ヒタキさん
「えっと……鍵を閉めて、そのままのつもりでしたけど……」
「それはいけない!」
「えっ?! ダメ何ですか?!」
「はい! このようなお屋敷を長期放置してはいけません! 家が傷む原因にもなります!」
「そ・そうなんですか……知らなかったです……」
「福田様、私に管理させてもらえないでしょうか?」
「えっ? そりゃありがたいですけど……良いんですか?」
「はい。私は元々城で執事をしておりました。年なので引退をしようと考えていた矢先に、殿下の教師に任命されたのです。
殿下が居られないとなると、私はお払い箱でしょう。ならば殿下のお帰りになるこのお屋敷を管理していたいのです」
いや~、多分引退させてもらえないんじゃないかなぁ?
辞めさせたくないから、ハズキ君の教師に任命したんじゃないの?
そのハズキ君が居なくなったからってクビにはならないし、辞めると言っても何かまた仕事を与えられると思う。
だって、見た目だけでも優秀なのが判るもん。
王族の人達は、ヒタキさんを信頼してるんだと思う。
まあ、管理してもらえるのはありがたい。
断る理由も無いしね。
「では、お願いしようかな? 給料はいくらぐらいですか?」
「いえいえ、給料など貰えませんよ! 私が無理にお願いしてるのですから!」
「いやぁ、それだとコッチが困りますよ!」
「いやいや」
「いやいや」
う~ん、平行線だ。
タダって言うんだからいいじゃないかって? いや~タダだと、色々頼みづらいよね。
お互いに遠慮しちゃうと思うんだ。
「……あっそうだ! カジノの町にも家があるんですけど、そっちを管理出来る人を知りませんか?」
「それでしたら執事の組合があるので、そこに頼んで優秀な者を向かわせましょう」
「ありがとうございます。では管理代を払いましょう。
まさか組合に頼んで人を派遣してもらうのに、無料なんて言いませんよね?
給料は組合に払いますので。払う料金が2件分でも不思議じゃないですよね?」
「……参りましたなぁ。判りました、給料を頂く事にします」
「ありがとうございます! いやぁ、実の所どうしようかと思ってたので、助かりますよ!」
「そう言って頂ければ幸いで御座います。
それと……秘密の部屋の事は王様より聞いておりますので、心配なさらぬよう」
……おい、王。『コネクト』の事バラすなよ!
そりゃ管理してくれる人には言わなきゃいけない事だけどさ、お前がバラすなよ!
っていうか、何でバラした? ヒタキさんが管理するって今決めた事だぞ?
もしかして、ヒタキさんが言い出さなかったら、ここの管理をさせる気だったのか?
……そんな考えはあの王には無理だろ?! 誰の差し金だ?! 怪しいのはヌマタ卿か? 今度問い詰めよう。
まぁ、管理してもらう以上は言わなきゃいけない事だからな。
それに今なら俺が居るんで、カジノの町の家に人を派遣するのにも使えるし。
そう思ってヒタキさんに話すと、行ってみる事になった。
そうなると、この屋敷にも『門のシール』を貼らないとね。
この屋敷は3階建て。部屋が12部屋もある。
1階にはリビング・キッチン・風呂などの基本的な部屋。
2階には何故かホールがある。舞踏会でもするのだろうか?
3階は全て寝室になっている。1番奥には大きなウォークインクローゼットがあった。
うん。ここに設置するとしよう。
『門のシール』を貼って準備完了。早速繋げる。
あれっ? カジノの町って何番だったっけ?
メモを見ると、5番だった。
別の紙に書いてココに貼っておこう。絶対覚えれないよ!
現在、こうなっている。
1.所子のタルーンさんの敷地内の物置
2.タルーンさん所有の王都の支店の、額縁の裏
3.『門のシール』と同じ大きさのミスリルの板(移動用)
4.馬車の中の時計の裏
5.カジノの町の自分の家のベッド
6.ウエダさんの家の勝手口
7.ダンジョンの10階の、トムさんのログハウスの2階
8.所子のダンジョンの隠し部屋
9.ニーベル国王の私室
10.王都の家の、3階のウォークインクローゼットの中
移動用をもう一枚作っても良いな。あっ、頼んでたっけ?
武具と一緒に受け取るつもりだったような……。
あっ、武具決めなきゃ。う~ん、忙しい。面倒になってきた。
ご指摘を頂いたので修正しました。
修正:198話
誤「多分タズキ君の荷物と思われるから。」
正「多分ハズキ君の荷物と思われるから。」
2話連続で間違えるとは……。




