また謁見の間
俺だけで良いらしいけど、筋肉痛で歩けないのでカンダさんにも来てもらう。
何とか迎えの馬車には乗り込んだけど、降りたくない。
もー、メール送ってくれれば良いじゃないか!
そうすれば『コネクト』で門を繋ぐから、家に来てくれれば良いのに!
って2トップや王様に言えるわけも無く……。
城へ到着すると、御者をしていた騎士の人が車椅子を持ってきてくれた。
どうやら怪我をしていると勘違いしたらしい。
ありがたい。ありがたいが、筋肉痛でそれに乗るのはなかなかに恥ずかしい!
横を見れば事情を知っているカンダさんは笑いを堪えている。
折角の親切なので、結局使わせてもらう事にした。
歩いていくと、いつになったら到着するか判らないからね。
到着したのは謁見の間だった。
謁見の間で話さないといけないほどの問題のようだ。
騎士が声をかけ、扉が開かれる。
中には前回の半分ほどだが、貴族が集まっていた。
係わりの無いような貴族は呼ばれなかったようだ。
ヌマタ卿は王様の横で笑いをかみ殺している。ちっ、車椅子に乗っている意味が判ったな!
王様やネモト卿は心配そうな顔をしているが、わざわざヌマタ卿が教えに行った。
耳打ちされると、2人も笑いたいのに笑えない、そんな顔になった。
くそぅ、笑いたければ笑えよ!!
大体こうなったのは、ヌマタ卿、貴方のせいですよ?!
「福田殿、負傷中に呼び出してすまなかった。緊急の案件なのでな」
「問題ありません」
王様は一応負傷中という事にしてくれた。
まぁ王様の前で筋肉痛で歩けませんって発表出来ないよな。周りの貴族が怒る。
しかもネモト卿やヌマタ卿ではなく王様が言った事で、誰も逆らえなくなった。
ありがたい。事情を知ってれば晒し者扱いだけどな……。
「さて、此度の事だが、詳しい説明はヌマタが話す。良いな?」
「はい。まずわが国で盗賊が暴れておりました」
周りの貴族がザワザワしだす。
あれだけ厳しい警察が居るのに、盗賊が居る事が問題だからね。
犯罪は無くならないだろうけど、道中襲うような盗賊が居るなんて国としては問題だろう。
「それを福田殿が捕まえてくださったのです。
しかしその盗賊は、実は他の国の間者だったのです」
ザワザワがさらに大きくなる。
盗賊が居ただけでも問題なのに、それが他の国の間者だったなんて。
「その間者も福田殿の機転により逮捕する事が出来ました。
その者は私に渡していただきましたので、城に連れて帰り尋問致しました」
俺の機転じゃないけどね。何でも俺の手柄にするのは止めて欲しい。
ヌマタ卿の俺を犠牲とした作戦でしょ? そのせいで現在、車椅子なんだよ?
周りの貴族は俺を見て、「その時に負傷したのか」という目で見てきた。名誉の負傷だという賞賛の目だ。
ごめんなさい、負傷してません。ただの筋肉痛です。
「その間者の目的は、王太孫のハズキ様を誘拐する事だったのです!」
一旦収まってたザワザワが一気に大きくなった。
そりゃそうだ。王の孫を攫うなんて、戦争になっても不思議じゃない事だ。
「間者を送り込んだ国は……魔道の国ノートルダム!
その国のある貴族が黒幕だったのだ!」
軍関係の貴族は、今にも戦争だと言い出しそうなくらい憤慨している。
こりゃ魔道の国に行く所じゃないかもしれないな。
「静まれっ!!」
王様の一言で、謁見の間に静寂が訪れた。
腐っても王様だな。……おっと失言。まだ腐っては無かったな。腐りかけだわ。
「目的までは教えられてなかったようだ。
なので、少々危険ではあるが、そこの福田殿の協力を得て囮作戦を決行する事にした!」
またザワザワしだした。
俺もザワザワだよ! 協力するなんて初耳ですけど?!
歩けない人間に何をしろと?!
まずは、筋肉痛を治せる魔法使いを紹介してくれ!!




