最後の試練
結局チョロに飛んで行ってもらい、バナナを獲得した。
背中に張り付いていたのは拗ねてたのではなく、居心地が良い事に気づいたからだそうだ。
俺の背中は止まり木ですか。そうですか。
守りやすいですからね!と必死に弁解してたので、まあ許そうと思う。別に重くないし。
壁に扉が現れて開いたので、この試練もクリアという事だろう。
時間にして大体2時間近く経ったと思う。
そろそろゴールしないとマズいんじゃないだろうか?
そう思いながら通路を進むと、『最後の試練』と書かれた扉の前に着いた。
『最後の試練』か……。
前回はサイコロだったな。
今回もまた運を試されるのだろうか?
そう思いつつ扉を開けて入ると、中にはドラゴンが居た!
「よく来たな。ここではワシと戦ってもらう。
誰か1人でもワシに傷を付ける事が出来ればクリアとしてやろう」
え~、ドラゴンと戦うのかよ!
シロに鑑定してもらうと、レベル150だと判った。
傷つける?! ムリムリ!!
ここはトムさんの出番だよな!!
トムさんに『1分後に召喚しまーす』とメールを送る。
早すぎると思うけど、目の前に既にドラゴンが居るのだからしょうがない。
召喚後に謝って許してもらおう。
1分経ったので、トムさんを召喚する。
トムさんは口をモゴモゴさせながら現れた。
「モゴモゴ、食事中だったのよ……」
「すみません……」
どうやらメールを見て、慌てて口の中に放り込んで来たらしい。
だが間に合わず、作ったばかりのご飯を2口だけ食べた後に召喚されたそうだ。
確かに昼時だもんな。後で何か美味しい物を食べさせてあげよう。
「で、慌てての召喚だったけど、何の用なの?」
「あ、若干機嫌悪いですか? 後でメシ奢りますから」
「はぁ、まあいいわ。で?」
「目の前に居るドラゴン退治をお願いしようと思いまして」
トムさんはチラッとドラゴンを見る。
何故かドラゴンは引いている。あれっ? ビビってないか?
「な・なぜ、トムが居るのだ!!」
「なんだ、タローじゃない。何やってるの?」
「あれ? 知り合いですか?」
「これくらいレベルの高いモンスターになると、大体知り合いね」
そうなんだ。知り合いなのか。
じゃあ戦わずに通してくれるかな?
「このドラゴン、タローさんでしたっけ? が通せんぼしてまして。
通りたければ戦えって言って来たんですよ」
「じゃあ、タローを倒せば良いのね?」
「待て待て! トムと争う気は無いぞ!!」
「じゃあ通してくれるの?」
「いや、そういう訳にも行かぬ。契約なのでな……」
「で?」
「あの、えっと、そうだな、そちらの誰かと戦うのはどうだろうか?」
「つまり、トムさんと俺達パーティーが協力して戦うって事ですか」
「何を言っておる! 人間! トムとは戦わぬわ!」
「だって、同じメンバーですよ? そうですよね、トムさん」
「そうね。じゃあハンデをあげようか。私は武器を使わない。これでどう?」
「お前は元々武器無しで戦ってたじゃないか!!」
ドラゴン相手に武器無しでも勝てるって事ですか……。
怖~! 怒らせないようにしよ。あれっ? もう怒らせてるような気がする……。
よし、責任転嫁だ!!
「こんな感じで。もう融通の利かないドラゴンなんですよ~。
トムさんを呼ぶ事になったのもドラゴンのせいなんですよね~。
迷惑かなと思ったのですが、目の前にいきなり現れたので……」
「人間! 何て事を言うんだ!」
「あら~、じゃあしょうがないわね~。コイツが悪いのね……」
「いや、ワシも仕事でな? しょうがないんだよ? 判るかな?」
「判る判る。私も今、仕事として召喚されたからね。
私の仕事は目の前の邪魔者の排除。判るわよね?」
「……人間! 汚いぞ!!」
何とでも言って下さい。
仲間を危険に晒せませんので。
トムさんは既にやる気で、指をボキボキと鳴らしている。
「判った! じゃあこうしよう! ワシは一切攻撃せぬ!
それで、人間のみが攻撃して来るが良い!
傷を付けたらクリアとしよう! どうだ?!」
「……どうする~?」
「じゃあそうしましょうか。ただ、何かありそうだと思ったら、トムさん参加してくださいね」
「了~解。しっかり見張っておくわね」
こうして、俺達とドラゴンとの戦いが始まった!
……戦いかな? これ?




