木工
チョロはドヤ顔で戻ってきたのだが、まやもやナグラさんに、
「あれ? チョロどこ行ってたの? 影が薄いんだから、こういう時に活躍しなさいよ」
と言われ落ち込んでる。
俺の背中に張り付いて泣くのはやめて欲しい。背中が濡れて気持ち悪い。
それを指摘すればもっと落ち込むだろうから言わないけどさ。
今度、マントかローブでも買うかな。それなら濡れても気にならないだろうから。
「大丈夫だよ、今回は俺が見てたからさ」
そう言うと、「旦那~!!」とさらに背中を濡らしてきた。
余計な事を言うんじゃなかった……。
とにかくレイの能力は凄かった。
これでわざわざ町や村に入って、馬車を預ける必要が無くなった。
泊まる訳でも無いのに料金を払うのって、損した感じするよね。
こういうのはお金が有っても考えてしまう。貧乏性なんだなぁ。
って事で、今日は実験も兼ねて路上駐車で家に帰ろうと思う。もう夕方だしね。
一応念の為に、立て看板を仕込んでおく。
看板には、
『この馬車は人食い馬車です。この立て看板よりも近づいた場合、危険です。
警告を無視し近づいた場合は……想像にお任せします』
と書いておいた。
具体的に書くよりも怖くない?
馬車は街道から5mほど脇に入れて停め、街道にこの看板を立てておく。
一応、見えなかったっていう言い訳をさせない為に、4方に立てておいた。
レイには看板より近づいてきたら捕捉するようにと言っておいた。
明日どうなってるだろうか、楽しみだ。
今思ったが、レイのようなスライムを家でも飼えば、良くね?
家が大きすぎるから10匹くらい飼えば、凄く安全なんじゃないだろうか?
その場合セ○ムって名前にするかな~。
セキュリティで商売出来るかもね!
言わなかったが実は今、レイの能力のせいで困った問題が1つあるのだ……。
しかも早急に解決しなければならない問題なのだ。
それは……馬車での移動があまりにも安全な為に、移動中がヒマなのである!
そして問題というのは、だから俺に暇つぶしのゲームを作成しろという目だ!!
そんなにポンポンとアイデアが出る訳無いじゃないか!!
大体だね、俺は雇い主よ? もう忘れちゃった? 給料払ってるよ?
しかも最近、トイレの為に『コレクト』使わせますよね?!
俺はドラ○もんじゃないですよ?!
何でゲームとか作らなきゃいけないの?
俺さ、君達にゲームを作るせいで、意図せずに『技術』に『木工』ってのが付いたんですけど?!
期待した眼差しほど、心を痛める物って無いですよね。
特にナグラさんがヒドい。
ダンジョンでマ○オを体験したからか、ポータブルゲームを作って!みたいな目は止めて欲しい。
そういうのは任○堂かS○NYさんにお願いしてください。
もしくは貴方がダンジョンマスターになってください。
だが、何も作らないというのは何故かダメな気がする。
具体的に言うと、コッチは悪くないのに勝手に期待して落胆されるってのがイヤだ。
という事で、夜なべして作る事にした……。
結局徹夜してしまった……。
馬車に戻ると、皆は期待して俺を見てくる。
そう、「何か作ったんでしょ!」という目で。
なので俺は、紙とエンピツと消しゴムを皆に配った。
この中で年長者のキジマさんには徹夜して書いた本を渡す。
後は木で作ったサイコロ2個と木枠を真ん中に置いた。
これで準備は終了だ。
「何ですか、コレ?」
「えっ? ゲームだよ。ナグラさんが期待してた要素も入ってるから」
「どういう事?」
「詳しくはキジマさんに渡した本に書いてあるから。俺は寝させてくれ……」
一応、最初の方に説明は書いておいたので大丈夫だろう。
もう、俺は限界です。寝ます……。
プロローグでのカルマの値がおかしいのでは?とご指摘を頂きました。
元々-3の状態で+41になったので38になったのですが、話をまたいでいた為に判りにくくなっていました。
それを踏まえてプロローグの2・3を修正しました。




