三国志?
王様はどこから出してきたのか、2cm角の氷を口に含んでいた。
そうでもしないと辛さが引かないのだろう。哀れだ……。
「で? 俺リーチなんだけど、どうするの?」
「どうするとは?」
「いや、棄権するとか?」
「せぬわ! ここから華麗に大逆転するのだ!」
前向きだなぁ。
これくらい心が強くないと王なんて務まらないのかもしれない。
「で? どんな勝負で大逆転ですか?」
「今考えてるわ! 少々待てぃ! ううむ、どうしたものか……」
俺は運を使わない場合、やはりハーツのようなゲームが一番勝ちにくいと思ってる。
ゲームを熟知し策略を練ってプレイされれば、ルールを知ってるだけではかなり不利になる。
そして他者の要素も加わってくるので、なおさらだ。
そういうゲームを提示してくれば良いと思うのだがな。
ん? 当然教えないよ? さっさと6連勝して終わらせて帰る気でいるから。
だが、そこは腐っても王様、同じような結論に達したようだ。
「良し! 次はトランプで勝負だ! と言っても二人だけで、ではない! 仲間を加えてペアで対決だ!」
「それは良いけど、仲間って?」
「そなたは別室に居るタルーンを仲間とすれば良いだろ? ワシは軍師を仲間とする!」
「何故軍師?!」
「この城で最も頭の回転が速いからだ!」
「いや、そうじゃなくて、軍師なんか居るのか、って事だよ!」
「サイラス国とはよく問題が起きてるからな。そういう職に就く者が必要なのだよ」
軍師なんているんだ!
なんだろう、羽扇を持ってて火計が得意なあの人が浮かんできたよ。
あの人になら負けるかもしれないな。
「あやつは今、軍を率いて訓練をしているはず! 少々待て、今呼んで来る!」
「ちょっ! 任務中じゃないか! 遊びに誘うなよ! おい! 待てって!!」
俺の制止も聞かずに飛び出して行ってしまった……。
開けられた扉の外に居る騎士の1人は、慌てて追いかけて行った。
残った1人は俺を見て「すみません。ご迷惑をかけます……」と言わんばかりの目をしている。
いつも振り回されてるんだろうなぁ……。
俺は騎士の人に労いの意味を込めて、マジックボックスからクッキー詰め合わせを差し入れしといた。
後で皆で食べてください。
しばらくすると、王様はタルーンさんと軍師の人っぽい人を連れて帰ってきた。
「こやつがウチの軍師のヌマタだ。ヌマタよ、こちらが例の事案の福田君だ」
「ヌマタだ。ニーベル国軍を仕切っている。王に代わって謝罪する。すまなかった」
「福田哲司です。いえいえ、ヌマタ卿が謝られる事ではありませんよ」
「おい、おまえら……。今ワシをバカにしたろ?」
「おや、バカにされた事に気づいたのですか? その少しは回る頭で、周囲の迷惑も考えたらどうですかね?」
「やはりいつもこんな感じですか?」
「そうなのですよ。無駄に行動力があるのでね」
「おい! 『やはり』とはなんだ! 確信があるような言い方ではないか!
それにヌマタ! 無駄な行動力とはなんだ!」
「うるさいですね。ここには4人しかいないのですから、大声を出さなくても聞こえますよ。
そんな事だから、『駄王』と呼ばれるのですよ」
「!! 誰だ!! そんな呼び方をしてるのは!!」
「私ですが、何か?」
王様は悔しそうに地団駄を踏んでいる。もう言葉すら出てこないようだ。
それにしてもヌマタ卿、非常に毒舌です。
日頃の苦労のせいでしょうか? どれだけ迷惑をかけられてるのだろう……。
「それで、私をココに呼んだ理由は? ああ、言わなくても判りますよ。
ヘタなくせに好きなギャンブルで勝負を挑み、負けそうだから助力が欲しいのでしょう?」
「何故判る?!」
「いつもの事だからですよ。部屋を見ればトランプが出てるし。
ちょっと考えれば、子供でも判りますよ。負けても反省しない貴方は子供以下かもしれませんね。」
「失礼な!!」
「そうですね、失礼ですね、子供に。子供も比べられては失礼でしょう。
負けると判ってる勝負なんて、子供はしませんからね。
という事は、動物並みでしょうね。いや、危険を察知すら出来ないので動物よりも悪いか……?」
またもや、王様は悔しそうに地団駄を踏んでいる。いい加減床が抜けるのではないだろうか?
話が進まないので、話題を振ってやろう。
「で、王様。何で勝負するのですか?」
「ぐぬぬぬぬぬ……。ん? ああそうだったな。勝負は『ババ抜き』だ!
10回勝負して、最下位の多いペアが負けとなる!!」
……最後に地味なゲームを持ってきたなぁ。




