シロ
「今日から君は『シロ』だ! よろしくな!」
『ボク、シロ。よろしく』
お~、無事に念話が出来るようになった。
皆が羨ましそうに俺を見ている。話が出来る事が羨ましいらしい。
するとシロがナグラさんの手を握った。
『聞こえる?』
「聞こえます! わぁ、凄い! 触れてると聞こえるんだ!」
「本当っスか?! じゃあ自分もっス!!」
「ボクも聞くー!」
「じゃあ俺も」
おいおい、いくらシロの手が4本あるからって、皆で繋がなくても良いだろ?
そう、シロはアリらしく手が4本あるのだ!
だからと言って気持ち悪いとかって事は無い。どちらかといえば便利そうだな~って感じ。
俺は触れて無くても会話が出来るので問題無いけど、仲間はずれの気がして来たのでシロの頭を撫ぜる。
「右手からナグラさん、コタニさん、ハズキ君、カンダさん、だよ。
それから、あそこで放心してるのがキジマさんだ。仲良くしてあげてくれ」
『うん。仲良くする』
「よろしくね」
「よろしくっス!」
「仲良くしようね!」
「よろしくな」
うんうん、良い子だ。問題無いだろう。そうだ、他の従魔にも紹介しておこう!
って事で、ガーとトムさんを呼び出した。
「新しく従魔になったシロだ。仲良くしてやって欲しい」
『シロです。よろしく』
「キャー!! 可愛い!! シロちゃんね!! 私はトム!! よろしくね!!」
『私はガーだ。よろしく頼む』
トムさんの可愛がりが尋常じゃない。引くわ~。見ろ! シロが少し涙目じゃないか!!
逆にガーは淡々としている。あまり感情の起伏が無いような感じだ。
ちなみにポチは呼び出しに応じてくれなかった……。本当に俺の従魔だよね? ナミちゃんのじゃないよね?
さて、いい加減、放心してる人を再起動させますかね。
立ったまま死んでるんじゃないかって思うほどなんだよな。近づいても反応しないくらい放心してる。
一応攻撃されたら困るので、武器を外させてもらう。それでも動かないよ、この人……。
「シロ~、こっちおいで~」
俺が呼ぶとテテテとこっちにやってきた。うん、可愛い。
シロにキジマさんの手を握らせる。これで準備完了。
後は再起動するだけ。昔の電化製品って叩いて直してたよね。よし、叩こう。
外したキジマさんの剣で頭を叩く。勿論鞘に収まった状態で、だよ?
それをみていたシロはビクッってなってたけど。
さすがに痛かったのか、キジマさんは頭を抱えてうずくまった。シロの手を握ったまま。
『大丈夫?』
「ううう~……だ・大丈夫……うん?」
『良かった』
「ありがとうございます? ……!!」
やっと誰が話しかけてるか判ったようだ。目を見開いて驚愕の表情をしている。
さて、どうするのかな?
「……貴方は?」
『福田様の従魔の、シロです』
「……良し!」
「良しって何よ?」
「従魔って事は虫じゃあありません! セーフです!」
「その理屈が判らない!!」
「そうなんです!! シロは虫じゃあありません、従魔です!!」
「じゃあトムさんは?」
「ケンタ、いや、従魔のトムさんです!!」
「鶏肉の店みたいだな! まぁ、納得したんなら良いけどさ」
結局、可愛いに虫嫌いは負けたようだ。
まあ毛嫌いされなくてなによりだったよ。
さて、そんな事よりも、何故シロがあそこに居たのかを聞かなきゃね。
俺が運を使ってたって事もあるだろうけど、それは発見しただけだと思う。
例えば、巣があるとして、そこから出てくるには何か理由があっただろうと考えている。
何か用事があったなら、させてあげたいじゃない?
「シロ、何であそこの木の所に居たの?」
『選挙があるの』
はい、全く意味不明な回答でした……。




