運とは……
目の前には上に登る階段があった。
地下エリアはココで終わりらしい。
アレだけの大きさを取るには下しか無かったんだろうな。
今回の事で判った事がある。
それは俺の『運』の事だ。
人よりは運が高い、そして願う事で運を自由に使う事が出来る。
これはメリットだ。
だが、デメリットも存在していた。
それは、不意に起こる事に対応出来ないという事。
まぁ、ゲームに参加させてもらえないってデメリットもあるけど……。
今回は運を使って『なぞなぞ無し』『最短ルートで進む』というように願った。
確かにこのルートが最短なのだろうし、この先でなぞなぞは出ないだろう。
だが、さっきのような『魔法封じ』や『暗闇』などが起こった時に対応出来ない。
そりゃ、その時に『ゴーレムに捕まりませんように』と願えば問題無かっただろう。
でも、それをとっさに行うには訓練が必要だ。
それに、俺は運が高いのでゴーレムに捕まらずにゴール出来るかもしれない。
では仲間はどうだ? 普通の運なので、正に“運任せ”になるのではないか?
人間は、とっさの時には、反射で体が動く。これは考えずに行動している。
逆に言えば、とっさの時は思考が止まるという事だ。
つまり、不意に何かが起きた時に“願う”という行動は難しいって事。
特に他人の事を“願う”のは難しいだろう。
ここまでデメリットを考えて、俺が出来る事はやはり“願う”事だ。
何が起こるのかを予測して、先に願っておく。
これが運をうまく使う方法じゃないだろうか?
多分、1番良いのは『何があっても全員無事ですように!』と願う事だろう。
ただ、それでは使用する運がどれくらいか想像出来ない。
普段は1しか使っていない。たまに大きい事を願うと2~5くらい減っている。
予測だが、対称が多い程多く減るのではないか?
RPGで敵1匹に攻撃する魔法よりも、複数の敵に攻撃する魔法の方がMP消費が高いだろ?
あれと同じじゃないかな?
後、俺はなるべく『運』が100以下にならないようにしている。
100以下になれば普通の人と同じになるからだ。
それに120に戻ろうと不幸がやってくる。
大きく減らせば、大不幸が来るだろう。こればっかりは勘弁してもらいたい。
あれっ? 減らした状態でなら、ゲームに参加させてもらえるんじゃね?
いやいや、そんな危険まで冒してゲームをしようとは思わないわ。
長考したが、運も使い方次第だな、という事だ。
さて、上に登ると前回と同じように迷路が現れた。
何故迷路と判るかと言うと、壁に張り紙があったからだ。
『この迷路にはモンスターが出ます。
モンスターは武器として赤いペンキを持っています。
体にペンキが3回着いた人は退場となります。
立候補者に3回着いた場合は、他の人を1人選んで退場させる事になります。
全員が退場になった立候補者は失格になります。
モンスターを倒してもドロップ品は出ません。
迷路のゴールは赤い扉です』
つまり3回攻撃を受けるなって事なのね。
まぁ、問題無いけどさ。
こういう予測がつく場合は願い易くて良いね。
『モンスターに出会わないように』と願っておく。
さて出発だ、と思ったらキジマさんが不穏な事を言い出した。
「今回の選挙は難しいですね。
ピラミッドは体力と知力。暗闇では魔法を封じてきた。
今度は迷路ですが、モンスターが出るだけの簡単な物でしょうか?」
「えっ? どういう事?」
「例えば出るモンスターが素早いとか。凄く強いとか。
何かそういう罠がありそうと考えてるのです」
「あっ、判った! は~い、先生!」
「誰が先生だ! はい、ナグラさん」
「えっとね、ゴールの扉は赤いって書いてあるでしょ?
モンスターの持っているペンキも赤色。これって怪しくない?」
何か、そう言われると怪しい気がしてくるな……。
ムムム、なかなか鋭い意見だ! ナグラさんのくせに生意気な!




