チョロの仕事
探索を開始したのだが、よく考えればもう必要無いと言えば無い。
チョロが仲間になったから、これ以上ここで増やす必要は無い。
一つのダンジョンで1匹って決まりは無いけど、ノートルダムにも行かなきゃならないしなぁ。
ハズキ君の事も出来れば早急に解決したい。
のんびりしてても良い事は無いと思うからだ。
ただ、これは相手が仕掛けてこないとどうしようもない。
でもダンジョンに居ては、向こうも手出し出来ないし、そもそも居場所が判らないだろう。
という事で、ここでの探索はこの階で止めて帰る事にした。
帰りにチョロに疑問に思った事を聞いてみた。
「そういえばさ、同じファントムのガーは時計に取り憑いてるけどさ、チョロはどうするの?」
「オレはゴーストじゃないんで、取り憑く必要は無いんでさぁ」
「あっ、そうなの? 住んだりするのはどうするの?」
「そうっすね。コウモリなんで、どこでも捕まって寝るんで気にしないでくだせぇ」
「了解。あっ、一応、止まり木くらいは作るかな」
「くぅ~、優しいお言葉! 誠心誠意お仕えしやすぜ!」
「はは、ありがとう」
止まり木くらいで無茶苦茶感謝された。
まぁ、ヒドいダンジョンマスターだったからな。優しくされた事がないのだろう。
「そういえば、これから何処に向かいやすか?」
「一応ノートルダムの王都を目指してるんだよ。判るかな?」
「大丈夫、判りやす。ならば丁度通り道でやすね」
「ん? 何が?」
「このダンジョンを出て王都に進むと、地上にダンジョンがありやす。ご存知ですか?」
「あぁ。前に聞いた。近寄らない方が良いって言われたかな?」
「そこに寄ってもらいたいんでさぁ」
確か、ニーベル国の王都のギルドマスターに言われたんだっけ?
当初は行こうと思ってたけど、これだけ従魔が集まればもう寄らなくて良いんだけど。
それよりも早く先に進んで、色々やってしまいたい。
「何でそこに寄る必要があるの?」
「旦那は馬車をお持ちですよね?」
「あぁ。持ってるけど。それが?」
「そこには、通り掛かりに馬車に取り憑くモンスターが居るんですよ。
気づかれない内に取り憑いて、乗っている者を眠らして食べるんでやす。
レベルも30となかなか高く、取り憑かれた馬車は放棄するか壊すのが決まりになってやすね」
「げっ! 何その迷惑なモンスターは!」
「こいつを従魔にすれば、馬車に乗っている間の安全が保障されるって寸法でやすよ」
そういう事か。逆に考えろって事ね。
確かに厄介なモンスターだけど、従魔になってれば外敵から馬車を守る事が出来るって訳だ。
問題は俺より強い事だな。従魔にする前に取り憑かれたらどうする?
「理由は判った。ただ、どうやって従魔にするんだ?」
「知っているヤツが1匹いるんで。そいつが倒されてなけりゃあ、話をしやすぜ」
「モンスターって、ダンジョンが違っても知り合えるの?!」
「そこのシロさんもそうでやすが、ダンジョンを行き来する方法はあるんでやすよ。
まあオレの場合は、トレードされたんでやすがね……」
あぁ、モンスターハウスに入れるモンスターを、ダンジョンマスターがトレードして手に入れたんだな。
その中にチョロも入ってたって事か。
「でもモンスター同士も戦うんだろ? よく知り合いになれたな?」
「あいつは馬車だけあって血が無いんでやすよ。向こうもオレを食べられないで」
「食えなきゃ敵にもならないのか……。世知辛いな……」
「モンスターなんて、そんなもんでやす」
悲しい話だ。正に弱肉強食だわ。
まぁ今回はそれのお陰で助かるけどさ。
「判った。じゃあそのダンジョンに行って従魔にしよう」
「お聞き頂きありがとうございやす」
「あっ、一つお願いしても良いかな?」
「何なりとどうぞ」
「今、この子、ハズキ君が狙われてるっぽいんだ。
だから周りを警戒しといてくれないかな?」
「判りやした。旦那とお仲間の方には不穏な輩は近づけさせませんぜ!
勿論、遠くからの攻撃も当てさせません! オレは眠る必要も無いんで、夜でも問題ありやせん!
ただ、オレの防げる範囲はオレの半径5m内なんで、あまり離れないでくだせぇ」
「了解。よろしくな」
これで、ハズキ君を人攫いから守れるだろう。
そう考えると、チョロはかなり便利だ。優秀なのを拾ったね。
いや、シロが役立たずとか思ってる訳じゃ無いよ?!
シロは癒し担当だから!!
『鋼の籠手は何処に行った?』というご指摘を頂きました。
すっかり忘れていました。申し訳ありません……。
14話と107話を改稿しました。
『鋼の籠手』は『鋼の剣』と共にキジマさんに譲った形にしました。




