時の運
壁から出て通路に入ると、壁は閉じてしまった。
ここからはまた迷路なようだ。
さっきの部屋で納得出来なかったので、今度は『最短距離で進みたい。でもなぞなぞは無しで!』と祈った。
もうあんなのは勘弁だ。
あぁ、ここから出たら、2トップの2人には何かお土産を買っていこう。
どっちが閃いたのかは判らないけど、助かった事には変わりないから。
迷路内にはモンスターは出ない。
ここは完全に隔離されているようだ。
安全に進めるのでありがたい。
運を使ってるのでモンスターが居ても大丈夫なのだが、警戒しながら歩くのは精神力を使うからね。
進んで行くと、またもや知力の扉があった。
ここに入れって事なんだろうな……。
なぞなぞじゃないのは判ってるが、クイズとかだったら発狂するかもしれない。
恐る恐る入ると、そこには懐かしのおもちゃがテーブルの上に置いてあった。
その横には説明の書いてある紙が1枚。なになに?
『これを下記のように並べてください。
数字はスライドさせる事しか出来ません。
制限時間は10分です。
一つ目をスライドさせた所からカウンドダウンが始まります。
1・2・3・4
5・6・7・8
9・10・11・12
13・14・15・空白 』
そう、これは懐かしの15パズルだ!
空白を利用してスライドさせて行き、上記の完成形にするゲームだ。
現在は、
6・9・1・12
8・3・15・11
10・2・5・4
13・14・7・空白
となっている。つまり4を下にずらすか7を右にずらすか、でゲーム開始だ。
数字には溝があり、ひっくり返してもバラバラにならないように作ってある。
居るんだよな、出来なくてイライラしてバラバラにして完成形にするヤツ。
それが出来ないように、ちゃんと作ってある。
しかもこれ、テーブルに固定してあるわ。インチキはダメって事なんだね。
俺が挑戦しようとしたら、ナグラさんに止められた。
「これは私に任せてください!」
「いや良いけどさ、ちゃんとクリアしろよ? ネタに走るなよ?」
「私が何時ネタに走りましたか!」
「いや、いつもだと思うけどさ……」
「……気のせいです。このパズルは入院中にP○Pでやってました! 最短記録を持ってます! お任せあれ!」
「ちなみに何分でクリアしたの?」
「1分26秒です!!」
「早っ?! じゃあお任せするよ。ネタに走らずクリアしてくれ」
「一言余計です! 見てなさいよ!!」
ナグラさんは言うだけあって、凄い速度で完成形に近づけていく。
それを見ていたハズキ君は、ずっとスゲースゲーって言ってる。
そして俺を見て、帰ったら作って! って言ってきた。
あ~木で作れって事ですね。別に俺は木工職人では無いのだが。
まあ溝とか考えないで良いなら、俺でも作れそうだよ。頑張ってみるかな。
そんな事をハズキ君と話してる間に、ナグラさんは完成させてしまった。
クリアタイムは、なんと1分25秒!!
こんな所で記録更新させてしまった!! うわっ、凄いドヤ顔してるわ。ムカつく。
完成したパズルは白く輝き、そして消滅した。
するとまた目の前の壁が開いて、次へ行く道が出来た。
新たな迷路を進んで行くと『最後の試練』と書かれた扉に到着した。
ここまでパーフェクトでクリアしてきたので、多分俺達がトップだと思う。
これをクリアすれば優勝だな。よし、頑張ろう。
扉を開けて入ると、そこには台が一つポツンとある部屋だった。
さっきの知力の部屋よりも狭い。
正面の壁には入り口とは別の扉がある。あれが出口だろうか?
台の上には茶碗が一つだけ置いてある。
その上に説明の書いた紙が乗せてあった。
『最後の試練です。
茶碗の中にはサイコロが1つだけ入っています。
そのサイコロを振り、3回連続で1を出してください。
サイコロが茶碗から出たらスタート地点に戻されます。
振らずに置いたら失格になります。
制限時間は10分です。
成功すると、正面の扉が開きます。そこをくぐればゴールです。
サイコロを持った時からカウントダウンが始まります。』
最後に『時の運』とはね。
でもさぁ、これって、多分余裕でクリア出来るよ?
それともこの部屋は『運力』の使用が不可能になってるのだろうか?
だとしたら手ごわいけど。でも、もしそんな無効化の技術があるなら欲しい!
その技術を俺の家に設置するのだ! そして遊びに参加させてもらうのだ!!
ちょっと期待してサイコロを振った。
……あっけなく3回連続で1が出たよ。




