バナナ
クリアすると窓が自動的に開いた。
ここから出ろって事なんだろうか? じゃあ扉でも良かったんじゃない?
そこまで再現したかったのか? 変なこだわりのあるダンジョンマスターだなぁ。
窓から出ると、そこはまた部屋だった。
部屋の中には色々な物が置かれている。
椅子・木の棒・タオル・テーブル・弓と矢・棍棒・などなど。
なんだこれ? 何の意味があるの?
その中に1枚だけ紙があったので拾ってみると、それに指示が書いてあった。
『天井から吊り下げられているバナナを取ってください』
サルかよっ!! すごくバカにされてる気がする!!
天井を見れば、確かにバナナがヒモで結ばれて吊ってある。
あれっ? 高くない?
地面からバナナまで、およそだが5mくらいないか?
普通2mとかだろ? そりゃバナナの存在に気づかないわ。
この部屋に置いてあるモノを使っても届くのか?
どうやって取れば良いんだろう?
「ナグラさん、バナナ取れってさ」
「何で私に言うんですか?! 私はサルじゃないですよ! ウッキー!」
サルじゃないとか言いながら鳴き真似をする所は、さすがと言うべきだろうか。
ボケにボケを返すとは、やるねぇ。
「ちょっとその紙を見せてもらえますか?」
「いいよ。大した事は書いてないけどね」
キジマさんに紙を渡す。
コタニさんはカンダさんと協力して、テーブルの上に椅子を置いている。
すでに作業に入っているのか。真面目だなぁ。
ナグラさんも見習ったらいいよ。
「今読んで思ったのですけど、置いてあるモノを使わなくても良いと思います」
「どういう事?」
「『バナナを取れ』っていう指示だけなので。『部屋の物を使って』とは書いてないです」
「あぁ、そういう事ね。じゃあ魔法使っても良いんだ」
「仕える魔法があれば、ですけどね」
何かこういう時に使える魔法があったかなぁ?
覚えてる魔法の中で、使えそうなのはアースウォールくらいか?
土で壁を作って、それを足場にすれば届くかな?
「じゃあ魔法を使ってみる事にするよ。『アースウォール』!」
「……発動しませんね。土が無いからなのか、魔法が封じられているのか」
確かに地面はコンクリート製だ。
ここに土壁が出来るなら、土はどこから来た?って事になる。
魔法なんだからそこはファンタジーで、ってならないんだよなぁ。
しかし、こうなるとどうしたものか。
斬撃を飛ばすような魔法があれば、ヒモだけ切れるんだが。
そんな魔法は持ってないし、あるのかも知らないけどさ。
素直にフリーズアローでヒモを切るとしよう。
「じゃあ今度は、『フリーズアロー』!」
「……これも発動しませんね。魔法は封じられているようですね」
「出ないのに魔法を叫んでるって、中二病みたいだね」
うるさいぞ、ナグラさん! 俺もそうかなって思ってたのに言うなよ!!
しかし、魔法が封印か……。じゃあどうしようか?
あっ、思い出した!!
俺の靴って『飛翔の靴』って魔法道具だったじゃないか!
これを使って、飛んで行って取れば良いじゃない!
練習を1回もしてないけど、なんとかなるだろう。
靴にMPを流そうとするけど、どうにも反応しない。
あれっ? 放置しすぎた? 壊れたのかな?
「魔法道具に魔力が流れないんだけど、どうしてだろ?」
「魔法を封じてるからでは?」
「ん? どういう事?」
「魔法を封じるというのは、魔力を封じているって事なのです。魔力が流れないようにされてるんですよ。
だから魔法を使っても発動しないし、魔法道具も使えないのですよ」
そういう仕組みなのか。
じゃあ魔法道具が動かないのも納得だ。壊れた訳じゃないのね。
それにしてもすっかり忘れてたわ。練習しておこう……。
「しかし、どうやってバナナを取ったら良いかなぁ?」
「危険と言われだしてる、人間ピラミッドで取れるんじゃない?」
「コラ! 滅多な事言うなよ! でも、良い手かもしれないなぁ」
「あの、ちょっと良いっスか?」
「良いよ~。何か思いついた?」
「またチョロに取って来てもらったら、良いと思うんスけど……」
「「あっ……」」
忘れてた訳じゃないんだよ!
俺の背中にいまだに張り付いてるから、見えなかったんだよ!
本当だよ?!




