トレント退治
ハズキ君の安全の為に運を使っている。
『モンスターは、1匹づつ出てきて欲しい』と願っといた。
これで危険は無くなるはずだ。イザとなれば全員で攻撃するだけ。
願った甲斐あって、モンスターは1匹づつしか出てこない。
今はゼリースライムが登場している。
「ほら、ハズキ君。ゼリースライムだぞ。倒して来い!」
「任せて! たー!!」
「ほら、ちゃんと避けないと! 当たってもたいして痛くないからって避けないとダメだぞ!」
「うりゃー!!」
「そうそう、避けながら切るんだ! うまいうまい!」
3分の格闘の末、やっと倒した。
まだ避けながら攻撃するってのが上手く出来ないようだ。
カンダさんが教えてるからかなぁ?
次に出てきたのはトレントだ。動く木だね。高さは1mちょいで、ハズキ君と同じくらい。
葉っぱの付いた枝を振り回している。
ここはちゃんと教えておかないと危険かもしれない。
「ハズキ君。あれは枝で攻撃してくる。枝を避けたらモンスターに触れて『ファイア』を使うんだ。判った?」
「うん! 避けて『ファイア』だね!」
「そう。う~ん、1回手本を見せた方が良いなぁ。ナグラさん、頼めるかな?」
「良いですよ。任されました!」
ナグラさんは試用のミスリルの剣を持って突進していった。
そして、目にも止まらぬ速度でトレントを真っ二つにしてしまった……。
「見ましたか! 凄いでしょ!」
「バカか?! バカなのか?! 手本を見せろって言ったんだよ! 一刀両断してどうする!!」
デコピンを1発与えて説教だわ! この攻撃特化のバカ娘が!!
しょうがないので、『トレント、1匹出てきて~!』と祈る。
するとすぐに新たなトレントが出てきたので、今度はコタニさんに頼んだ。
はい、見事な切断ですね……。
「どうっスか!」
「だから手本だって言ってんの! 魔法を使えって言ってんの!」
「だってナグラさんがこうしろって言ったっス! 『天丼って技よ!』って言ってたっス!」
「お前のせいか!!」
ネタ仕込んでんじゃねぇよ!
しかも出来たからって技じゃないし、攻撃力が上がる訳でもない。
しょうがない、自分でやろう。また祈るのか……。
「おっと、今度は自分がやるんですね? 見ててなさい。見事な天丼をするわよ?」
「しね~よ!!」
何で俺までネタに走る必要がある?!
ちゃんと真面目に、攻撃を避けてから幹に触れて『ファイア』を使った。
トレントはあっという間に燃えて無くなった。弱い……。
「普通に倒したっス……」
「うわ~、空気読みなさいよ……」
何だろう、この「俺が悪い」みたいな雰囲気は!
普通に手本を見せただけなんだが。
ハスキ君は混乱している。おい! お前らのせいだぞ!
二人にはデコピンを3発ほどサービスしておいた。
「あの二人のはレベルが上がってからだからね? 最初はちゃんと避けてから『ファイア』だよ?」
「俺もアレ、やってみたい!」
ほらみろ、感化されちゃったじゃないか!!
どうするんだよ!! も~、1回やらしてみるしかないか……。
ハズキ君にはショートソードを持たせる。重たいようで、両手で持っている。
それで走ったり避けたり出来るのかなぁ?
カンダさんには囮となってもらう為、トレントの前に立ってもらった。
トレントはバカなので、カンダさんにしか意識がいってないようだ。
ハズキ君はその隙を突いて、横から攻撃していった。
剣を横に持ったまま、走り抜けるだけだが。
だが、ハズキ君の握力では無理があったようで、2cmほど切った所で止まってしまった!
ナグラさんが『瞬歩』でハズキ君を確保したので、俺は『ファイヤーアロー』を撃ってトレントを倒した。
倒せなかった事で、ハズキ君がヘコんでいる。
「もう少し筋肉をつけないとな。そうすれば出来るようになるさ。
きちんと倒す事が重要なんだよ。今は、最初に言ったように「避けて『ファイア』」だぞ!」
「……うん、判った」
もう! お前らがフォローしろよ!!
俺ばっかりにやらせるな!!




