えげつない解決
俺を無視してトムさんが話を進行していく。
「王よ、このファントムはガーをいう名前の、福田様の従魔で御座います」
「お・おう、そうか……。 して、何ゆえに呼び出したのだ?」
「ガーは非常に匂いに敏感で御座います。ゆ・冒険者を捕縛した際も共に戦いました。
その時に書状を発見したのもガーで御座います」
「ふむふむ、それで?」
「ガーが、この部屋で書状に付いていた匂いがすると申しております」
またもや謁見の間がザワザワしだした。
これには俺もザワザワしちゃうね。聞いてないよ~!
後さ、勇者って言いかけたよね?! 注意してくれよ~!
まあ確かに証拠が無いからなぁ……。
こういう方法が一番効果的かもね。
後は自白をさせるだけって事だ。
「王よ、ガーが部屋の中を歩く事を許可して頂けますか?」
「うむ、許可しよう。当然反対の者はおらぬな?!」
王様が先に釘を刺した。
怖いから反対! とか言えば、じゃあお前が書状を発行したんじゃないか? と疑われるだけだ。
普段は頭が動くのね。ギャンブルさえしなきゃ良い王様なんだろうなぁ……。
オークションもギャンブルな所があるから好きなのかもね。
おっと、変な事を考えてる間に、ガーが貴族の人達の匂いを嗅いで回っていた。
近寄られた人は恐怖で動けないようだ。
武官はともかく、文官の人は怖いだろうなぁ。
ファントムだし、虎だし。
唯一キラキラした目で見てるのはハズキ君だ。
ファントムが珍しいのか、虎が珍しいのか、はたまた両方か。
自分の方に来るのを心待ちにしてるのが判る。
でも、残念な事に、君の所には行かないんだよ。可哀相だから、後で会わせてあげよう。
ちなみに、ハズキ君は一度もトムさんの方を見ない。怖いんだろうなぁ。
そのままガーはぐるりと一周して戻ってきた。
当然アホ貴族も匂いを嗅がれている。
バレなかったと安堵しているね。
だが、それをトムさんは見逃さなかった!
一直線にガーを向かわせたのだ! ガーはアホ貴族を前にグルルルと唸っている。
助かった~と思わせてからの突き落とし!!
正に、ゲスの極……ゲフンゲフン。思わず言う所だったぜ!
「そなたには聞かなければならない事がありそうだな」
「私ではない! これは罠だ!!」
そう叫びながらアホ貴族は騎士に囲まれ連れて行かれた。
これから楽しい尋問タイムに突入するのだろうな……。
「さて、他にこの件について異論のある者は居るか?!」
王様は全員に確認を取ったが、誰も反対する者はいなかった。
トムさんとガーが居る前で、俺に文句を言える者はいないだろう。
って言うか、今反対したら、さっきのアホ貴族の仲間だと思われるだろうしね。
……こうして俺の長い謁見は終わった。
『お受けします』って言うだけで良かったはずなのに、どうしてこうなった?!
2トップは満足そうな顔だけどさ、俺は不満だよ!
もう少し褒美を増やしてもらおうかな……。
あっまだ願いが一つ残ってたよ!
王都を出るまでに、何か考えて言わなくちゃ!!
来た時に通された控え室に戻ると、既にハズキ君が来ていた。
従魔は二人とも既に帰したので、いないと判ると落胆した。
ガーを呼び出すと、嬉しそうに抱きついていったけど、すり抜けて床にダイブする形になった。痛そう!
ファントムだから触れないんだよ……。
可哀相だから、ポチにでも会わせてあげようかな?
でも、来るかなぁ? ナミちゃんの従魔になってそうだ……。
く・悔しくなんかないんだからね!!




