事件です
入り口でもめていると、皆が何事かと部屋から出てきた。
全員アサイさんの顔を見てビックリしてるようだ。
そりゃそうだろう。3日前に別れたばかりなんだから。
だが皆は歓迎のようで、結局入れる事になった。
「……何しに来たんだよ?」
「福田君に渡す物があってさ」
そう言って取り出したのはタブレットだった。
皆は初めて見る物だから不思議がってる。知らなきゃガラスが貼ってある板にしか見えないもんね。
「オークションに参加したいって言ってましたよね? これが参加資格です」
「これで参加するのか?」
「そうです。開催日時も表示されるので、確認してくださいね」
「判った。ありがとう。ご苦労さん。お疲れ様でした。お帰りはアチラです」
「何帰らせようとしてるのよ! 最初のオークションまでは居るわよ!!」
「え~~~~~。 その時にまた来れば良いじゃないか~~~」
「行ったり来たり、面倒じゃない! 今回はちゃんとお金を持って来たから大丈夫よ!!」
何が大丈夫なのか。
迷惑をかけられる以外に拒否る理由は無いのだが。
アサイさんが来た事により、皆でリビングでお茶する事になった。
俺は忘れない内に、コタニさんを連れてリビングにある金庫に向かう。
この金庫、お金を仕舞ったりするモノではない。
各部屋のスペアキーと、全ての部屋の鍵が開けれるマスターキーが入っているのだ。
開けるには、何処のでも良いのだが2部屋の鍵が必要。
このフロアはスイートルームのみで全ての部屋を使ってよいのだが、ちゃんと各部屋には鍵があるのだ。
その鍵は最初に受付へ行った時に人数分の鍵を渡される。
アサイさんはどうやったか知らないが、受付を通らずにこのフロアに来ている。
受付してれば先に連絡があるか、ツバキさんが一緒に来るだろうから。
って事で、アサイさんが寝る部屋の鍵が無いのでスペアキーで代用するつもりだ。
受付に行っても良いが、説明が面倒だ。どうやってセキュリティを掻い潜ったか聞かれるだろうし。
どうなってるのか、1人で鍵を2つ持ってても開かない仕組みの金庫。
俺とコタニさんの二人で金庫を開けて、使ってない部屋の鍵を出しアサイさんに渡す。
やっぱ居るだけで迷惑だよな、アサイさん。
ジーッと見てて気づいたのだが、手にはいつの間にか酒瓶が!
「いつの間に酒?!」
「いや、そこのバーカウンターにあったから」
「そういうのは料金に含まれるんだよ!」
「何言ってるの? どうせ無料で泊まってるでしょ? 飲まなきゃ損よ?」
「俺の良心が痛むんだよ!」
「気にしない、気にしない」
そう言いながら、いつの間にか用意されてた全員分のコップに酒を注いで行く。
「じゃあ乾杯!」
結局、酒盛りする事になった。
封を切ったから飲まなきゃお酒がもったいないじゃない?という言い分に負けて。
流される俺も問題かもしれない……。
翌朝、ドアを叩く音で目が覚めた。
俺はいつの間にか、自分の部屋で寝てたらしい。
うん、途中から記憶が無い。飲みすぎたかな?
ドアを開けると、そこにはコタニさんが居た。
聞くと10時になったので皆を起こしてるそうだ。やべっ、寝すぎた!
一緒にカンキジコンビを起こしに行く。
いや、部屋は別々だよ? 一緒の部屋に居たら魔法が炸裂しちゃうよ。
二人も飲みすぎたらしく、フラフラと出てきた。
最後に全員でアサイさんを起こしに行く。
だが、いくらノックしても出てくる気配がない。
「出ないな」
「どうしましょうか?」
「俺とカンダさんでマスターキーを取ってくるよ」
二人でマスターキーを取って戻ってくる。
入室はさすがに女性二人に任せた。万が一着替えてる時に乱入なんてハプニングが起きないようにね。
カンダさんは判らないけど、俺はアサイさん相手にそんなハプニングはお断りだ。
カンダさんと二人でリビングに行き、お茶を入れる事に。二日酔い対策だ。
湯を沸かしていると、コタニさんの悲鳴が聞こえてきた……。




