運搬外の仕事
慌ててサガワさんがこちらにやってきた。
「何で同乗する事にしたのですか?」
「俺は御者なんて数えるほどしかやった事がないので、そこはサガワさんにお任せしようかなと」
「それなら確かに私の方が上手いかもしれませんが、それでも遅いですよ?」
「かまいませんよ。これは負けても良い勝負だと思ってください。
必ず他の勝負で挽回しますから。それに勝負を捨てた訳ではありませんので」
「何か策があるのですか?」
「はい。ルールの穴を突きます。タイムが非常に遅く無ければ勝てるかもしれませんよ?」
「福田様がそう言われるのでしたら、信じて最善を尽くします」
「よろしくお願いします」
カジノの町の外周は長い。例えば東門から北門まで約4kmはある。1周は15kmくらいだそうだ。
時速40kmで走った場合は23分かかるので、30分くらいじゃないかなと思う。
ケンモチさんは35分21秒で帰ってきた。
水瓶は口の大きいタイプで、満タンで50L入る。合計で150Lだ。
1つの水瓶から3分の1は減っていたらしく、合計したら48L減っていたようだ。
と言う事は480秒=8分なので、タイムは43分31秒となった。
数式はテラオさんが解いたのだが、2分かかっていた。
さて、我々のスタートの番となった。
御者はサガワさんに任せて、自分は水瓶の近くに座る。
だが、別に服を濡らしてその水を絞って戻すとかするつもりは無い。
ただ単にそこしか座る所が無かったのだ。
御者の席の隣には監視役の人が座っているからだ。
笛の音が聞こえたので、スタートのようだ。
サガワさんは勢いよく馬を走らせる。
だが、やはりケンモチさんと比べると遅い。
いくら馬が良くても、人が1人増えた分重いのはどうしようもない。
そこは頑張ってもらうしかない。
道中は特に問題無く進んだ。
こぼれた水が俺にかかったけど……。
最後の門である東門を今通過し、割札が全て揃った。
今の内に計算をしておこう。
内容はこれだ。
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リンゴを30円で仕入れ、100円で売りました。
仕入れた数は300個でしたが、200個余りました。
売り切る為に2割引して販売し、夜には売り切れました。
利益はいくらだったでしょう?
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100-30=70 これは定価で1個売れた時の儲け。
300-200=100 これが定価で売れた数。
100×70=7000円 これが定価での儲け。
100円の2割引なので80円。80-30=50 これが割り引いた時の1個の儲け。
50×200=10000 これが割引時の儲け。
数学じゃなくて算数だ!
後はタイムの縮め方。
サガワさんにはゴール前で止まってもらう。
ここで必殺の、水を生み出す魔法『ウォーター』を使う!
これで減った水を満タンに戻した。
水瓶に蓋をする事、水を他に保管する事、水瓶を動かす事、馬車以外から水を持ってくる事、は禁止だったが、魔法は禁止じゃない!
まあダメと言われてもしょうがないと思ってるけど。
この状態でこぼさないようにゆっくりとゴールしてもらった。
タイムは……45分18秒。
やはり負けたか……。
ま、勝つのは無理だろうと最初から判っていたのでしょうがないね。
計算問題は10秒で解いた。
計算タイムを足すなら、ケンモチペアは45分31秒、俺は45分28秒で勝ってた。
同タイムの場合のみ有効だったので意味無いけどね。
ちなみに、今回は運に頼らなかった。
この次の勝負は「目利き」なので、運が必要だから減らすのは危険だと思ったから。
計算の答え? 7000円+10000円=17000円。17000円の利益でした。




