ハズキ君の成長
さて、選挙まで1週間あるのだが、既にこのダンジョンには用が無くなってしまった。
従魔は手に入ったからだ。
別に1つのダンジョンから1匹って決まりは無いのだが、シロ以上のが居るとは思えないってのが理由。
では何をしているか。それは1階でトレント狩りだよ。
そう、シロの食料集めなのだ!
1回に1匹分のチップを食べるので1日に3匹分必要。
最低1週間分必要なので、21匹分。
なのに女性陣は張り切ってしまって、狩り尽くすんじゃないかって勢いで倒している。
これも俺のせいなんだろうけど……。
俺が倒した時は、ほぼ間違い無くレアドロップが出る。
トレントのレアドロップはピーチのチップなのだが、極稀にサクラのチップが出るのだ。
当然の様にサクラのチップを手に入れた俺は、それをシロに上げてみた。
すると凄く喜んで食べたのだ! いつもカリカリしかもらえない猫に、ネコ缶をあげた時の様だった。
それを見た女性陣が奮起したのだ。
ちなみにピーチのチップはデザート扱いだった。嬉しいけど主食にはちょっと……って感じ。
女性陣が頑張ってる中、俺は何をしてるのか。
カンダさん・ハズキ君と一緒に入り口付近に居ますよ?
はい、狩りには参加させてもらえませんでした。俺が倒すと簡単に出すからって事らしい。
ハズキ君はゼリースライムを狩っている。カンダさんが指導と護衛。
俺はというと、ここでもジェンガのコマを作っている……。寂しいので、たまにシロの頭を撫ぜながら。
出た木屑はシロがすぐに食べてくれる。環境に優しい子だ。
で、1日の成果は「ヒッコリー…273・ピーチ…24・サクラ…1」となった。
サクラを出したのはコタニさん。大喜びだ。
出した者があげる権利を持っているそうな。なんじゃそりゃ。
殲滅させる気なのか? ってくらい倒してるよね。
まあ有って困る物じゃないから良いけどさ。
これが1週間も続くと思うとウンザリする……。
しかし、300近く倒しても出るのが1個か~。たしかにレアだわ。
2日目も同じ。
なので俺はこっそりと動いた。
で、トレントを倒してサクラのチップを30ほど集めておいた。
これでしばらくは大丈夫だろう。
何が大丈夫かって? もう飽きたから来たくないの! 別の所に行こうと思ったの!
ちなみに今日は、サクラのチップが1つも出なかったそうだ。
3日目。別の所に行こうと提案してみた。
当然の様に女性陣からは反対の抗議が飛び交う。
チップ集めをしたいだけなんだろうが、それを言ったらマズいと感じてるのか上手い事言い訳をしてくる。
「今から移動しても次のダンジョンまで何日かかるか判らない」
「このダンジョンでハズキ君のレベルを上げるべきだ」
「もっと深く潜ればいいじゃないか」
要約するとこんな感じ。
結局の所、その意見を採用して3階に行く事にした。女性に逆らうと後が怖いからじゃないよ?
3階に行くと、女性陣はすぐに俺に指示を出してきた。
曰く『運を使って軍隊アリと遭遇しないようにしろ』という事らしい。
同属を殺すのは可哀相って事なんだろうけどさ、俺、雇い主だよね? まあ従うけど……。
ここのダンジョンはずっと同じ風景だ。
森というほど木が無いが、平原と言うには木が多い。林って感じだろうか。
だからじっとしてればトレントは見分けが付かない。
だが、アホなのか、視認出来る距離になると近づいてくるのだ。
このトレント狩りを目的としてる女性陣に向かって! アホとしか言い様が無いな。
3階にはオークが存在した。
チップの村で燻製してる肉は、ここから入手してるんだな。
レベルが10~15なので、今レベル5のハズキ君のレベルアップには丁度良い。
まずは頑張ってトドメを刺す所から始めてもらおう。
こいつらもバカなので、罠を仕掛けると簡単に引っかかる。
今も俺の仕掛けた罠に引っかかって、宙吊りになっている。
棍棒(木の棒)を取り上げて、後はハズキ君が攻撃して倒すだけ。
これを20回も繰り返すと、レベル10になれたようだ。
レベル10という事は、1人でもオークを倒せるという事だ。
なので、皆で戦い方を指南する。
対峙の仕方、攻撃方法、弱点の攻め方、防御方法、等。
すぐに実践ってのは危ないので、今日はこれで帰る事にした。
明日は皆と組み手をして合格すれば、オーク相手に実践だ。
4日目。当然の様に朝からダンジョン。
安全の為にと言われ、1階で組み手をした。
終わった女性陣から順番にトレント狩りが始まった。それが目当てかよ……。
何とか合格ラインに達したので、午後から3階に行く事に。
危険となれば俺達がすぐフォロー出来るように、オークを取り囲んでの本番だ。
1匹目の時は緊張からか、1撃食らいそうになったので補助が入った。
2匹目で、何とか1人で倒す事が出来た。お見事!
今日はこれで帰ってお祝いだね。




