懐かしい顔
スーツの男性に付いていく事3分。
ログハウスの物置小屋のような場所に着いた。
そこの扉を開けて入っていくスーツ。
えっ、こんな狭い所で誰かと会うの?
そう思ったが、中に入ってビックリ!
そこにはエレベーターの扉があった……。
▽を押すと扉がすぐに開き、それに乗り込む。
乗ると扉が閉まり、下に降りていく。
エレベーターには何階で止まるというボタンが無く、さっきの階と下の階しか無いようだ。
扉の上には現在位置が判るランプが点灯している。
ランプは5つあるので、地下5階より下に行くというのが判った。
それにしても怖い。
何が怖いって、ここまで一切会話が無い事だ!
このスーツの男性、表情が一切変わらない。ずっと無表情なのだ!
迎えに来た時の声を聞いてなければ、人形なんじゃないかと思ってしまう。
恐怖に震えていると、エレベーターは目的の階に到着した。
チンという音と共に扉が開くと、そこには懐かしい顔があった!
「お久しぶりです、福田さん」
「貴方は! イイクラさんじゃないですか!! どうしてココに?!」
「それにはちょっと訳がありまして。まあまあ、とりあえずコチラにどうぞ」
そう言われて案内されたのは、談話室のような部屋だった。
テーブルを挟み向かい合わせのソファに二人共座る。
「それにしてもお久しぶりですねぇ」
「こちらこそ! あっ、そういえば『加護』ありがとうございました!」
「いえいえ、私としても久々に楽しかったのですよ。仕事なのに仕事じゃ無い、みたいな(笑)」
「『運力』のお陰で、色々と助かってますよ!」
「そう言ってもらえると嬉しいですね。
私としても、折角強運を持って異世界に行かれたのに、うまく使えずにすぐに死んで再会では悲しいですから」
「なるべく死ぬような事は避けてますよ」
「強運があり、『運力』があれば、滅多に死ぬような事にはならないと思いますよ。
これからも活躍してください」
なんて良い人なんだ!
どこかの誰かとは大違いだ!
あっ、それで思い出した……。
「そういえばアサイさんですけど、今回は有給らしいですけど……?」
「ああ、そうですね。オークションの為に行かせました」
「そのオークションの話なんですが、サボる気マンマンでしたよ?
実際、開始時にはベッドで寝てましたし」
ビキッという音がした。
音の原因であるイイクラさんを見ると、笑顔だが頬が引きつっている。
こめかみにはマンガのように血管が浮き出ている。
これは……相当にお怒りのようだ。
「……そうですか。……では後で電話してみましょう。
……ここにも同伴してないですし、今頃何をしてるのかな? ハハハハ」
おぅ……こりゃヤバいな。
アサイさん、クビにならなきゃいいけどね……。
怖いので、話題を変えよう。
「そ・そういえば、ここは何なのですか?」
「ここですか? ここはこの世界の死者を集めて三途の川へ送る場所なのですよ」
「そんなものがあるんですか?!」
「福田さんの居た『地球』にもありますよ? 確か日本では『恐山』にあるはずです」
「世界中にあるのですか?!」
「いえ、人口で違いますね。地球は人口が多いので60箇所くらいありますが」
「大体1億で1箇所なんですね」
「そうですね、そんな感じです。ただ人間だけでは無いので」
「あっそうなんだ」
「ええ。知能のある動物なら、必ずこの施設に来ます」
こんな仕組みになってるとは知らなかったなぁ……。
臨死体験とかした人は、ここの風景を見てるのか。
「何で集めてから送るのですか?」
「この『スフィア』には蘇生魔法はありませんが、ゴーストやスケルトンは居ますよね。
あれはここから連れ出された者なのですよ」
「!! 誰が連れ出すのですか?!」
「スフィアの場合はダンジョンマスターですね。これは決まりなので問題ありませんよ?」
「……そうなんですか。地球の場合は?」
「心臓麻痺等で一瞬死んだ場合とかの為ですね。
三途の川に行ってしまうと帰って来られませんので、中継地点が必要なのですよ。
ちなみに地球で言う霊とかはいませんよ。あれは妄想です(笑)」
霊とかいないのか。三途の川を管理してる人が言うんだから真実なんだろう。
「色々勉強になりました。
それでですね……何でイイクラさんはココに?」
「……実は福田さんに協力してもらいたい事案がありまして……」
えっ? 何事??




