ジャック
調子に乗って本日3話目の投稿です。
「ははは、勝っちまったぜ……」
いまだに半分は放心してるウエダさん。
ディーラーも悔しそうだ。
放って置くといつまでも席を立たないので、もう一度脳天チョップをプレゼントした。
復活したので出ようとしたら、またもや偉そうな人から声を掛けられた。
「私、支配人のオザキと申します。この度はおめでとうございました」
「お、俺は不正なんかしてないぜ?!」
「はい、途中から後ろで見ておりましたので。疑っておりませんよ」
「そ、それならいいんだけどよ……」
「全額ベットの見極めが見事でしたが、キング、いや帝王の知り合いでしたか。さすがです、納得しました」
「「はぁ??」」
俺とウエダさんの声がハモった。
俺は呼び名について。帝王って呼ばれてる!! やめて!!
ウエダさんは、多分俺と同等な事だろう。
「いやいやいや、俺は師匠ほど異常じゃねぇから!!」
「……おい。俺を異常だと思ってたのか?」
「い、いや、そんな事は……ピュ~ピュ~」
目線を逸らして口笛を吹き始めやがった!
コイツ、異常だと思ってたな!!
「なるほど、帝王のお弟子さんなのですか。それなら強くて当たり前なのでしょうな」
「えぇぇぇぇ?!」
俺を師匠なんて呼ぶからだ。自業自得。
でも帝王はやめて。
周辺の野次馬も、それを聞いてザワザワし出した。
「おい、帝王の弟子だってよ!」「帝王は弟子を取ってるのか?!」「俺も弟子入りするかな?」
「口笛吹いて余裕そうだぞ?」「支配人も認める強さか……」「トランプだけにキングって呼ぶか?!」
「いやいや、それは前の帝王の名だろ?」「今帝王だからいいんじゃねぇか?」
「いや混乱するだろ?」「じゃあどうするんだよ?」「キングの下だからジャックでどうだ?」
「ブラックジャックで勝ってるし、ってか?!」「いいんじゃねぇか?」「ジャックだな」「ジャックだ」
おめでとう、ウエダさんはジャックと呼ばれるようだよ。
あっ、聞こえてたのか苦悶してるわ。
「…………じゃ……」
「じゃ?」
「……ジャックって呼ぶな~~~~~!!」
叫んで逃げていったよ。
あっ! 待て! 俺を置いて行くな!!
支配人に軽く会釈をして後を追う。
店を出た所に居たので、合流出来た。
「やったな、ジャック!」
「……その名で呼ぶなら、帝王って呼ぶぞ?」
「さぁウエダさん、帰ろうか!」
ウエダさんは馬車置き場へ向かう途中に、アクセサリーの屋台で髪留めを買っていた。
奥さんへの土産だそうだ。幸せそうでいいですねくそリア充め、爆散しろ。
帰りの馬車の中で、今後の相談をする。
「俺、しばらく行かねぇわ……」
「儲かったから?」
「違ーう! 変な呼び方されるからだよ!!」
「あっそう。これで俺の苦しみが分かっただろう?」
「おう……。あれは恥ずかしいわ……。すまなかったな師匠」
「師匠やめろ」
「それは良いとして、これからどうするんだ?」
「流すな! ……そうだなぁ、またダンジョンでも行ってみるかなぁ?」
「ダンジョンに行くなら冒険者登録した方がいいぞ? メシとか宿とか優遇されるし」
「そういえば、ウエダさんの所に泊めてもらってるけど、いいのか?」
「出てくなんて言うなよ? 師匠なんだから問題ねぇさ!」
「師匠やめろ」
「いくら金持ちでもさ、宿に泊まって金を使わなくてもいいだろ?」
「そうか? じゃあ悪いが世話になるかな」
「好きなだけ泊まっていきな! 師匠!」
「師匠やめろ」
それにしても冒険者か。身分証代わりに登録するかな~。
ダンジョンに行くのに、冒険者を雇うのもいいな。HPが増えるまでは安全策で行かないとね。
村に着く頃には夜になるだろうし、明日にでも行ってみるか。
場所が判らないから、またナミちゃんに案内してもらおう。
ダンジョンに行くのは明後日でいいだろ。
俺にはポチと遊ぶという、重大なミッションがあるのだから!!
明日に1話投稿します。




