作戦会議
「一つだけ確認させてください」
「どうぞ?」
「その勇者は本当に騙されているのですか?」
キジマさん、そこを聞きますか。
イイクラさんが言ってるし閻魔様も関わってるので間違いなのだが。
それをどうやって説明しよう?
「それに関しては間違いないよ。う~ん、どうやって説明しようか……。
えっと、カジノの町に警察があるよね。あれはカジノの町を見張り守ってる。
実はあれを巨大にした組織があるんだ。それはこの世界を見張り守ってるんだよ。
そこからの情報なので信憑性はかなり高い。って言うか正確。そこからの依頼なんだよ」
「……そうですか」
納得してもらえたかな?
「判りました。私は行きます。カンダはどうする?」
「福田さんが行くなら行くさ。行かない理由が無い」
「私も行くっス! 助けてあげたいっス!」
「皆……ありがとう」
何て良い人達なんだ! 涙が出そうだぜ!
「じゃあ、一緒に貰った書類を読もうか。色々な情報が書いてあるはずだよ」
書類によると、問題の王が居る国は「サイラス国」と言うらしい。
この国の隣の国だとキジマさんに教えてもらった。
勇者の名前はナグラリョウコさん。享年17歳って書いてある……。
バレるだろ! 書き方は考えようぜ!!
「技術を15個所有しており、現在レベル52」って書いてある!
ヤベえ、俺より強ぇ! というよりも俺のパーティーの誰よりも強い!
戦闘になるならトムさんの協力が必要だな。
そしてもっとヤバい事が備考に書いてあった。
~備考~
ダンジョンコアを集める事で、国を攻めてくるモンスターの進行を阻止出来ると騙されている。
15歳の時から病気でずっと病院に居た為、外の世界が楽しくてしょうがない。
おいおい、なかなか重たい設定を背負ってるじゃないか!
こんな人、説得できるのかなぁ……。
「モンスターはダンジョンから出てこないハズですよね?」
「そうですよ。出てくるなんて聞いた事も無いですよ」
「トムさん、そこの所はどうなの?」
「正確には『テリトリー』と言うべきね。ダンジョンが多いからダンジョンと言ってるだけなの。
ダンジョンマスターがテリトリーをダンジョンではなく地上で展開すれば、地上にもモンスターは出る。
ただ、範囲は限られているので、そこから出る事は無いわ。
この辺りだと『ミノタウルス山』が有名ね。そこは山の頂上にダンジョンコアがあるわ。
でもテリトリーは山なので、山の裾野からモンスターは出る事が出来ないの。
ちなみに名前の通り、ボスはミノタウルスよ」
へ~、そうなんだ。勉強になるなぁ。
って、いやいや、そうじゃない! やっぱりモンスターが出てくる事は無いって事が重要。
やはり騙している事に、間違いないね。
「やっぱり騙されてるね。さて、この人をどうやって確保する?」
「普通に会って話をしたら良いと思うっス!」
まずはコタニさんから提案が出た。
「多分だけど話を聞いてくれないと思うなぁ。
それに聞いてもらえたとして、王様に確認するってなったら問題だし」
「どういう事ッスか?」
「まず、病気で動けなかった時に彼女は本を読んだりして勇者に憧れてたんだ。
それが動けるようになり、勇者になった。こんな勇者に『勇者を止めてください』って言って勇者を辞めさせられる?
それに誘拐して騙してる王様に接触されるのはマズい。
アッチの方が勇者の信用を得ているんだ。また騙されるよ」
「……面倒っスね」
そう、面倒なのだ!
自ら進んで勇者をしてる事が問題だし、面倒な部分だ。
「とりあえず攫うってのはどうでしょう?」
「あのね、カンダさん。君よりレベルの上の人間を簡単に攫えるの?
全員でかかれば確保出来るとは思うけど、アッチも被害者なんだからケガをさせたくない」
これがまた面倒な部分。レベルが高いし技術を持ってるのだ。
「では、ケガをさせないように攫って、その後に話し合いをする。
これが取るべき手ですね?」
「そうなんだよ、キジマさん。そのミッション、可能だと思う?」
キジマさんはしばし考えた後、驚きの発言をした!
「私は可能だと思ってます」




