暗闇
全員が階段を下りると、階段は元の位置へ戻っていった。
引き返せなくなってしまった……。
まあ進むしか無いのだけど。
通路は1本道で、まっすぐ前に伸びている。
20mも進むと、また扉があった。
しかも正面・右側・左側と、3方向に。
どれかを選べという事らしいな。
俺は勘で正面を選んだ。
位置関係から考えると正面が近道だと思ったから。
運も作用してれば、勘を頼りにしても大丈夫だと思う。
俺が正面の扉を開けている時に、ナグラさんが左側の扉を開けようとしたが開かなかった。
やはりどれか一つという事のようだ。
中に入ると、そこは学校の体育館くらいの広さがあった。
バレーのコートが4面くらい取れそうな広さ。
全員が入ると入り口の扉が自動で閉まった!
うわっ、イヤな予感がする!
そう、チョロを見つけた時のような感じだ!
実際は予想以上だった。
中のたいまつが全て同時に消えたのだ!
あっという間に暗闇に包まれてしまった。
慌てて『ライト』の魔法を使うが発動しない?!
「ナグラさん、『レーダー』は?!」
「『レーダー』も発動しませーん!!」
くっ! 魔法が封じてあるのかっ?!
たいまつを用意したいが、しばらく使ってなかったから火のつけ方が判らない!!
ヤバいな、今モンスターが出たり罠が有ったら危険だ!!
「コタニの姉さん、2歩前進して右に1歩移動してくだせぇ」
「えっ?」
「そこに旦那が居やす。ハズキの坊ちゃんは5歩前進でさぁ」
「判ったー!」
「チョロ、見えるのか?!」
「へぃ、元々持っている能力は使えるみたいですぜ」
「ありがたい! その調子で集合させてくれ!」
「了解でさ!」
なんとまぁ、ピラミッドの部屋に続きここでもチョロが大活躍だ!
俺達は暗くて何も見えないけど、チョロにははっきりと判るようだ。
チョロの指示で全員が俺の周囲に集まった。
よし、ここから反撃だぜ!
「チョロ! 何か異変はあるか?!」
「ちょっと待ってくだせぇ。今確認中でさぁ。
……むむっ、部屋の四隅からゴーレムが出て来やした!
それから、隅の方にある扉が開きましたぜ!」
「ゴーレムの動きはどうだ?!」
「う~む、攻撃というより、捕まえに来てる感じですぜ!」
つまり暗闇での鬼ごっこって感じか?
前回のジブ○ルタル海峡の時も、怪我をさせないように網が張ってあったな。
って事は捕まらなければOKなんだな? で、開いてる扉から出ろって事か!
「チョロ! 捕まらないように誘導しながら扉を目指してくれ!
会話はバレるから念話で教えてくれ!」
「了解しやしたぜ! 全員、旦那に捕まってくだせぇ!」
チョロの指示で全員が俺に捕まる。
誰が何処を持っているのか判らない。誰だ! 俺のクビを持ってるのは! 絞まるから離せ!
と・とにかく準備完了だ。
後はチョロの指示に従って、チマチマと移動するだけ。
チョロからは念話で、前前、もうちょい右に、ストップ、とか指示が来る。
このたびにチョコチョコと移動する。
暗闇の中でチマチマとしか移動してないので、どれだけ扉に近づいたのかも判らない……。
ゴーレムが近くに居るのでは、という恐怖感もある。
気力だけで進んでいると、待望の念話が入ってきた!
『そのまままっすぐでゴールですぜ!』
チマチマ歩きを微妙に速度を上げてゴールに向かう。
すると突然、周囲が明るくなった!
振り向けば扉が閉まって行くのが見えた。
何とか全員がゴールできたんだ! 良かった!
「今回も、影の薄いチョロに助けられたね!」
おい! ナグラ! それを言うなよ!
あ~あ、チョロは俺の背中に張り付き泣いてるじゃないか!
それと、俺は知ってるぞ! 俺のクビを持ってたのお前だろ!
明るくなった時に見たんだからな!!




