入場
次の宿場町でも、同じように自宅に帰った。
だって、本当に楽なんだもん。宿場町にある宿よりも豪華だしね。
ゲームで言うと、セーブして翌日に続きを始めてる感じ。
こんな事を繰り返してるうちに、とうとう王都に到着した!
長かったような、近かったような……。
前日にタルーンさんの所に22時に行った所、王様からの書状を渡された。
これがあれば、税金を払わなくても入場出来るらしい。
日中にタルーンさんの店に届けられたそうだ。
それを持って入場待ちの列に並んでると、兵士の人がやってきた。
どうやら事前に並んでる人達の確認をしてるようだ。
レストランとかで席が空く前に注文を取るみたいなものかな? 違うか?
まあ、事前に確認した方が受付はスムーズに行くよね。
列の途中から始めてるので、そこまでは既に終わってるのだろう。
俺達の前の人も終わり、とうとう番が回ってきた。
「事前確認をしている。この度は何の用で王都に来た?」
「えっと……王様に呼ばれまして。詳しい事はこの書状に書いてあると思います」
「何?! ではその書状を出してもらおう!」
書状を兵士の人にそのまま渡す。
蝋で封がしてあったので、開けてないのだ。
何か開けたらいけない気がしてさ。
兵士は蝋の封に押してある家紋のような物を確認していた。
そして開けずに返却してきた。
「福田君というのか?」
「はい、そうですけど?」
「何故開封してないのかね?」
「開けて良いんですか?」
「君宛の書状なんだろ? 君が開けなくてどうする?
そもそも、内容も読まずによくここまで来たね?」
「渡された時に、王都に来て欲しいと言われたので」
「とにかくこれは私が開ける訳にはいかない。開けてみたまえ」
書状の表には「福田様へ」と書いてある。それで名前が判ったのだろう。
開けろと言われたので、蝋の封を切らずに兵士の人が貸してくれたナイフで切って開ける。
ナイフを返すと、読みなさいと言われたので封筒の中を確認する。
中には蝋の封にあった家紋のようなのが印刷されている紙が1枚と、短い内容の手紙が1枚入っていた。
手紙には、
「同封の紙を見せれば出入りは自由だ。タルーンと合流し、城へ来るように」
と書いてあった。しかも王様のサイン入りで。
一応両方とも兵士に渡す。
兵士はそれを確認すると、書状を返して門に戻っていった。
少しすると、他の兵士も連れて戻ってきた!
えっ? 出入り自由って書いてあるのに、逮捕とかされるの?
そんな事は無く、護衛の為だったようで、そのまま並んでいる人を無視して最前列まで連れて来られる。
そのまま馬車の中の検査(チラっと見ただけ)をし、通過を許された。
最後に「タルーンの店まで案内させる」と言い、騎乗して先導。
過剰な接待です……。
はっきり言って、注目を浴びるので、止めて欲しい!
15分ほどそのまま進み、やっとタルーンさんの店に到着。
兵士の人に礼を言うと「任務だから気にするな」と帰って行った。
こうして、何の苦労も無く入場そしてタルーンさんの店までたどり着いてしまった……。
ここまで好待遇をして、この国の王は俺に何を求めるのだろうか?
……ちょっと怖くなってきたぞ?!
そもそも、何の係わりも無いのに、何で名前まで知ってるんだ?
ついでに呼ばれる理由も無いハズ。
タルーンさんの迷惑になるから応じたけど、本来ならお断りする話だよね。
大体、ダンジョンとかに潜ってたら連絡つかないぞ?
あっ、それで思い出した!
前世で慣れてしまってるから気にしてなかったけどさ、この世界って遠い所に居る人にどうやって連絡するの?
電話とか無いでしょ? 魔法の『メール』を使っても双方向じゃないし。
『メール』使いが沢山居れば、電報業務をしてるかもしれないけど料金が高そう。
やっぱり普通に郵便なのかな?
でもそれだと、俺がカジノの町に居たとして片道6日かかる。
「来てください」→「行きます」→「待ってます」、この後出発だとしても18日後だよな。
……早く着きすぎたか? 城には行かずに町で時間つぶしするか?
いや、門の兵士には知られてしまってる。そうなると、来てる事はバレるだろう。
これはタルーンさんと相談して対策を練らないとなぁ……。




