王の企み
俺はイイクラさんに疑問に思ってる事を聞いた。
「自国のダンジョンじゃないんですね」
「後から判明した事がありまして」
「なんでしょうか?」
「実は勇者は自国のダンジョンには1度も行ってないのです」
「ええっ? 何で??」
「王の言い分は、『自国のダンジョンは自分達でなんとかする。それよりも他国を助けてやってくれ』だそうですよ」
「……本音は?」
「2つあります。1つはダンジョンのルールです」
「ダンジョンのルール?」
「『自国にあるダンジョンのダンジョンコアは自国に売らなければならない』というルールがあるのですよ」
「つまり、ドラゴンのダンジョンのダンジョンコアはこの国に売るのですね?」
「はい、そうなります。しかし、あの王は、ソレを自分の国に持って帰らせています」
うわっ! ルール無視!!
多分、そんなルールは教えて無いのだろうな~。
それどころか、「奪い取ろうと企むヤツがこの国で売れとか言ってくるぞ」とか教えてそうだ。
「その被害はあったんですか?」
「はい、既に2つダンジョンが攻略されています」
「マジですか?!」
「はい。しかも勇者が自発的に持って来た事にしているようですね」
つまり、発覚した場合、罪は全て勇者に被せる気だと……。
なかなか最低なヤツじゃないか!
「2つ目は、攻略されたダンジョンの問題です」
「えっ? 何か問題が?」
「福田さん、この間、ダンジョンでカニを倒してカニパーティーしたそうですね?」
「えっ? あっはい、しましたよ? あっ、呼ばなかったのは連絡方法が無かったからでして……」
「呼べよ! って事ではありませんよ。ダンジョンの決まりの話です」
「ダンジョンの決まり?」
「福田さんは確か、誰かに説明されてると思いますが」
「えっと……どの決まりでしょうか……?」
「ダンジョンコアを取ると、ダンジョンはただの洞窟になるって話ですよ」
「あぁ、確かカンダさんかキジマさんから聞いたと思います」
「つまりそれは、モンスターもいなくなるって事です」
「そうですね。平和になりますね」
「……カニの足はどうやって入手しました?」
「だから、モンスターの何ちゃらクラブってのを倒して……あああああ!!!」
「気づきましたか……」
ダンジョンコアを取る→モンスターがいなくなる→ドロップ品が無くなる
こういう事か!!
「この世界の調味料は、主にダンジョンが産地です」
「知ってます! ~~産って前に買った調味料に書いてありました!」
「他国のダンジョンを潰して、自国のダンジョンは残す。
他国は調味料や素材が入手しにくくなる。そうすると、ダンジョンのあるサイラス国から買うしかない。
貿易で強者になる気なのですよ」
なんという謀略!!
ダンジョンコアを入手し、その上他国は疲弊させる。
罪は全て勇者に被せる……。
王からすれば、成功すれば大儲け、失敗しても損は無い。ル○ンも真っ青な計画だ!
買うのに使った魔力は、国民からこっそりと吸い上げてるからしばらくすればまた貯まるし。
「ヒドい計画ですね……」
「凶悪な計画です……。死んだ場合、即地獄の底辺行きですね」
「……ちなみに地獄の底辺ってどんな所ですか?」
「拷問を受けて死にますが、すぐに蘇生されます。拷問が59分で蘇生に1分。それを休む事無く繰り返します。
今回の場合、最低100年は続くでしょうね」
正に地獄!!
拷問については聞くのは止めよう。死ぬほどの拷問だよ? 聞いただけで痛くなりそうだ。
「王の企みについては理解されましたか?」
「はい! これ以上無いくらい!」
「では、勇者の確保をお願いしますね」
「判りました! 早急に手を打ちます!!」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
こうして、イイクラさんとの通信は終わった。
のんびり「ラーメンだ~」なんて言ってる場合じゃなかった!
一刻も早く勇者を確保しなくちゃ!!




