保護します
イイクラさんの話は続いている。
「そしてですね、今回の事なのですが。
サイラス国の王は、誘拐・窃盗・詐欺の罪で逮捕しました」
「誘拐って私の事ですか?!」
「そうですよナグラさん。貴方は誘拐されたのです」
「……そうなんだ……」
「そして貴方を騙してた事で詐欺の罪、騙してダンジョンコアを盗って来させたので窃盗の罪です」
「……私も逮捕されるのでしょうか?」
「貴方も罪にはなりますが、情状酌量はしますよ。
騙されていましたし、福田さんからもお願いされてますからね」
そう言われて、全員が俺を見る。
そりゃ騙されてたとしてもさ、鵜呑みにして何も考えずに実行してたのも事実。
でも2年間も病気してて、今やっと動けるようになったんでしょ? そりゃはっちゃけるって。
悪いのは王なんだから、許してあげても良いと思うじゃん?
「ナグラさんは、本来ならば戻ってもらう予定でした」
それを聞いてナグラさんは青ざめる。
当然だ。戻るってのは三途の川に行くって事だ。=死ぬって事。
その後に天国に行くかもしれないし、生まれ変わるかもしれないけど、今生きてるのに死ぬのは誰でもイヤだろう。
「福田さんの意見もあり、上の者と相談した結果、ナグラさんの今後が決定しました。
この世界で生きて頂きます。
ただし! 今後3年間は福田さんと一緒に居てもらいます!」
「「えっ?!」」
驚いたのはナグラさんと俺。
ナグラさんは許されたから驚いたのだろう。
問題は俺だよ! 何で俺が保護監察官みたいになってんの?!
「3年間?! 俺と? 一緒に?」
「はい。まず、世界の常識を知ってもらう為です。
それに福田さん……」
「な・なんでしょうか?」
「ナグラさんは王からの庇護が無くなった状態ですよ? 一文無しです。現在持ってる武具は没収です。
世界の常識無し・金無し・宿無し・武具無し、こんな状態の同郷の人を見捨てますか?」
ぐぬぬ、そう言われると弱い!
もしかして、コレ込みでの依頼だったのか?!
だから破格の成功報酬なのか?!
「判りました。ナグラさんがイヤじゃなければ受けましょう」
「イヤだなんて、そんな! 今までもお世話になってるのに悪いかなと思うくらいで!」
「そうですか。じゃあ受けますよ。部屋は1階の奥の所を使ってね」
「……ありがとうございます!! お世話になります!!」
ナグラさん、泣き出しちゃったよ……。
まあ、この世界で頑張って生きてもらおうじゃないか。再度死ぬよりはよっぽどいい。
病気も無くなり元気になったんだから。
さて、イイクラさんも居る事だしナグラさんの処分も決まったので、ネタバラシしないとね。
俺はナグラさんに連れてきた経緯を隠さず話した。
ガーの事、コネクトの事、全てだ。
それを聞いたナグラさんは、怒る事も無かった。
それどころか「話を聞かないであろう私の為にしてくれたのですね」なんて言われた。
良い子やのう……。
こうして、新しい仲間が加わった。
「あっ、そうでした。福田様。」
「えっ? 何でしょうか?」
「報酬のリストを渡しておきますので、後で選んで連絡してくださいね」
そう言い残してイイクラさんは帰って行った……。
折角良い感じだったのにさ、報酬の話を今しなくても良かったじゃない?!
報酬がある依頼だったんだ~って目で見られてるよ!!
空気読もうぜ、イイクラさんよ!!
何か、この状態だと、報酬を貰うのが悪いみたいな感じだよ……。
こういう場合は、全員で罪を分け合うのが一番! (って罪じゃないけどさ)
「み・皆で報酬を分けようじゃないか!」
「……報酬って何ですか?」
「聞いて驚け! 何と報酬は『好きな技術』が一つ覚えられる事だ!!」
「「「「えーーーーっ!!!!」」」」
まぁそりゃ驚くよな。
普通、努力して得る物だからさ。
っていうか、何でナグラさんまで驚いてるのさ?




