運搬
次の勝負は「運搬」だ。
これは、満タンに水の入った水瓶3つを、蓋をせずに馬車に乗せてカジノの町を1周。
タイムと残った水の量で勝敗を決める。馬・馬車の性能と、馬の操作が決め手になる勝負。
この勝負は不利。はっきり言ってしまえば負ける。
何故なら、御者なんてこの間ちょっとだけやっただけだから。
この勝負だけカンダさんに頼めれば勝てる可能性はあるけど、ルール上それは無理。
そうなると、この勝負限定のルール次第になる。
魔法が使用可能なら勝てる可能性はある。
『アイテムボックス』を使えば、水をこぼさずに運べるからだ。
ソノダさんのルール説明をしっかり聞いておかなくては。
「次の勝負は『運搬』だ。
使用する馬と馬車はあそこに用意してある。水瓶は既に馬車に固定済みだ。
今から双方の前で水を満タンにする。
ルールは、ここ北門をスタートして外周を周り、各門の前に用意している割札を取って帰ってくる事。
ゴールまでのタイムと、ゴール後の水の量で勝敗を決める。
重さがが1kg減っているごとにタイムを10秒足す。
例えば、タイムが10分でも水が20kg減っていれば200秒追加で13分20秒となる。
水瓶に蓋をする事、水を他に保管する事、水瓶を動かす事、馬車以外から水を持ってくる事、は禁止だ。
馬車の中の水を戻す事は許可する。戻すならゴールする前に行う事。ゴール後は無効だ。
馬車に物を持ち込む事も禁止。今の格好で乗ってもらう。
現在ポケットの中に入っている物は持っていっても良い。
万が一だが、アイテムボックスやマジックボックスが使えるなら、その中の物は無効とする。
馬車には俺の部下が監視の為に同行するが、一切手出しはしない。
割札はこれから渡す。4枚揃うと1つの板になる。これが無ければ負けとなる。
質問は?」
重要な事を聞いておこう。
「これはレースですか?」
「いや、レースでは危険なので1台づつやってもらう。
それでも危険な事には変わりは無い。一般の者に危害を加えたら負けとする。
迷惑をかけた場合はペナルティとして+60秒を与える。
そのジャッジは同行者がする。良いか?」
「判りました。もう一つ、最終タイムが同じだった場合は?」
「実は割札には数式が書いてある。商売人なら必要な数式だ。
ゴール後にその数式に入れる数字を教えるので、解いてもらう。
答えを出すまでのタイムを計らせてもらう。それをゴールタイムに加算する。
問題を解くのは代行者である必要は無い。本人達に解いてもらっても良いが第3者は禁止だ」
う~ん、少しは光明が見えたかな?
水の問題はクリア出来るだろう。
数式も前世の数学ほど難しくは無いだろう。
しかし、やはり御者という最大の難関がある……。
これをクリアする提案をしなければ!
「すみません! ちょっといいですか?」
「何かね?」
「サガワさんに御者をしてもらうってのはダメですかね?」
「本人が乗るか代行者が乗るかは、そちらで自由に決められる」
「いえ、二人とも乗るというのはダメですか?」
「ふむ……良いだろう。だが、重たくなって不利になるぞ? それでも良ければ乗るが良い」
「ありがとうございます」
「そちらも異議は無いかね?」
そう聞かれて、ケンモチさんはテラオさんに聞きに行った。
「こちらも問題無いです」
「ではそのようにしよう。弓ではサガワが勝ったので、先攻はテラオ側とする。
先攻は馬車を選ぶ権利、後攻は馬を選ぶ権利がある。
準備が出来次第スタートする」
ケンモチさんは馬車を選びに行ったので、俺は馬を選ぶ。
と言っても、良い馬なんか判らないのでココも運任せだ。
『早くて従順な馬がいいな~』と考えながら馬に近づくと、2頭の内の左側の1頭と目が合った。
うん、こいつでいいや。
「俺は左の馬にします」
ケンモチさんは右の馬車を選んだので、入れ替える事無く準備は終わった。
「よし。それではスタート!」
ソノダさんが笛を吹くのと同時にケンモチさんはスタートしていった。
俺は今の内にサガワさんと打ち合わせしなきゃ!




