔法の研究をしたりしておったな」
うわ~、良い人だ~!
ニーベル国の王様と取り替えたい。ヌマタ卿に紹介しようか?
「忙しそうですね。自分達に教えてもらえるのはありがたいですが、邪魔じゃないですか?」
「なに、今は研究が詰まっていてのぉ。人に教えることで閃く事もあるのじゃよ」
「何を研究されてるのですか?」
「そうさのう。少し前は念話の研究じゃったの」
「念話ですか? あの従魔と話す時に使うアレですか?」
「そうじゃ。従魔とは出来るのに、人間同士が出来ないのは不思議じゃろ?
あれを魔法で出来るようにしたのじゃよ。登録したので新しい魔法の本には載っているはずじゃよ?」
「凄い! 魔法って作れるんだ!」
「簡単では無いが作れるぞぃ。今は閃きが無くての。良いアイデアが出るのを待っておるのじゃよ」
「アイデアですか?」
「そうじゃ。魔法を作るのにはアイデアが大事じゃ。
かといって子供が考える夢のような事ではダメじゃ。現実的な内容が良いのじゃが。
例えば生活に役に立つような魔法じゃな。
冷水が欲しい場合、今まではウォーターで水を作りローアで冷やすしかなかった。
じゃが同時に出来るのではないかというアイデアが出て、コールドという魔法が出来たのじゃよ」
「なるほど! 納得です!」
夢の話じゃなくて、理論的な話なのね。
話してるだけで勉強になるなぁ。
ちなみにコールドって魔法は中級魔法らしい。前出の念話する魔法も中級だってさ。




