罠の有効活用
おっと、その前に一つ確認をしておこう。
「右斜め前に進むのが本当のルート、ってのは判った」
「違うって言ってるだろ?!」
「種明かしをしてやろう。俺はウソを見破る魔法道具を持ってるんだ。
さて、お前の言う左斜め前のルートには何があるのかな?」
「……」
盗賊は驚いた顔をした後、こっちを睨んできた。
バカにされたと思ったろうな。
だが、左斜め前のルートについては喋る気が無いようだ。
さすがに喋らなければバレないと気づいたか。
もしかして、バラしたのは失敗だった?!
「言わないのか? 言わないなら……」
「言わないなら……何だ?」
どうしよう、何も考えて無い。
こういう含みを持たせた言い方をすれば、勝手に怖い想像して喋ると思ったのに!
すると、ここでまたキジマさんのサポート!
「簡単な事ですよ。貴方を喋れなくしてから、縛りつけた状態で左斜め前のルートを歩いてもらうだけです。
逃げられないように、縄の一端はこっちで持ってますから。
もし落とし穴に落ちても引き上げてあげますよ。死んでてもね」
「!!!」
怖いよ! 俺もビビっちゃうじゃないか!!
表情も変えずに淡々と喋るのは、止めて下さい。
横を見ると、カンダさんが縮こまっていた。
そうか、キジマさんとケンカすると、この表情が出てくるんだな?
よし、怒らせないようにしようと、今心に決めた!!
俺も何とか表情を作って、もう一度聞きなおす。
「さて、何があるのか言ってもらおうか。囮にされたくないのならね」
「……罠があるんだよ」
「どんな罠だ?」
「一つは鳴子が設置してあって、アジトに知らせる。
もう一つは殺人蜂の巣に繋がってて、巣を落とす仕組みになってる」
つまりは、侵入者アリと判ると同時に蜂を利用して殺す仕組みか。
自然を利用した良い罠だな。
っていうか、落とし穴とか掘ったら、大森林の逆鱗に触れる可能性があるかもね。
ふむ、その罠、利用出来そうだな。
なんてったって、俺、『技術』で『罠』を持ってるからね!
「詳細は判った。じゃあ早速行こうか」
「一つ教えてくれよ! 行ってどうするんだ?!」
「そこにある物を全て貰っていくさ。盗賊の物は俺の物、ってね」
そう教えてやると、絶望したような顔になった。
いやぁ、実際はもっとヒドいと思うぞ?
馬車はその場に置いていく事にした。
ついでにハズキ君とナグラさんとコタニさんは留守番だ。ココは少数精鋭で行こうと思う。
盗賊は勿論連れて行く。喋れないように猿轡をして縄で縛った状態だ。
クスの木には、小さくヒモが結んであった。これが入り口のクスの木という印だろうね。
まっすぐ進んで行くと、トゲトゲの生えた上にまっすぐ伸びている木があった。これがタラの木か~。
思い出したよ! 新芽を天ぷらにすると美味しいヤツだね!
皆をそこに待たして、俺だけで左斜め前に進む。
注意しながら進むと、確かに足元に判らないようにツタで作った縄が仕掛けてあった。
左右に伸びてるので、右側がアジトに繋がってるんだろう。
って事は左が巣に繋がってるのか。
鳴子が鳴らないように注意をしつつ、持ってたロープで近くの木と繋ぐ。
それからツタの縄を切り、巣に繋がってる方に新たにロープを繋ぐ。
ロープをゆっくりと伸ばしながら、皆の所に戻りそのロープを盗賊に繋ぐ。
これで準備終了。後は盗賊に教えるだけだ。
「さて、今お前は殺人蜂の巣と繋がってる状態だ」
「!! ンーンーンー!!」
「うん、何言ってるか判らないけど、文句言ってるんだろ?
ここでお前が生き残る方法はただ一つ。今から走ってアジトに行くしかない。
飛び込んで、殺人蜂が来ると伝えるんだ。で、アジトに篭れば助かるかもな?
お前の命は、お前の足の速さと仲間の迅速な行動にかかっている」
「ンンーー!! ンンンンーーーッ!!」
何かひたすら抗議してるようだ。
何だよ? 頑張れば助かるようにしてやったじゃん。
仲間を信用してやれよ。
「じゃあ頑張れよ」
そう言って俺は、盗賊をタラの木の左斜め前側から右に押してやった。
盗賊は転ばないように踏ん張ったが、その結果ロープがピンとなりその後ダラリとなった。巣が落ちたんだろうな。
それが判ったのか、盗賊は青白い顔になり、慌ててアジトの方に走っていった。
俺達は少し下がって、マジックボックスからキン○ョールを取り出して待機。
さて、どうなるんだろうね?




