出店
俺はウエダさんに、旅行の事を掻い摘んで話していた。
「へ~、なかなか大変だったんだなぁ」
「まぁねぇ。でも結果的には良い事になったけどね」
「で、その『門のシール』とやらをウチにも貼るんだろ?」
そう、ウエダさんには『門のシール』の事も話したのだ!
なんだかんだで一番付き合いが長い。ウエダさんを信用しない理由が無い。
悩む事無く、『コネクト』の事も『メール』の事も話した。
「ああ。どこに貼ったら良いかな?」
「そうだなぁ……。裏の勝手口の所が良いかもな。あそこなら来てもすぐに外に出られる」
「じゃあそうさせてもらうよ」
ウエダさんと一緒に『門のシール』を貼った。
すると、ウエダさんがニヤリと笑った。
「さて、シールを貼ってココを使う事への交換条件だが……」
「はぁっ? 聞いてないぞ?」
「そりゃそうだ。今初めて言ったからな」
「……何を要求する気だ? カジノの町に連れてけってか?」
「そんな事は言わねぇよ。ちょっと頼み事だよ」
「何だよ?」
「2日後にこの村の祭りがあるんだよ。いつもは普通に店を開けてるんだが、イマイチ盛り上がらねぇ。
そこで、師匠にも何か出店をしてもらおうと思ってな。場所はウチの店の前だ。
頑張って集客出来る企画を考えてくれよ」
「マジかよ……」
さて引き受けた(強引だが)からにはやるしかない。
問題は何をするかだ。俺の出店ばかりに客が来ても意味が無い。
そのままウエダさんの店に誘導出来るようなモノじゃないとダメなのだ。
あれっ? そう考えると意外に難しいぞ?!
前世で祭りの出店と言えば、思い出すのは、
たこ焼き・イカ焼き・たい焼き・焼きそば・天津甘栗・綿菓子・大判焼き・でこまん・カキ氷・等々……
って食べ物屋ばかりじゃないか!!
俺、祭りに行ったら、食い物屋にしか行ってなかったんだなぁ……。
食い物屋をしても良いけどさ、ウエダさんの店に誘導する方法が思いつかない。
それ以前に作れるのか? 材料は? たこ焼き・たい焼き・でこまん・大判焼きなら鉄板はどうする?
うん、無理だ。さっき上げた中で出来そうなのはイカ焼きくらいだが、タレが無いし。
天津甘栗なんか作り方すら知らないから無理。
焼きそばも可能かもしれないが、ソースが無い。ソースってどうやって作ってるの?
塩焼きそばって聞いた事あるけど、塩をかけるだけって訳じゃないでしょ?
綿菓子はあの遠心分離機みたいなのが必要でしょ?
カキ氷は、氷は魔法で作るとしても削る機械が必要。
おぉ!見事に全滅だ!!
他に祭りで見た事ある出店……。
待てよ? 祭りに拘らなくてもいいんじゃないか?!
そう! コンセプトは駄菓子屋だ!!
はい、祭りの当日です。
頑張って何とか屋台を作りましたよ。
カンキジコンビやコタニさんも手伝ってくれてます。
アサイさん? そんな人居た? 手伝わずに祭りを堪能しに行ったダメ人間なら知ってますけど(怒)
出店は何にしたかって?
それは「くじ引き屋」です!
祭りでもあるでしょ? どこに繋がってるか判らないヒモを引っ張るヤツ。アレです。
これのどこがウエダさんの店に誘導する事が出来るかって?
それは、クジの景品に秘密がある!
まず、このクジは1回500円だ。
それでヒモを1本引いてもらう。
そのヒモは必ず何か景品と繋がっている。
1等=鋼の盾 2等=熊肉×10 3等=食堂(ギルドの横)の食事券2000円分×10
4等=おもちゃ×20(カジノの町で300円で買ってきた)
ハズレ=ウエダさんの店の買い物券200円分
このハズレに意味があるのだ!
当然大半はハズレだ。だが500円で200円の買い物券は貰える。
500円払って200円の買い物券を買ったようなものだ。
これを捨てる人間はそうそう居ないだろう。
そうすると自動的にウエダさんの店に行く事になる。
だが、ウエダさんの店で200円の物なんてあまり無い。
有るのは有るが、そんなに欲しい物じゃない。
欲しいな~って思うような物は1000円からなのだ。
しょうがないので1000円の物を見るだろう。
そうすると、不思議なモノで、買い物券が2割引の様に見えるのだ!
そして買ってしまうのである!
ウチとしても300円は儲かるので、問題は無い。
3等は7回ハズレが出れば元が取れる。4等はプラスマイナス0だし。
1等は偶然手に入れた物で、マジックボックスで死蔵してたモノだから惜しくは無い。
2等は追加で取りに行ってきた。
コンセプトの駄菓子屋の意味?
駄菓子屋って何かのゲームして当たりが出ると、店で使える20円券とか貰えるじゃん?
それを考えたんですよ。
さて、どれだけ人が来るかな?




