ウソを暴け!
ベッドから飛び降りた勇者は、現在リビングに連れて来られている。
そして無茶苦茶緊張してるのか、萎縮して小さく縮こまっている。
まあ、さっきまでダンジョンに居たのに、突然人の家の中だもんな。
しかも家主は不機嫌(演技)だし。
勇者は覚悟を決めたのか、ゆっくりとだが話し始めた。
「あのう……失礼ですけど、ココはどこでしょうか?」
「は? 勝手に入ってきていて何言ってんの?」
「すみません! さっきまでダンジョンに居たんですけど……気づいたらココに居たんです……」
「本当かなぁ? どこのダンジョンだよ?」
「えっと、ドラゴンのダンジョンって言われてる所です……」
「ここから半日の所のダンジョンじゃないか! そこから気づいたら来てたねぇ……?」
「ほ・本当なんです!! 信じてください!!」
「じゃあ、そこで何やってたんだよ? そんな若い女が居るような場所じゃないけど?」
「ダンジョンから出てくるモンスターを退治してました」
「何言ってんの、この子? ダンジョンからモンスターが出てくる訳無いじゃん!」
「えっ? 出てきて被害を受けてないんですか?!」
「出てこないのに被害受ける訳無いじゃん。子供でも知ってるぜ?」
「ウソ……」
これが俺の作戦。
まずは勇者を悪者に仕立て上げる。今回の場合は不法侵入ね。
そこで弁明させるんだよ。で、それに反論する。
親切ヅラして近寄ってきた人間の話は、ウソっぽいので信用しないだろう。
俺が当然勇者に近づいて「貴方騙されてますよ」なんて言ったって、話を聞いてくれる訳が無い!
だが、追い詰められた状態で、全くの部外者に言われたらどうだ?
現状では誰が見ても、不法侵入者と侵入された家の人が話してるようにしか見えないだろ?
この状態で、王のウソを暴いていくのだ!
「誰から聞いたんだよ、そんなデタラメ。どこのバカだよ?」
「……そ・それは……」
まあ言えないよね。他の国の王様に聞いたなんてさ。
「まあそれはいいわ。そんなに世間知らずなんて、あんたどこ出身なんだよ?」
「えっと……日本です」
「えっ? どこだって?」
「日本です」
「マジで?! 日本人なの?! 俺も日本人だよ!!」
「ええええっ! 本当ですかーーーっ!!」
作戦第二段!
突然同じ異世界人と発表して親近感を持たせる!
知らない世界に1人だったのが、実はもう1人居ましたってなると言う事が信用しやすいよね。
「本当だよ! 俺も日本人。東京出身なんだよ」
「私は千葉出身です!」
「お~、近くだね!」
「東京出身とか、千葉が東京に近いとか知ってるって事は、事実なんですね!」
「何でウソ言う必要があるんだよ! 何なら一杯言ってやるよ!
年号は平成だろ? 2020年にオリンピックが開催されるけど、問題山積み(笑)とか。」
「そうですそうです! 合ってます!! 本当に同じ日本出身なんだ~!」
「それじゃあ世間知らずでもしょうがないかな。俺の方が長いしね」
「じゃあ、この世界に詳しいんですね!」
「おう! 色々知ってるぜ! ダンジョンからモンスターは出てこないとかな!」
「うっ……」
一応釘は刺しておく。
さて、ここまで話して、召喚したのにデタラメを教えてる人と前から住んでる同郷の人、どっちを信じるかな?
「まあ同郷みたいだから、不法侵入は許してやるよ。
で、何でココに居る訳? 詳しく話してもらおうか?」
「はい……。私、この世界に召喚されたんですけど、召喚した理由がモンスターが攻めて来るからだったんです」
「攻めて来てないけどな。で?」
「……それでですね、ダンジョンにダンジョンコアってのがありまして、それを取ってくる事を頼まれました。
ダンジョンコアを持って帰り適切な処置をすると、モンスターが出なくなるからと」
「確かにダンジョンコアを取ると、モンスターはそのダンジョンには発生しなくなる。
持って帰る必要は無い。そこで壊しても一緒だけどな。何か微妙にデタラメが混ざってるなぁ。
まあいいや。で? この国に召喚されたのか?」
「いえ、隣の国です……」
「何でこの国のダンジョンに居るんだよ? 仮にモンスターが攻めてくるとしても、まず自国のダンジョンからだろ?」
「自分の国はまだそこまで脅威じゃない。他の国の方が危ないから助けてやってくれ、と言われました……」
「どの国も脅威なんて思ってないよ! 何度も言うけど、出てこないし!」
「……本当に脅威じゃないんですね?」
「おう。信じられないなら、今からでもこの町で聞き込みして来いよ。
俺達がウソ言ってるって言うなら、この家から出ない。1人で聞いて来な。
あぁ、この町には警察もあるから、そこで聞くのも良いかもな」
「じゃ・じゃあお言葉に甘えて……ちょっと外で聞いて来ます」
「おう。ウソじゃないって判ったらココに帰って来いよ。
帰るにしても今日は無理だろ? 同郷なんだから、泊めてやるよ」
「あ・ありがとうございます。じゃあちょっと行ってきます!」
町の人や警察で真実を聞かされたら、どんな顔で帰って来るのだろうね?




