国際刑事警察機構
それから2日間、ナグラさんは逃げる事も無く我が家で勉強している。
何度も驚いていたから、よほど教えられた事と違ったんだろう。
キジマさんからは料理も教えてもらっていた。
聞けば「同郷だからと泊めてもらい色々教えてもらってるから、恩返しがしたい」そうだ。
健気だなぁ……。
昼過ぎに来客をしらせるベルがなった。
玄関の横にヒモが下がっていて、それを引くと玄関の吹き抜けに付けてあるベルが鳴るのだ。
変な所でレトロな仕組みなんだよな、この家。トイレは水洗なのに。
来客はやはりイイクラさんだった。
「こんな所まで出張とは、ご苦労様です」
「いえいえ、福田さんこそ色々ご助力して頂き助かりました」
「どうぞどうぞ、上がってください」
「お邪魔します」
イイクラさんをリビングに通して、全員を呼ぶ。
キッチンでお茶を入れて持っていくと、全員がリビングに揃った。
いよいよネタバラシだね。
「皆様初めまして。私は、イイクラと申します」
「今回の事は、彼からの依頼だったんだよ」
そう言うと、皆は納得したようだ。いや、1名だけ不思議な顔をしている。当然ナグラさんだ。
「えっと、どういう事でしょうか?」
「それについてはイイクラさんから説明してもらえるよ」
「はい、説明致します。まず、サイラス国の王ですが、逮捕しましたのでご安心ください」
「「「「え~~~っ!!!」」」」
俺以外の人から驚きの声が上がった。
そりゃそうだ、1国の王を2日で逮捕って何?! って思うだろう。
ナグラさんからすれば召喚した王が逮捕だもん。驚くよね。
しかし、三途の川の事を説明せずに、どうやって話す気なのだろうか?
「はい、皆さん。これから話す事は他言無用でお願いしますよ?
福田さんの仲間だから信頼して話すのですからね?」
コクコクコクコク……
皆が水飲み鳥みたいに頷いてる。
王すら逮捕出来る人だもん、不気味だろうなぁ。
「では……まず、キジマさん、この世界には国がいくつあるか知ってますよね?」
「何故私の名前を?! えっと大小合わせて32カ国です」
「その通りです。
昔、それら全ての国の王が集まり会議をしました。
王族や貴族が犯罪をした時、どうやって取り締まるのかを。
貴族が犯罪をした場合、王が処罰しますが、立証するのはかなり難しいです。
王族が犯罪をした場合は? 最高権力者を誰が罰します?
王族や貴族を罰せられる存在を作る。そう決めたのです。
それがICPOです」
ICPO?! インターポールか?! とっつぁんが勤めてる所じゃないか!?
思わず聞いてしまった。
「ICPOって何の略ですか?」
「いい加減、ちゃんとやろうぜ、ポリス集めて、大捕り物、の略です」
大喜利かよっ?!
いや、あいうえお作文か?!
ポリスだけ合ってるじゃん!! ちゃんと替えろよ!! いや、替える必要は無いけどさ!!
「ICPOは、王族や貴族を見張り、犯罪を発見したら即座に逮捕出来る権限を持っています。
どの国だろうと、関係ありません。
元々人の上に立つ存在の人達ですから、犯罪を犯すと非常に重たい罪になります」
「そんな組織があるんですね……」
「そうですよ、カンダさん。そうじゃないと、最高権力者は悪い事し放題じゃないですか。
それを他国が諌めれば、最悪戦争になります。
そうなった場合、ひどい目に合うのは一般市民ですから」
「自国で取り締まれないっスすか?」
「可能であり不可能でもありますね。
例えば、Aという貴族が犯罪をしたとしましょう。それをBという市民が目撃した。
Bは警察に行って訴えました。相手は貴族、警察は動くでしょうか?
国によって違いますが、まず動きませんね。
動く国だとしましょうか。Aはもみ消す為に警察に賄賂を送るかもしれません。
もっとひどい場合はBを殺すかもしれません。唯一の目撃者ですから、いなくなれば問題無し。
この例は貴族でしたが、王族となればどうです?」
「王族が相手なら、市民1人の訴えでは警察は動かないかも……」
「それではダメですよね? その為に我々ICPOがあるのです!!」
「「「「おー!!」」」」
イイクラさんの熱弁に、皆が感動している。
でもそれ、ウソの話だからね?!
あ~! バラしたい!!




