誕生秘話
「どうやってここに来た?!」
「えっ? ちゃんと許可は貰ったよ?」
「本当か?」
「本当だよ!!」
どうやら今度は本当らしいな。
でもおかしい! 子供1人でここまで来させないだろ?!
それにどうやって来たか聞いてるのに、『許可は取った』って返事はおかしいし。
「許可貰ったのは判った。どうやってここに来たかを聞いてるんだけどな?」
「どうでもいいじゃないか!」
「そもそも、許可取った当日に出てこれる訳無いと思うんだが?」
「行っても良いって言ったもん!」
「誰が?」
「……」
「言わないと城に連れてくぞ?」
「……ヌマタだよ!」
ヌマタ卿! 何考えてんだ?!
天才は行き過ぎるとバカになるのか?!
それとも何か企みでもあるのか?!
「……城を抜け出したら丁度ヌマタが居て見つかったけど、ココに送ってくれた」
「はぁっ?! 城に抜け道なんかあるのか?!」
「じいが、若い頃ギャンブルする為に作った、って自慢してたよ」
王様よ、貴方はバカなんだね?
ギャンブルの為だけに抜け道作るとは、アホなんですね?
「それでね、見つかる度に新しいのを作ったんだって!
最後にはギャンブルする所が移動した、って悔しそうに言ってたよ!」
なんとアホな理由の『カジノの町』誕生秘話だ……。
そんな事で、王都から離れた場所にギャンブルの町が誕生したのか。
そして、作った抜け道はまだ健在だとは。誰か埋めろ。
何かもう、色々とアホらしくなってきた。
ハズキ君の事は一応知らせるとしても、もう今日から一緒でも良いだろ。
また抜け出したりしたら大変だ。
「はぁ……。判ったよ。今日から一緒で良いよ」
「本当だね! やったー!」
「今から城には伝えに行くけどな」
「えっ?! い・いいよ! その代わり先生以外に伝えてよね!」
先生? あっ、もしかして馬車の所で見た老執事かな?
よし、あの人に伝える事にしよう。
早速俺は手紙を書く。
『ハズキ君は今自分の所に抜け出して来ています。しょうがないので、今日から一緒に行動します。
でも一応は叱ってやってください。ハズキ君の様子からすると先生が最適のようです。お願いします。福田哲司』
こんなもんだろ。
これをカンダさんに馬で持っていってもらう。
俺も馬に乗れるようになりたいなぁ。
トムさんに乗っていくか? いや、乗せてくれないか。その前に大騒動になりそうだ。
2時間後、予定通り、先生と呼ばれている老執事の人がやってきた。
結構な荷物と共にやってきたので、城の方でも諦めたのだろう。
多分ハズキ君の荷物と思われるから。
俺達はリビングで武具のリストを見てたから気づかなかったけど、いつの間にかハズキ君の背後に居たんだ!
この人がハズキ君の先生らしいが、はたして何の先生なのだろうか? 忍者の先生か?!
既にハズキ君は捕まっており、正座をさせられて怒られている最中。
たまに俺を恨みがましい目で見てくるけど、その度に「どこを見てますか?!」と怒られてる。
どんどん説教が延長するので、俺を見るのは止めればいいのに。
30分にも及ぶ説教が終わった後、老執事はこちらにやってきた。
ハズキ君は足が痺れているのか動かないままだ。
「ご迷惑をおかけして申し訳御座いませんでした。私、ハズキ殿下の教師をしております、ヒタキと申します」
「どうも、ご丁寧に。自分は福田哲司です」
「殿下は今後、福田様と行動を共にされると聞きましたが」
「はい、その通りです。少し滞在した後に、魔道の国に行く予定にしています」
「そうですか。失礼かもしれませんが、少々質問させて頂いてもよろしいでしょうか?」
「はい。何なりとどうぞ」
「すみません、どうしても気になりまして……」
ハズキ君の教育についてかな? それとも護衛方法?
大事な殿下だもんな。聞いておきたいだろう。
「旅行のさい、このお屋敷はどうされるのですか?」
えっ? そっち?? 殿下の話は???
ご指摘を頂いたので、修正しました。
修正:197話「ハズキ君」
誤「御者は岸の人がしてくれた。」
正「御者は騎士の人がしてくれた。」




