ヒタキさんに相談
計画をおさらいしよう。
まず、盗賊の簒奪品の中に俺の腕時計を混ぜる。
国境の検査施設に賊が入る前に、従魔であるトムさんに襲わせる。
警備している騎士が来るまでに腕時計をトムさんに発見してもらう。
近くに居れば従魔同士は念話が出来るので、発見は容易だろう。
そこに俺とヌマタ卿が駆けつける。
警備の騎士とヌマタ卿と俺が揃ってる所で盗まれた(って事にした)腕時計を発見する。
腕時計が俺の物と証明する為に、腕時計からガーを出す。
盗品発見の現行犯なので、外交特権関係無しで逮捕する。
こんな流れだ。
外交官には荷物検査が出来ないから、こんな搦め手で攻める訳だ。
そして良い様に使われる俺。これで良いのか?
ちなみに簒奪品の受け渡しは、盗賊のボスがやる。
部下として、変装した騎士が周りに居る状態で。
逃げる事も出来ないし、変な事を言ったりすればその場で殺されるだろう。
ヌマタ卿に脅されてたので、変な事はしないと思うけど。
そう! 何であんなに怯えてたのか、ヌマタ卿に聞いてみたんだ!
そしたらさあ、
「何故でしょうね?」
って言って、ニコッとした……。怖いわっ!!
あまりの怖さにそれ以上は聞けなかった。
今度、ギルドマスターか王様かネモト卿に聞いてみようと思う。
さて、宿場町まで後1kmくらいの所まで来たのだが、今日はここで野営だそうだ。
後から来た騎士隊が野営に必要な物を持って来た。
準備周到だなぁ。
俺達は『コネクト』で家に帰って良いそうだ。
馬車は騎士が見張ってくれるらしい。
ちょっと悩んだけど、今日は王都の家に戻る事にした。
ヒタキさんに相談したい事があったからだ。
先にメールで知らせておいてから王都の家に戻ると、門の設置した部屋に既にヒタキさんが待っていた。
「お帰りなさいませ。既に風呂の準備は出来ております」
「ありがとうございます。えっと、女性陣から入っていいよ~!」
「「「は~い」」」
どうやら皆で一緒に入るようだ。ついでにハズキ君も一緒らしい。
イヤがってたが、無理矢理連れて行かれた。出来る事なら俺が変わってやりたい。
「そうそう、ヒタキさんに相談したい事があるんですよ」
「福田様、私は雇われてる身。敬語など使われませんように」
「そ・そうですか?」
「そうです。お止め下さい。屋敷の中ではまだ良いですが、外でいつ敬語が出るか判りませんので」
「りょ・了解です。あっ! 了解したよ」
そう言うと頷いてもらえた。どうやら合格のようだ。
いやぁ、何か威厳があって、つい敬語になっちゃうんだよね。気をつけよう。
「それで、相談とは何でございましょうか?」
「あぁ、ハズキ君の事なんだ」
「ふむ。まずはリビングに行きましょうか。お茶を用意しております」
俺とリビングに移動した。
カンダさんは荷物を置いてくるそうだ。どうせ明日また行くのに。
お茶を入れてくれたのは、ヒタキさんが連れて来たメイドさんだった。
「それで、どのような事でしょうか?」
「ハズキ君に魔法を教えても良いのかって事です」
「福田様、敬語になってますよ?」
「あっ! ええと……魔法を教えてもいいかな?」
「そうですね、生活魔法くらいならよろしいと思います」
「攻撃魔法は危ないからね。了解です……いや、判ったよ!」
「出来ればですが、理論から教えて頂けるとありがたいですな」
「理論?!」
驚きの言葉が出たぞ! 理論とは! 魔法の理論って何だ?!
ヤベェ、本を読んだだけで覚えてたから、理論なんか判らないぞ~!
「はい、理論です。火とは? 水とは? こういう事も教えて頂きたいのです」
「あっ、そういう事ね」
つまりは科学を教えろって事だ。簡単に言えば理科だね。
OK、それなら何とかなりそうだ。
結局魔法も科学なのね。




