選挙
「選挙って、あの選挙?!」
『どの選挙?』
「落ち着いてください、福田さん。選挙って、人を選ぶ為に投票する選挙の事よね?」
『そう』
良かった~、キジマさんが繋がってて。俺だけだったらいつまでも質問しちゃってたよ。
って、選挙?! 何で?! 誰がこのダンジョンのセンターになるのか決めるの?!
CPD48とかあるのか?!
「何で選挙なの?」
『王が死んだから』
「王?」
『軍隊アリの王』
俺が混乱している間に、キジマさんが質問を続けていた。
気づくと皆が周りに居て、全員がシロの手を持っていた。
いや、違う。カンダはキジマさんと同じ手を持っている。チッ、リア充め! 蟻酸でも浴びてろ!
「王を決めるのに選挙をするのね?」
『違う。まず代表』
「あっ、判ったっス。このダンジョンの代表を決めるんスね?」
『そう』
「なるほど。で、その代表が王を決める選挙に出るって事か」
「じゃあ今から投票に行くのね?」
『違う。立候補』
「「「「えっ?」」」」
なんと! この子は立候補する気だったらしい!
こんな気弱そうなのに大丈夫なのか?! しかもその途中で俺の従魔になってるし!
「じゃ・じゃあシロちゃんは、王様になりたいのね?」
『そう。王になる』
「あっ違う違う。そういう時にはこう言うのよ。ゴニョゴニョ……」
『アリの王に、俺はなる!』
「アホな事、教えるな! このバカ勇者が!!」
またデコピンをプレゼントだ!
俺は両手が空いてるからな。両手で乱れ撃ちだ!! アタタタタタ!!
「……じゃあ今から立候補しに行くっスか?」
『そう。この先に受付があるの』
「で、向かってる途中に福田さんに見つかった、と」
『そう。怖かった……』
「可哀相に……。怖かったでしょう? よしよし」
キジマさんよ、俺を悪魔のように言うのはどうかと思う。
そして泣きながら頭を撫ぜているが、ソレ貴方の嫌いな虫系ですよ?
変わり身早いな、おい!!
「従魔になっても立候補出来るのか?」
『うん。むしろ有利』
「有利なんスか?」
『うん。後ろが強いと良い』
あぁ、後ろ盾の事ね。そりゃタダの1兵士よりも、強いのがバックに付いてる方が有利だよな。
でも俺なんかで良いのかね?
「福田さんでも良いのですか?」
『良い。強いのが見えた』
「強いのが見えた?」
キジマさん、さっきから扱いがヒドイですよ? 福田さん(でも)ってなんだよ!
しかし、どういう事なんだろうか? 何が見えたのだろう?
『シロ達は、ある程度見える』
「何が見えるんスか?」
『読めないけど、見えるの』
「どういう事だ?」
「見える? でも読めない? でも強さが判る? あっ! もしかして!」
「ん? 何か判ったの?」
「勘ですけど、福田さんのステータスを見たんじゃないですか?!」
なるほど!! 識字率が低いから読めないけど、数字は判るから「読めないけど見える」ってなるのか!
もしかしたらA~Eのアルファベットくらいも判るのかも。それなら強い弱いが判るね!
だからトムさんに怯えてたのか! キモいからじゃないんだね!
「納得だわ。それしかないでしょう。見た目は弱そうだもの」
「うん。キジマさん。俺に何か不満があるなら聞くよ?」
『主人、強いよ?』
「うっ! シロ~! お前はええ子や~!!」
『じゃあ撫ぜて』
いくらでも撫ぜてあげるよ。よしよし。
あっ、この子が居れば、ある程度『鑑定』が出来るんじゃないか?!
まあ文字を教えないといけないけどね。
色々理解出来たので、皆で選挙事務所に行く事にした。
そんな物まで用意してるとは、優秀だな、軍隊アリ!




