質問タイム
『閻魔様の加護』?!
それはいったいどんな『属性』が付与されるのか想像も出来ない。
ただ、もったいぶって言うほどだ。とてつもない物だという事は想像出来る。
内容を聞こうかと思ったが、イイクラさんから注意事項を言われた。
「注意して欲しい点が2つあります」
「なんでしょうか?」
「1つ目は王にはバレないようにしてもらいたいのです」
「それは何故?」
「勇者を確保した後に逮捕する為です。
確保せずに逮捕しようとした場合、最悪勇者を人質に取る可能性がありますので」
「なるほど。それは確かに重要ですね。気をつけます」
「2つ目は、福田さんと同じ三途の川出身ですので、運が通用しない可能性があります」
「あっ! アサイさんに効かなかったようにですね!」
「そうです。勇者より運は高いですが、運の操作は効かないかもしれません」
「それは重要ですね……。ちょっと作戦を考えますよ」
「そうしてください。では、何か質問はありますか?」
聞いておきたい事か……。
『閻魔様の加護』は気になるが、成功報酬という事なので貰える時に聞ければいいや。
「いつから取り掛かれば良いですか?」
「出来れば明日からでもお願いします」
「そ・そうですか……。判りました。えっと、後は、あぁ、勇者の詳細をお願いします」
「それについては書類をお渡しします。写真も付いてるので見つけれると思いますよ」
「了解しました。後ですね、仲間は連れて行っても大丈夫ですか?」
「問題ありませんよ。ただ、三途の川等の情報は漏洩しないようにお願いします」
「はい、人助けって事にしておきますよ」
「お願いします。他には何か?」
他に何か聞いておく事ってあったかな?
ああ、そうだ! 肝心な事を聞いておかなきゃ!
「あの~、このダンジョンなんですが、何故10階の情報が無いんですか?」
「えっ? ああその事ですか。
まずこのダンジョンにはダンジョンコアがありません。取って帰る事は無理なのです。
それにダンジョンのボスですが、トムさんなのでまず勝てないでしょう。
訪れた冒険者は、まず扉で苦労します。
入れたとしてもボスはトムさん。まあ負けますよね。
その後、お説教とダンジョンコアが無い説明をされます。
最後に『登録』をされます。『登録』されると他人に10階の事が喋れなくなります。
正確には声が出なくなります。その時だけでなく、2日間は声が出ません。
紙に書く等の手段で教えようとすると、触覚と視力が無くなります。これも2日間。
伝える事が許されるのは『このダンジョンは10階まで』という事だけです」
えっ?! それって『登録』じゃなくて『呪い』じゃないの?!
しかも凄く怖い!!
「ただし、1度も秘密を漏らすような行為をしなかった場合は、三途の川に来た時に幸運ポイントが1貰えますよ」
うわっ、凄く僅かな特典だ。
死ぬまで判らないじゃないか!
「あの~、今、仲間と来てるんですけど……仲間も『登録』するんですか?」
「福田さんのお仲間の方には登録はしませんよ!
今頃トムさんが、作り話をしてると思いますよ?」
「つ・作り話ですか?」
「はい。ここのダンジョンマスターは私イイクラで、福田さんとは実は旧知の仲だと。
実はその情報を知ったので、事実か確認をしに来たという事にしてます。
話を合わせてくださいね」
「は・はあ……判りました」
結構めちゃくちゃな話だと思うけどなぁ。
まあ旧知なのはウソじゃないので、何とかなるかも?
いや、無理だろ……。
「それでは福田さん、これをお持ちください」
そう言って渡されたのは、勇者の詳細が書かれた書類と『門のシール』だった。
「無理なお願いですが、よろしくお願いします」
イイクラさんは頭を下げた。
出来た人だなぁ。なのに何でアサイさんが部下なんだろ?
スーツの男性が来たので、エレベーターまで行く事に。
エレベーターに乗り込み、扉が閉まる前にイイクラさんが、
「そうそう福田さん、アサイに伝えてください。『閻魔様から電話が来るぞ』と」
そう言ってにこやかに笑った……。
アサイさん、さようなら。短い付き合いだったね。




