ヘタ疑惑
思ったけどさ、感じちゃったけどさ、この王様ってギャンブルがヘタじゃない?
言っちゃあ悪いから言わないけどさ、ドヘタだと思う。
相手が俺ってのもあるだろうけど、さっきのなんか負けてもいいやって考えてたくらいだからね?
それでも勝てない。いや、勝機を逃したように見える。
もしかしたら、運なんか使わなくても勝てる相手かもしれない……。
「次の勝負は?」
「ぐぬぬ……。では次の勝負は『騎士は何を言うの?』じゃ!!」
「何それ?」
「今から騎士を呼ぶ。その騎士が最初に言う言葉の最初の文字を当てるのじゃ!
『ば』や『ぱ』は『は』とみなす! だが、これでは50くらいあるので多すぎて当たらないだろう。
そこで『あかさたなはまら』の行から2つ選ぶ事とする! 『や』と『わ』の行は無効じゃ!
ワシは『あ』行と『な』行を選ぶぞ!!」
なるほどね。
多分想定している言葉は、「お呼びでしょうか?」の『お』、など敬語だと思う。
後は、「王様、お呼びですか?」の『お』だろうな。
そして『な』。「何の御用ですか?」の『な』ではないだろうか?
最後に「呼ばれましたか?」の『よ』を潰している。
じゃあ、俺は……。
「俺は『か』行と『は』行にするよ」
「それで良いのだな? では決定だ!」
選んだ理由は、ただ単に両方とも王様の選んだ物の次だから。
だが、選んでから閃いた。
『か』行と『は』行って有利じゃない?
だって濁点も含まれるんでしょ? 『あ』行が5文字なら、『か』行は「かきくけこがぎぐげご」の10文字となる。
『は』行なんて、「はひふへほばびぶべぼぱぴぷぺぽ」で15文字もある!
喋りそうな所を狙うのも手だけど、多い所を押さえるのも作戦だと思うんだけどさ。
やっぱりこの王様、ヘタなんじゃ……。
さて、選択も終わったし、勝負となった。
俺が扉を開けに行き、開けた後は扉に隠れる。
部屋側に開ける扉だったので、隠れるのは容易だった。
さて、何て言うかな?
「勝手に扉が開いた?! バカな!! 福田様がいない?!」
はい。そこまで聞いたらもう良いです。
俺は扉の影から姿を現し、何でもないですよ、と言って騎士を外に出して扉を閉めた。
「最初が『か』行、次が『は』行、最後も『は』行だったね。俺の完全勝利でしょ?」
「ぐぬぬぬぬ……。確かに『か・は・は』だった……。クソッ!!」
「えっと……4連勝な訳だけど、まだ続けるの?」
「続けるに決まっておるわ!!」
え~止めた方が良いと思うけどなぁ。
無謀だと思うよ。
「次は『異世界食べ物ルーレット』だ!」
そう言って、棚から箱を出してきた。
「この中には『大福』なる異世界のお菓子が6個入っている。その内の5個は甘いお菓子だ。
しかし! 残りの1個は激辛になっている! 激辛を食べた方が負けだ!!」
そんな物まで買ってたのかよ!! 前世での定番ゲームじゃないか!!
「そなたは強い。それは認めよう。で、どれを選ぶ?」
なんだ? 突然認めてきたぞ? そして先手をさせてくれるのか?
なんだろう? 意味が判らない。
「じゃあ俺は……右上のかな?」
「そうか。……ここまでワシが負けているので、当然ワシが先手だろう?
では、ワシは右上のを選ぶとしよう。さ、好きなのを選ぶが良い」
何てセコい手を使うんだ……。
俺が引きが強いからって、俺に選ばせてそれを自分が取るとは!
そうまでして勝ちたいか!!
ならば手加減無しだ!! ……激辛なんか食べたくないしね。
俺は『甘い大福が食べたい!』と祈りながら、左下の大福を選んだ。
「では、同時に食べよう!」
ガブリと大福を食べる。
うん、粒餡のようだ。俺は漉し餡よりも粒餡派なんだよね。
いつ買った物かは知らないけど、外の餅は柔らかく中の餡と絡まって非常に美味しい。
日本茶が欲しくなってくるね。
ふと王様を見ると、涙目になって震えていた。
どうやら早速当たりを引いたらしい。
「それが激辛だったようですね?」
「ち・違うわ! あ~甘くて美味しい! 美味過ぎて涙が出てくるわ!」
「そうですか。じゃあ遠慮せずに一気に食べてくださいな」
そう言うと、キッとこちらを睨んできたが、すぐさま視線は手に持っている大福に移った。
そして俺と大福を何度も交互に見た後、我慢出来なくなったようだ。
「……これが激辛です……」
5連勝だ。もう止めようよ。王様が哀れに見えてきた。
貴方がギャンブルがヘタ、いや、苦手なのは判りましたから。
あっ、そうそう、この後大福はスタッフが美味しく食べました。




