ウエダさんに報告
最後に重要な事をトムさんに伝えておく。
「勇者の居場所が判ったら知らせてもらう事って出来ますか?」
「そうね。頼んでおくわ。判り次第連絡が行くようにしてもらっとく。それでいい?」
「はい。とりあえず『サイラス国』でしたっけ? そこに向かいますので」
これで準備は万端。
後は帰って、移動の準備だね。
「所で、サイラス国ってどこにあるの? 隣の国ってのは聞いたけど、何処が一番近いの?」
「えっと……前に温泉に行きましたよね? 確かその道をずっと行けば着くハズです」
「前に行った温泉……」
あの、ある意味恐怖の主人が居る所か!
うわ~、行きたくなくなったぞ。
「……他にルートは無いのかな?」
「途中に『ハガタの町』がありましたよね。そこから違う道を行くと『交易の町』と呼ばれている町があります。
そこからなら、サイラス国に行けますよ」
「何で最初にそっちを言わなかったの?」
「温泉街経由の方が入国するには近いです。交易の町経由ではサイラス国の首都に着きます。
首都には用事が無いですよね? それどころか行かない方が良いんじゃないでしょうか?
温泉街経由で入国すると、サイラス国内のダンジョンのある町方向に行けますよ。
ただ、そこに勇者が居るかは不明ですけど」
そういう理由か~。
確かに首都には近づかない方が良いかもしれない。なんせ王様が居る所だからなぁ。
でも、温泉街には近づきたくない……。
どうしよう? 任務達成は早い方が良いだろうけど、俺の精神も大事。
よし! 交易の町経由ルートにしよう!
もしかしたら、勇者が首都に戻ってきてるかもしれないしね!
「悩んだ結果、交易の町経由で行こうと決めました」
「それなら一つ提案が」
「ん? 何?」
「出来たらで良いですが、交易の町にも『門のシール』を設置してはどうでしょう?」
「そりゃ有ったら便利だけど、どうして?」
「一瞬で移動出来るから問題です。サイラス国の首都に居た人間が、次の日にカジノの町に居るのはマズいです。
それならまだ隣の町である交易の町の方が良いです。夜通し移動したと言い訳が出来ます」
「確かに。『コネクト』が使えない人の1日での最高移動距離に設置した方が誤魔化せるね。
問題は貼る場所だけど。まぁ、それは行ってみないと探しようが無いよね?
じゃあ、それも念頭に置いて行動しよう」
詳細も決まったので帰る事にした。
トムさんのログハウスとウエダさんの家を『コネクト』で繋ぐ。
うん、確かに便利だ。そしてダンジョンから出てこない俺達って、確かに怪しいよね……。
これから人攫いに使う訳だし、少し自重が必要かも?
おっと人攫いじゃなかった、保護ですよ保護。
ウエダさんの家に帰り、早速サイラス国に行く事をウエダさんに報告する。
「慌しいなぁ、おい」
「しょうがないよ、急遽入った依頼だし」
ウエダさんには、ギルドで依頼を受けた事にしといた。
ウエダさんが言いふらすとは思ってないが、秘密を知る人は少ない方が良い。
どうせ話せない事も多々あるしね。
それにギルド経由では無いけど、依頼っていうのは本当だし。
昔誰かが言ってた。
『ウソをつく時には事実を混ぜるのが一番良い』と。
その方がバレないそうだ。
まぁ、犯罪をする訳では無いのだけど……。
「それにしても、困ったなぁ。まぁしょうがねぇか」
「えっ? 何かあった?」
「いやいや、大した事じゃねぇよ」
「何だよ? そこまで言われると気になるじゃないか?」
「いや、本当に大した事じゃねぇんだ」
「じゃあ言えば良いじゃないか?」
「そうかい? 言えば怒るかもと思ってな」
「俺とウエダさんの仲じゃないか」
「そうだな」
「そうだよ」
何を今更遠慮する事があるのか。
なんなら依頼を後回しにしても良いと思ってるよ?
「お前達がまた出かけるとなるとさ……」
「うん」
「なかなかギャンブルしに行きにくいなと思ってさ」
……もう離婚してしまえ。このダメ人間が!!




