苺の威力
ネモトさんは一旦政務室に戻るそうだ。
そこでリストや何かを作ってくるらしい。
予算のやり繰りもしてくると言っていた。
大変そうだが、頑張って欲しい。
タルーンさんとはここで別れた。先に帰っても良いと言われたので。
店に戻り、武具が貰えるので買うのは待って欲しいと伝える為だ。
揃わなかった物だけを買う事になるので申し訳ないと言うと、品揃えの悪い自分の店が悪いのですと言われた。
何て良い人なんだろう! こういう店は贔屓にしたいよね!
リスト等が来るまでに、王様の私室へ行き『門のシール』を設置する事となった。
そこで紹介したい人物が居るという。誰だろう?
『門のシール』と共にやってきたのは、小学生くらいの男の子。
利発そうな顔をしているが、ちょっと生意気そうだ。
不思議に思っていると、王様から紹介された。
「ワシの孫でハズキじゃ。可愛いだろ??」
「えっ? って事は王子?」
「王太子じゃな。正確には王太孫だが」
あ~、何かそう言うらしいね。最近じゃ前世では皇太子で纏めてるみたいだけどさ。
「こんにちは。ハズキ君。俺は福田哲司って言うんだよ」
「なんだお前は。僕は王の孫だぞ! 敬え!!」
「……なんですか? この生意気なガキは?」
「……スマン。周りの者が甘やかして育ててしまってな」
「いや、貴方もでしょ?」
「初孫は可愛いのだから、仕方が無いだろ?!」
「開き直った!!」
王様は会話をしながら『門のシール』を貼っている。
このガキの相手をしろよ!
「で? シールを運ばせる為だけに、このガキを連れて来たんじゃないでしょ?」
「ガキって言うな! 無礼だぞ!」
「お前こそ、目上の人間に対して無礼だぞ。」
「なにをー!」
「うるさいぞ、苺やるからちょっと黙ってろ」
苺をパックごと渡してやったら、本当に静かになった。
食い意地が張ってるなぁ……。
「で? 答えは? 王様?」
「うむ。福田君はこの後どうする予定なのかね?」
「えっと……貰った武具を皆で装備して、足りない分はタルーンさんの店で購入かな?
それから貰う王都の家に行き、掃除して……」
「そんな細かい予定の話ではない! もっと大まかな予定の話だ!」
「え~、特に決めてないけど、、、あっ、さっきの話にあった『魔道の国』に行くかな?」
「うんうん、そうだろう。そうだと思っていたよ」
「……嫌な予感がするんだけど。……だったら何なの?」
「一緒にハズキを連れて行ってもらいたいと思ってな」
「やっぱり!」
何が楽しくて子守なんかしなきゃいけないのよ。
しかも王族の子だよ? 面倒に決まってる!
「この子はワシの孫だけあって、頭の良い子でな。市勢を勉強したいそうなのだ」
「その言い方だと大して賢そうに聞こえないぞ?」
「うるさい! だが、城に居ては勉強にならん。だから旅に出させようと思ってな」
「城の者と一緒に行けよ」
「城の者は甘やかしてしまうのでダメだ! 関係無い者で、なおかつ信用出来る者が適任だ」
「だからって俺かよ?!」
「そうだ。強いメンバー、頭の回るリーダー、色々な移動方法、イイクラの仲間、甘やかさない、これだけ揃ってる者はいないだろう?」
「そう言われるとそうだけどさぁ、俺にメリットが無いぞ?」
「褒美をやるじゃないか!」
「それは別の件での褒美だろ?!」
「ええぃ、ケチくさいヤツめ! 帰って来るまでに何か褒美を考えるわ! それで良いだろ?!」
「え~~~」
「どうせ行くのだから、良いじゃないか!」
「……判ったよ。どうせ断ってもゴリ押しするんだろ? その代わりに条件がある。
『特別扱いはしない。普通の子供だと思って接する。』事だ。それで良いなら預かろう」
「それで良い。だが、イジメるなよ!!」
「だれが子供をイジメるか!!」
こうして、何故か子供が仲間に加わる事になった……。
やっかいだなぁ。




