酒場
5日目は休養にした。
ハズキ君もレベルが上がったとはいえ、戦いっぱなしだったからね。
皆にどうする? って聞いたら、女性陣はダンジョンに行くので送り迎えヨロシク! と返事が。
いや、休みの使い方は自由だけどさぁ……。
俺は王都を探索する事にした。よく考えたら全然見て回ってないもんな。
そう伝えると、カンダさんもついて来る事になった。
護衛だそうだ。真面目だなぁ。
さて、散策に出たのは良いけど、どこに行ったものか。
王都の門・タルーンさんの店・貰った自宅・城・ギルド、これだけしか知らない。
ヒタキさんから、一応アドバイスだけは貰っておいた。
貴族街には近寄らない事、とだけ言われたんだ。
貴族街が城の近くにある、1段高い区域らしい。まぁ頼まれても行かないけど。
貴族街の近くには貴族も居るだろう。出来るだけ離れた方が無難だな。
一応同行者の意見も聞いてみよう。
「カンダさん、どこか行きたい場所ある?」
「いえ、別に。あぁそうだ、酒場でも行ってみますか?」
「おっ、いいねぇ!」
そうだ、いつもは女性や子供が居るから行かないんだよな。
サガワさんのホテルに泊まった時は、部屋に置いてある酒を飲んでたけど。
外で飲むなんて初めてじゃないか! ちょっと楽しみだ!
カンダさんとブラブラ歩きながら酒場を探す。
カンダさんが言うには、そういう店は大通りから1本入った道にあるって事らしい。
なので表通りを避けて、1本入った裏通りを進む。
こういう所って怪しい店が多いかと思ってたけど、そんな事は無かった。
どうやら大通りに出す程儲かって無いけど、人気のある店が並んでるそうだ。
納得だ。確かに大通りの店は、何か一流店って感じだもん。こっちは庶民の店って感じ。
そう考えると、大通りにあるタルーンさんの店は一流なんだな~。
食料品店でお土産のフルーツ盛り合わせを買い、ついでに酒場の場所を聞いた。
教えてもらえたが、お土産を奥さんの機嫌取りと勘違いされた……。
オススメの酒場は、もう1本入った道にあった。
中に入ると、ちょっとしたバーみたいな感じだった。
俺の中のイメージでは、チンピラがテーブル席で飲んでて絡んできて暴れるってのがあったんだけどさ。
なかなかオシャレな店だ。前世の日本でも通用しそう。
カウンターに座り、まずはビールを頼む。ファンタジーに出てくるエールじゃ無くビールだったよ。
カンダさんと乾杯をして一気に飲む。うん、美味い!
今になって気づいたけど、なにやら奥の方が騒がしい。
ちょっと気になって見てみると、何かゲームをしているようだった。
丁度マスターがお代わりを持って来たので、聞いてみる。
「あれは、何をやってるんですか?」
「ん? ああ、あれはダーツだよ」
「ダーツ!!」
「おや、お客さん、知ってるのかい?」
「知ってますよ! えっと、小さい矢を点の付いている的に投げるんですよね?」
「その通りだよ。ここでは小銭を賭けてやってるのさ。おっと、内緒だよ?」
「ハハハ。言いませんよ」
一時日本でもブームになったもんな。俺も家にセットを買って持ってたよ。
アパート暮らしだったから、壁に穴を開けないようにとプラスティックの先だったけど。
懐かしいので、ちょっとやってみたくなった。
「誰がやっても良いんですか?」
「おう、良いよ。やってみるかい?」
「そうですね。挑戦してみましょうか」
「了解。ちょっと待ってな」
マスターに呼ばれた従業員は、そのままダーツの所に行った。
そして俺を手招きしてくれたので、カンダさんと一緒に向かう。
「おう、兄ちゃんが挑戦者か?」
「はい。やらせてもらいます」
「じゃあ俺と対戦だ。ゲームは301で良いな?」
「はい。大丈夫です」
ダーツは基本、1ターンで1人が3本投げる。
301とは、ピッタリ301点を減らすゲームだ。
例えば、3本投げた矢が12・17・3だったら、合計の32点を引いて269点になる。
これを繰り返して行き、先に0点にした方が勝ちなのだ。
ちなみに、残り3点の時に4点以上に当ててしまうとバーストとなりターンが終了する。
これは1投目だろうとバーストになる。3投目の場合、1・2投目の点は無効になる。
最初は大きく減らし、中盤で点を調整して、終盤に狙いやすい数字を残すのが定石だ。
上手い人は50点×6発で、最後に1点に当てて終わらすけどね。
さあ、ゲームを始めようか。




